外壁塗装を行う時に目にする軒天(のきてん)という箇所について、そもそもどんな意味や役割があるのか、塗装の際にはどんな塗料を使用すれば良いのか、費用はどれくらいかかるのか、DIYで行うことは出来るのか?と思われている方もいらっしゃるでしょう。
軒天は軒天井とも呼ばれ、建物の外壁から突き出ている屋根の裏の天井部分を指します。普段意識して見ることも無い部分ですが、実は軒天も外壁や屋根同様に外部に晒されている部分の為、劣化が進行しやすい箇所なのです。軒天の劣化を放置していると、雨漏りの原因にもなることがあります。
ですから、軒天もしっかりと定期的に点検を行なって、劣化している場合は塗装や張替えなどの適切な補修を行う必要があるのです。
この記事では、軒天の基礎的な知識から軒天の塗装で使われる塗料、塗装方法、費用、劣化の見分け方などをお伝えいたします。
1. 軒天塗装の基礎知識
この章では、そもそも軒天とはどんなものなのか、役割やいくつかの種類がある材質について解説いたします。
1-1. 軒天の役割
軒天(のきてん)とは外壁から外側に付き出した屋根の裏側の天井部分のことです。軒裏天井(のきうらてんじょう)、天井(のきてんじょう)、軒裏(のきうら)などと呼ばれることもあります。
軒天の役割としては
・屋根の垂木(たるき)や野地板を隠す外観上の役割
・不燃材を使用し、火事の際に屋根裏の延焼を減少、防止する安全面での役割
・有孔板(多数の穴が開いている板)や換気口から空気を取り入れ天井裏の結露やカビを防止する換気の役割
などがあります。
このように軒天には建物にとって重要な役割がいくつもあるのです。ですから、軒天が劣化してしまった場合には早めに補修することが大切なのです。
1-2. 軒天の材質の種類
軒天に使用される材質にも種類があります。
ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)
画像提供:プロタイムズ津店
土の中などにも含まれるケイ酸と酸化カルシウム(生石灰)が結合したケイ酸カルシウムという物質と、補強用の繊維を配合して作られたボードです。かつては、建材で多く繊維強化セメント板が使用されていましたが、アスベスト(石綿)を含んでいるものがあり、アスベストの健康被害が社会問題になってからは、使用されることはほとんど無くなりました。そこで、登場したのがケイカル板です。耐火性、防湿性に優れており、アスベストも含んでいません。
ベニヤ板・合板
画像提供:プロタイムズ福岡北店
かつての木造住宅ではベニアを貼って塗装を行うか、木目調の化粧合板がよく使用されました。木目の風情のある軒天にできるのですが、数年で劣化して剥がれる、耐火性が低く換気がもしにくいなどの点から、近年では上述したケイカル板が主流となっています。
2. 軒天の塗装が必要な劣化のサイン
軒天はどんなタイミングで塗り替える必要があるのかわかりませんよね?外壁塗装や屋根塗装と一緒に塗るからそのタイミングで構わないと思われている方もいるかもしれません。
しかし、外壁よりも軒天の劣化が進んでいるケースもありますので、これから紹介するような劣化が見られる場合は早めに専門家に相談することをオススメいたします。
2-1. 汚れ・色あせ(危険度:中)
軒天は紫外線を直接受けているわけではありませんが、経年で汚れが付着したり、色あせしていきます。
色あせが起きている場合は緊急ではないものの、塗装によるメンテナンスも検討されてみてください。
画像出典:http://sasaki-tosou.seesaa.net/article/422444823.html
2-2. はがれ(危険度:大)
はがれは合板によく見られる劣化です。プリント合板ではプリントのはがれ、塗装の場合は塗膜のはがれが起きます。
塗膜が剥がれて白くなった軒天です。
このような状態の場合は劣化がかなり進行している状況です。
早急に業者に相談してください。
2-3. カビ・藻(危険度:大)
画像提供:プロタイムズ福岡南店
カビや藻が発生している場合は雨水などで湿気が起きやすく、通気ができていない可能性があります。
また、コーキングなどから雨水が浸入し、湿った状態になり、カビが生えている可能性もあります。
早急に専門家に診てもらうことをオススメします。
2-4. シミ(危険度:大)
シミが起きている場合はまず雨漏りを疑います。屋根やベランダが排水できていない場合、雨水が中に入り、軒天にシミ出てくる場合があります。
雨漏りが進行している場合もありますので、早急に専門家に診てもらうことをオススメします。
もし、雨漏りが進行していた場合には塗装でのメンテナンスはできませんので、新しい軒天へ張替えを行ないます。
画像提供:プロタイムズ久留米店
劣化したコーキングから雨水が浸入し、雨シミが起きています。
3. 軒天の塗料の種類と塗装方法
軒天が劣化した場合は早めの補修が必要です。雨漏りで軒天が傷んでいたり、軒天がめくれたりしている場合は新しい軒天へ張り替えを行ないますが、それほど劣化していない場合は塗装によるメンテナンスが一般的です。軒天を塗装で補修する場合にはどのような塗料を使用してどのような方法で塗装を行うのか、DIYについても解説いたします。
3-1. 軒天の塗装で使われる塗料(EP・AEP・NAD)
軒天の塗装で使用される塗料は主にEP(エマルションペイント)、AEP(アクリルエマルションペイント)、NAD(アクリル樹脂系非水分散形 塗料)などがあります。
EPとAEPはかつては分けて使用されていましたが、現在の市場に流通するエマルションペイントのほとんどがアクリルエマルション系の為、同じ意味で混同されて使用されます。
これまで軒天の塗装には水性のエマルション塗料が多く使用されていましたが、近年ではケイカル板・ベニヤ板に塗れるNADが使用されることも増えてきました。
■EP・AEPの特徴
水溶性なので水で薄められ安全。NADより安価だが、接着性は弱い。
主な製品
ビニデラックス300(関西ペイント)
揮発性有機化合物(VOC)をほとんど含みません。ハケ塗りがすぐれ、ハケ目が少ない肌触りの良い美しい均一な 塗面が得られます。 ハケ塗り以外に、ローラー塗りも可能で作業性が優れた塗料です。
エコフラット100(日本ペイント)
揮発性有機化合物(VOC)をほとんど含みません。防藻・防かび・抗菌アルデヒド類吸着機能をもった、環境に配慮した合成樹脂のエマルションペイントです。
マルチエースⅡ(アステックペイント)
軒天、内外装用に使える弱溶剤形塗料です。防カビ・防藻性を持った塗料で、低臭・低VOCのためシックハウス対策に有効です。つや消しタイプのため、落ち着いた仕上がりになります。
※VOCとは?
揮発性有機化合物のことで、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどが代表的な物質です。有機溶剤の塗料に含まれており、大気中の光化学反応により、光化学スモッグを引き起こす原因物質の 1 つとされています。
■NADの特徴
EPに比べて接着性や耐水性が高い、ヤニ止め効果がある。主に改修に使われる。
主な製品
アレスセラマイルド(関西ペイント)
内外壁いずれも塗装可能。つやあり、つや消し、半つや仕上げいずれも可能。防カビ・ 防藻性・ヤニ・シミ・アク止め効果あり。速乾性で工期短縮が可能です。
ケンエースG-Ⅱ(日本ペイント)
ヤニ・しみ止め効果と優れた付着性を有した、壁面用つや消し塗料。下地への影響が非常に少なく、素材への浸透力が抜群です。防かび・ヤニ止め性・しみ止め効果が強力です。耐水性・耐アルカリ性に優れています。
セラミタウンマイルド(エスケー化研)
ファインセラミック技術により、塗膜は、低帯電性、高塗膜硬度、親水性となり、汚れにくい塗膜を実現。塗膜表面にセラミック成分が配向するため、高い耐候性を発揮します。
エマルションとは液体の中に他の液体が溶けずに分散しているものです。塗料におけるエマルションとは樹脂が水に分散している状態のものが水性エマルション塗料、樹脂が有機溶剤(シンナー)に分散したものが溶剤系エマルション塗料です。ですが、エマルションペイントというと一般的には水性エマルションペイントを指すことが多いです。
3-2. 軒天の塗装方法
画像提供:プロタイムズ福岡北店
画像提供:プロタイムズ岐阜関店
工程 | 内容 |
---|---|
下地処理・素地調整 | サンドペーパーなどで汚れや既存塗膜の不具合部分を取り除く。 |
錆止め | 軒天を固定している釘や鉄の部品がある場合は、錆止めを塗る。 |
下塗り | シーラーなどの下塗りを塗る。 |
上塗り2回 | 上塗り用の塗料を2回塗る。 |
注意点:軒天は通気のために有孔板という小さな穴や換気口が空けられているので、高圧洗浄で水が入らないように注意します。
3-3. 軒天の塗装はDIYよりプロに頼んだほうが良い
軒天の塗装は一見簡単そうに思えるかもしれませんが、実は意外と難しいので初心者にはオススメできません。
軒天はローラーではうまく塗装できない部分があり、刷毛で塗装します。これを専門用語でダメ込みと言いますが、狭いスペースを上手く塗るのは慣れないと難しく大変な作業です。
また、常に上を見上げながらの作業になるために足場が不安定になりがちです。DIYでは足場は立てずに脚立などで作業をすると思われますが、足を踏み外して転落することも考えられます。
仕上がりの品質や安全を考慮するとDIYでやるより専門の塗装業者に依頼することをおすすめします。
4. 軒天の塗装にかかる費用
業者にお願いする場合にまず気になるのは費用ではないでしょうか。軒天の塗装は㎡単価で見積りが出されるのが一般的です。
それでは塗装単価をみていきましょう。
4-1. 軒天の塗装単価
軒天の塗装単価は
800~1,500円/㎡あたりが一般的です。
価格は使用する塗料によっても変わります。ウレタンよりも耐久性の高いシリコン塗料の方が単価が高くなります。
目地やジョイントの金具が沢山ある場合は一般的に下塗りに錆止めを使用しますので単価が上がることがあります。
軒天の塗装には一般的にウレタン塗料、シリコン塗料が使われます。
ウレタン塗料 800円/㎡~
シリコン塗料 1,000円/㎡~
例えば軒天の塗装面積が40㎡なら32,000~48,000円ということになります。
軒天の種類にもよりますが、フッ素などの高耐久性塗料も塗ることも可能です。この場合は単価が2,000/㎡近くになることもあります。
4-2.足場費用とお得な方法
2階の軒天を塗装する場合は基本的に足場を設置します。
足場の設置費用は足場費用は、600~800円/㎡が相場です。
せっかく足場を設置するなら屋根塗装や外壁塗装を同時にやってしまった方が足場代分がお得です。
もし、屋根や外壁も劣化が進行しているようでしたが、同時に塗装も検討してみましょう。
5. 軒天の色と塗装事例
軒天はどんな色にしたらいいかわからないという方もいるでしょう。この章では軒天の色について解説します。軒天の塗装事例もありますので参考にしてみてください。
5-1. 軒天の色は何色が適切か?
画像提供:プロタイムズ岐阜関店
軒天は日が当たらない暗い箇所ですので、白などの明るめの色がオススメです。白にすることで光を反射し、軒下も明るくなります。
もし、白が嫌な方は白から壁と同色までの範囲の色にすると間違いありません。
他には、屋根色に揃えて濃色にすれば重厚で落ち着いた印象にもできます。
画像提供:プロタイムズ佐賀西店
5-2. 軒天の塗装事例画像
まとめ
いかがでしたか?この記事では軒天の役割から、劣化の症状、塗装方法、色選びなどをお伝えしてきました。
軒天は普段見えづらい場所の為、劣化に気づかないこともあります。
定期的に目視で確認して、シミやはがれを見つけたら早めに専門業者に相談することをオススメします。
DIYで行う際は事故にくれぐれもお気をつけ下さい。
この記事を軒天の塗装の参考にしていただけると幸いです。