本記事ではここまで、リシンという仕上げ材の特徴、その長所やよくある劣化症状について説明してきました。もしあなたのお家に使われているのがリシンであれば、そのメンテナンス方法についても気になるところ。ここでは、将来リシン外壁のメンテナンスを行う際の基本的な流れや注意すべきポイント、塗替え時におすすめする塗料などについてご紹介します。
リシン外壁を塗り替える際のポイント
下塗り材の選定はとても重要
リシン仕上げの外壁を塗り替える際に最も注意しなければならないのが、下地の吸い込みが激しいという点です。下地が塗料を吸い込んでしまうために、色ムラや早期の剥がれと言った状況が起きてしまいます。外壁塗装ではまず最初に下地と上塗り材を接着する「下塗り材」を塗る必要がありますが、吸い込みが激しいリシン仕上げの外壁では下塗り材の選定に気をつけなければなりません。
代表的な例として、シーラーという下塗り材を使用して吸い込みを抑え、その上に上塗材を塗るという方法があります。下の図は、リシン仕上げの外壁をシーラーで下塗りした際の断面図です。
このほかに、表面の凹凸模様を少し変えたい場合、また上塗りの膜厚を均等にしたい場合には「フィラー」(=微弾性フィラー)と呼ばれる下塗り材を使用します。フィラーは比較的厚く塗装されるので、リシンの凹凸をなだらかにして波形の模様にしたり、それによって上塗り材をある程度均等な膜厚で塗ることができるようになります。またその名のとおり、僅かですが弾性がありますので、下地のひび割れに入り込むことにより充填材のような効果を発揮したり、塗膜が伸びることでひび割れからの水の進入を防ぐなどの役割も担うことができます。ただし、この弾性性能は、長期間続くものではありませんので注意が必要です。
下地劣化が激しく、高圧洗浄後にも下地もしくは既存塗膜の脆さが気になる場合は、シーラーを先に塗り、吸い込みを抑えたあとにフィラー施工する場合もあります。
近年ではシーラーとフィラーの両方の良さを兼ね備えた「サーフェーサー」という下塗り材もあります。シーラーのように下地に浸透する機能を持ちながらも、膜厚をつけて塗装面を平滑にできるという製品になります。以下は、代表的な下塗り材の特徴を簡単にまとめたものになります。
下塗り材 | 主な用途 | リシン外壁との相性 |
---|---|---|
シーラー | 下地の吸い込みを止め、上塗材がうまく密着する状態にする | ◯ |
(微弾性)フィラー | ひび割れや凹凸を埋めて塗装面を平滑にする | ◯ |
サーフェイサー | 下地の吸い込みを止め、さらに厚く塗ることで塗装面を平滑にする | ◯ |
プライマー | 接着力を高める。錆を止める効果を持つものもある | ☓(フラットな面に適している) |
落ち着いた仕上がりにしたいなら「艶消し塗料」を
続いて、上塗材を選ぶ際のポイントについて紹介させて頂きます。
あなたがもしリシン吹付けの艶を抑えたマット仕様の外観に愛着を感じているのなら、塗り替えメンテナンスの際にも艶消し塗料を選ぶことをおすすめします。モルタルが多く使用されている和風住宅には、塗りたてのピカピカとした外壁よりも艶が抑えられた落ち着きのある外壁のほうがいいと感じる方も多く、リシンの意匠性の高さとも上手にマッチします。
艶を完全に抑えることによる機能性の低下が心配な方は、3分艶など若干艶が残っているものを選んでもいいでしょう。表面の凹凸が光を拡散してくれるため、フラットな面に塗るよりも光沢は気にならなくなります。ただ塗料によっては艶消しが無いものもありますので、業者に聞いたりメーカーのHPをチェックするなどして事前に確認しておくことをおすすめします。
艶消し塗料についてはこちらの記事で詳しく解説されています。ぜひご参考にしてください。
「伸びる塗料」を使ってひび割れをカバー
モルタル外壁の宿敵である大小さまざまなひび割れ(クラック)ですが、リシンによる塗装では覆い隠すことができず、内部への水の浸入を防ぐことができません。あなたがもしもお家を守ることを第一に考えるなら、塗替えメンテナンスの際にはひび割れに追随して伸びる「弾性塗料」を選びましょう。伸縮率の高い塗料であれば、下の画像のようにひび割れを覆い隠し水の浸入をシャットアウトできます。
出典:株式会社アステックペイント
以下では、ひび割れの多いリシン仕上げの外壁と相性がいい弾性塗料をいくつか紹介いたします。
DANシリコンセラR(日本ペイント株式会社)
画像出典:https://www.monotaro.com/p/1639/4035/
大手塗料メーカーである日本ペイント株式会社の水性一液型の弾性塗料です。耐久性の高さに加えて防カビ・防藻などの機能も備えた高品質の塗料です。
EC-5000PCM(株式会社アステックペイント)
画像出典:株式会社アステックペイント
オーストラリア生まれのこの塗料は、600%の伸縮率でひび割れに追随する、トップクラスの防水性を持つ塗料といえるでしょう。耐久年数も18年と長く、遮熱機能にもすぐれた高性能塗料です。
弾性塗料に関してはこちらの記事で詳しく解説されています。ぜひご参考にしてください。
汚れが気になる場合は「低汚染塗料」を
シックな印象に仕上げることが出来る艶消し塗料や、防水性に優れた弾性塗料ですが、お家の立地条件によっては汚れやすい場合もあります。もしあなたのお家が大通りや川沿いなどに面しているのなら、リシン仕上げのメンテナンス方法として低汚染塗料による塗替えを選ぶという選択肢もあります。ここでは、代表的な低汚染塗料をいくつか紹介します。
超低汚染リファイン1000Si-IR(株式会社アステックペイント)
画像出典:株式会社アステックペイント
雨水によって汚れを洗い流す「セルフクリーニング機能」をもつ塗料です。高耐候性や遮熱機能、ひび割れに追随する「可とう性」もある、汚れやすいリシンとの相性がいい塗料です。
水性セラミシリコン(エスケー化研)
画像出典:http://item.rakuten.co.jp/p-recipe/23982260/
塗膜表面の密度を高くすることで低汚染性を発揮しています。カビや藻に対する耐性もありますので、お家が厳しい立地条件にある場合におすすめの塗料です。
まとめ
本記事では、外壁のリシン仕上げの特徴から塗り替えメンテナンスの方法までを詳しく解説いたしました。今外壁にお悩みを持っている方は勿論、将来のメンテナンス方法が分からないという方も塗り替え時の参考にして下さい。
また、リシン仕上げを含めたモルタル外壁のメンテナンスについてはこちらの記事でも詳しく解説されていますのでぜひご覧になって下さい。
あなたのお家の外壁がリシン仕上げであるのなら、この記事を業者に相談する前の事前知識としていただければ幸いです。