「無機塗料で外壁塗装をしようかな…?」
と考えている人も多いのでは。
「無機塗料って、どんな塗料?」
「外壁塗装に無機塗料はオススメ?」
「無機塗料とフッ素塗料、どちらを選ぶべき?」
といった疑問をお持ちの方もいるでしょう。
無機塗料は、優れた性能をもつ最高ランクの塗料です。
現在、多くの戸建ての外壁塗装に無機塗料が使用されています。
この記事では、
・無機塗料とは、どんな塗料なのか
・無機塗料で外壁塗装をするメリット・デメリット
・無機塗料を選ぶ前に押さえておくべき知識
・無機塗料以外の塗料種類
・いち押しの無機塗料製品4選
などについて、プロがわかりやすくお伝えいたします。
無機塗料で外壁塗装をするか迷っている人は、ぜひ参考にしてください。
1.「無機塗料」とは?どんな塗料?
外壁塗装で使う塗料には様々な種類がありますが、その中でも優れた性能をもち最高ランクに位置するのが「無機塗料」です。外壁塗装の主流はシリコン塗料ですが、無機塗料も多くの戸建ての外壁塗装で選ばれている人気の塗料です。
「無機塗料」がどんな塗料なのか、専門的に解説をすると…
塗料は「顔料」「樹脂」「添加剤」「水もしくは溶剤」で構成されています。このうち樹脂の主成分が“無機”の塗料を「無機塗料」と言います。
※無機とは何かをざっくり説明すると、有機ではないもの、紫外線で分解されない性質ものを指します。ガラスや陶器などをイメージすると、わかりやすいかもしれません。ガラスや陶器などにも無機成分が含まれています。
無機塗料には高い耐久性がありますが、耐久性にはこの無機成分が大きく関係しています。
上記の通り、無機成分には、紫外線によって分解されない性質があります。そのため、無機成分を多く含む無機塗料は、外壁塗装の劣化要因である紫外線のダメージを受けにくく、高い耐久性を有しているのです。
ちなみに、樹脂がシリコンの塗料は「シリコン塗料」、樹脂がフッ素の塗料は「フッ素塗料」と言います。そして、無機塗料以外の塗料(シリコン塗料、フッ素塗料、ピュアアクリル塗料など)はすべて有機塗料に分類されます。
2.無機塗料で外壁塗装をするメリット・デメリット
ここでは、無機塗料で外壁塗装をするメリット・デメリットをまとめてご紹介します。
2-1.メリット
無機塗料で外壁塗装をすると、以下のメリットがあります。
■美しい外観(外壁)を長く保つことができる
無機塗料で外壁塗装をすると、美しい外観(外壁)を長く保つことができます。
その理由は、以下の通りです。
◎汚れにくいため
無機塗料には、
・汚れが付着しにくい
・仮に汚れがついても雨水で洗い流す
という性能があります。
汚れが付着しにくいのは、無機塗料の塗膜(塗装後にできる塗料の膜)が緻密になるためです。そして、雨水で汚れを洗い流すことができるのは、無機塗料の塗膜には水になじみやすい性質(親水性)があるため、汚れと塗膜の間に水が入り込みやすいためです。
この性能については、窓ガラスなどをイメージしていただくとわかりやすいでしょう。ツルツルとした表面の窓ガラスには汚れが付着しにくく、多くの汚れは水で洗い流せます。無機塗料が汚れにくいのは、これと同じ原理です。
◎藻・コケ・カビが発生しにくいため
上記の通り、無機塗料は塗膜が緻密となり親水性もあるため、藻・コケ・カビの菌や胞子などが付着しにくく、付着しても雨水で洗い流されます。また、藻・コケ・カビの発生(成長・増殖)を促進する要因の一つが汚れ(有機物)ですが、菌や胞子が付着しにくく付着しても雨水で洗い流されるのと同じメカニズムで汚れも外壁にとどまりづらい。そのため、無機塗料で塗装をすると藻・コケ・カビが発生しにくいのです。
◎劣化症状があらわれるまでに一定の時間がかかるため
色あせやチョーキングなどの塗膜の劣化症状も、外観(外壁)の美しさを損なう要因の一つですが、無機塗料は耐久性が高いため(詳細は以下を参照)、基本的には、早々に劣化症状があらわれることはありません。劣化症状があらわれるまでには、一定の時間がかかります。
当然、長く劣化症状があらわれなければ、それだけ美しい外観(外壁)を保てることになります。
色あせ
チョーキング(手で触ると粉状のものが付着する状態)
■他種類の塗料と比べて長持ちする(耐久性が高い)
無機塗料は、他種類の塗料と比べて、耐久性が高い(耐久年数が長い)傾向にあります。
無機塗料の平均的な耐久年数は15年~です。
耐久性が高いということは、
・外観(外壁)の美しさを保つ
・紫外線や雨風などから住まいを守る
という外壁塗装の性能が、長持ちするということを意味します。
[塗料の種類別|耐久年数]
塗装の種類 | 耐久年数 | 塗料の相場費用 ※1缶あたり |
---|---|---|
アクリル塗料 | 約3~5年 | 5,000~15,000円 |
ウレタン塗料 | 約5~7年 | 5,000~20,000円 |
シリコン塗料 | 約7~10年 | 15,000~40,000円 |
ピュアアクリル塗料 | 約15年~ | 50,000~70,000円 |
フッ素塗料 | 約15年~ | 40,000~100,000円 |
無機塗料 | 約15年~ | 50,000~120,000円 |
※上記の耐久年数、価格帯はあくまで目安です。塗料製品によっては、上記の耐久年数や価格帯と大きく異なることもあります。
※外壁塗装に使用する塗料の量は、一般的な2階建て住宅の場合2~4缶が目安です(住まいの大きさや塗装箇所によっては、上記よりも多くの塗料を使用することもあります)。
■長期スパンで考えるとお得
上記表の通り、1回分の外壁塗装費だけを考えると無機塗料は割高です。ただし、長期スパン…20年~、30年~の間に外壁塗装にかかる費用総額という視点で考えると、無機塗料での外壁塗装はお得となる可能性大です。
どういうことかというと、無機塗料は耐久性が高く長持ちするため、再度、外壁塗装が必要となるまでの期間が長い。つまり、長いスパンで考えると、塗装回数が少なくてすむことになります。塗装回数が少なくすめば、それだけ外壁塗装にかかる費用総額も抑えられるというわけです。
逆に耐久性の低い塗料で外壁塗装をすると、1回分の外壁塗装費は抑えられますが、何度も再塗装が必要となるため、塗装回数が多くなる分かえって外壁塗装にかかる費用総額は割高となってしまう可能性が高いのです。
2-2.デメリット
無機塗料で外壁塗装をすると、以下のデメリットがあります。
■1回の外壁塗装にかかる費用が割高
上記メリットでお伝えした通り、無機塗料での外壁塗装は長期スパンで考えるとお得ですが、安価な種類の塗料で外壁塗装をした場合と比べて、1回分の外壁塗装費が割高となるのも、また事実です。
※デメリットではありませんが、そもそも無機塗料が選べないケースもあります。このあたり詳しくは下記3章にて解説いたします。
3.無機塗料を選ぶ前に!絶対に押さえておくべき知識
この章では、
・同じ無機塗料でも製品によって耐久性や性能が異なること
・無機塗料を塗装できない外壁材
など、無機塗料を選ぶ前に押さえておくべき知識をご紹介します。
3-1.同じ無機塗料でも製品によって耐久性や性能などが異なる
“無機塗料”という塗料であれば、どの塗料製品も同じようなものと思われる人も多いのですが、それは誤りです。同じ無機塗料でも、塗料製品によって、耐久性や性能、カラーラインナップ、価格などが異なることもあります。
[塗料製品ごとに異なるポイント]
・耐久性(耐久年数)
無機塗料の平均的な耐久年数は15年~ですが、なかには耐久年数10年~など、平均値から大きく前後する無機塗料も存在します。
・性能(防汚性、遮熱性、防水性、防カビ・防藻性 など)
無機塗料は基本的に防汚性(汚れにくい性能)に優れていますが、どのくらい汚れにくいか、防汚性の具体的なメカニズムは、塗料製品によって異なります。また、その他にどんな付加性能(遮熱性や防水性、防カビ・防藻性など)を備えているかは、塗料製品ごとに全く違います。
・カラーラインナップ
揃えている色の数、どんな色を揃えているかは、塗料製品によって全く異なります。
・価格
無機塗料の平均価格は、50,000~120,000円/1缶あたりですが、平均価格と大きく異なる塗料製品もあります。
そのため、塗料製品を選ぶときに「無機塗料」というだけで決めてしまうのはオススメできません。より納得の塗料製品を選り抜くためには、どんな特徴のある塗料製品なのか、耐久性や性能、カラーラインナップ、価格まで踏み込んで確認をする必要があります。
3-2.木材に無機塗料を塗装するのはオススメしない
木材の外壁に無機塗料を塗装することは推奨されていません。
なぜならば、ひび割れが生じる可能性が高いためです。木材は柔らかいため、硬い無機塗料の塗膜(無機成分を多く含む無機塗料の塗膜は、他種類の塗料と比べて硬くなります)が木材の動きに追随できず、ひび割れてしまうことがあるのです。
ちなみに、外壁以外の木材の建材(軒天など)にも、同じ理由で無機塗料を塗装することは推奨されていません。木材の建材の塗装には、無機塗料以外の塗料を選ぶのが良いでしょう。
3-3.[補足]無機塗料で塗装をした場合、次回の塗装時に要注意
今回、無機塗料で外壁塗装をした場合、次回の外壁塗装時には「専用の塗料(下塗り材)」で下塗りをする必要があります。仮に、無機塗料の上から誤った塗料(専用の塗料以外)で下塗りをすると、早々に塗膜が剥がれるなどの不具合が生じる可能性があります。
今回の塗料選びの時に必要な情報ではありませんが、無機塗料を選ぶのであれば、このあたりのことも把握しておきたいところ。
というのも、上記のことがわかっていれば、次回の外壁塗装に向けて対策が打てるためです。
具体的には…次回の外壁塗装時に塗装業者に「前回、無機塗料で外壁塗装をした」ことを忘れずに伝えられるよう、無機塗料のパンフやメモなど何等かわかるように履歴をのこしておくと良いでしょう。
仮に無機塗料で外壁塗装をしたことを忘れてしまっていても、基本的に塗装業者が(前回、無機塗料で塗装をしているかどうかを)確かめてくれるので問題はありません。しかしながら、塗装の状態等によっては見極めが難しいこともあります。そのため、(無機塗料で外壁塗装をしたことが伝えられるように)履歴をのこすなどの対策をしておく方が、より安心であることは間違いありません。
4.我が家は無機塗料での外壁塗装がベスト?他塗料が良い?
ここでは、無機塗料の特徴(1章)や、無機塗料で外壁塗装をするメリット・デメリット(2章)などを踏まえたうえで、無機塗料を選ぶのがオススメな場合を具体的にご紹介します。
4-1.ずばり、こんな場合は無機塗料がオススメ!
以下のような場合は、無機塗料で外壁塗装をするのがオススメです。
▼こんな場合は無機塗料で外壁塗装をするのがオススメ!
☑外壁塗装をできるだけ長持ちさせたい
☑美しい外観(外壁)を長く保ちたい
☑頻繁に外壁塗装をするのは面倒
☑現在の家に、今後も長く住み続けたいと思っている
☑池や川が近くにあるなど、藻やコケが発生しやすい環境に家がある
☑予算に余裕がある(塗装費用が少し割高になっても問題ない)
☑1回分の塗装費用よりも、長期的に塗装費用が抑えられる方を重視したい
上記にあてはまらない場合でも、無機塗料を選ぶのがベスト!という可能性はあります。
上記1~3章でご紹介した情報も参考に、無機塗料で外壁塗装をするのがベストかどうか、塗装業者とも相談をして検討してみてください。
4-2.選ぶべきは無機塗料?フッ素塗料?
優れた性能をもつ最高ランクの塗料といえば、無機塗料のほかにも、ピュアアクリル塗料、フッ素塗料があります。そのため、無機塗料が良いのか?フッ素塗料やピュアアクリル塗料が良いのか?と迷ってしまう人も少なくありません。
結論から申し上げると、
「◎◎塗料を選んでおけば間違いない」
「◎◎塗料がベスト」
といったことを一概に言うことはできません。
どの塗料を選ぶのが良いかは、ケースバイケース。
・重視するポイント(塗料に求める耐久性や性能など)
・費用(予算)
・住まいの環境
などによって、選ぶべき塗料の種類は異なるのです。
ちなみに、多くの塗装業者が施主(消費者)にあわせてベストな塗料を提案してくれます。ゼロから塗料を選り抜くのは大変なため、塗装業者の提案内容なども踏まえて検討をすると良いでしょう。
塗料選びについて詳しくは、下記記事も参考にしてください。
4-3.[参考]「無機塗料」以外の塗料種類
無機塗料以外の塗料種類をご紹介します。
●ウレタン塗料
シリコン塗料が台頭する前に、外壁塗装で高いシェアを占めていた塗料。低価格。
●シリコン塗料
外壁塗装において1番人気の塗料。一定以上の耐久性がありながら、価格帯は外壁塗料の中では手に取りやすい中程度。
●ピュアアクリル塗装
塗装後にできる塗膜は伸縮するため、ひび割れに追随し、雨水が浸入するのを防ぐ。
●フッ素塗装
頻繁な塗り替えが難しい商業施設や大型ビルで選択されるケースが多い。
5.いち推しの無機塗料製品4選
本サイトを運営している塗料メーカー「アステックペイント」でも、無機塗料を多数販売しています。以下、いち押しの無機塗料製品4選をご紹介します。
[アステックペイント|いち押し無機塗料製品4選]
●無機ハイブリッドウォール(外壁用)
無機成分と有機成分を理想的なバランスで配合することで、圧倒的な耐候性を実現した外壁用無機塗料です。
●無機ハイブリッドウォールJY(外壁用)
無機ハイブリッドウォールの弱溶剤タイプです。
●無機ハイブリッドコートJY(屋根用)
期待耐用年数20年以上を誇る「超耐候型」塗料。低汚染性も持ち合わせ、多くの優れた機能を有する塗料です。
●無機ハイブリッドコートJY-IR(屋根用)
超耐候性を実現した無機ハイブリッド塗料に遮熱機能を加えた、屋根の表面や室内温度を下げる遮熱塗料です。
まとめ
無機塗料での外壁塗装を検討している人は少なくないでしょう。
無機塗料で外壁塗装をするメリットは、
・美しい外観(外壁)を長く保つことができる
・他種類の塗料と比べて長持ちする(耐久性が高い)
・長期スパンで考えるとお得
一方で、デメリットは、
・1回の外壁塗装にかかる費用が割高
です。
無機塗料を選ぶのがベストかどうかはケースバイケース。
上記のメリット・デメリットをはじめ、無機塗料の特徴や価格などを踏まえて希望にあう塗料かどうか見極めてみてください。
さらに、この記事では、
・無機塗料を塗装できない外壁材(3-2)
・ずばり、こんな場合は無機塗料がオススメ!(4-1)
・「無機塗料」以外の塗料種類(4-3)
など、無機塗料が良いのか?その他の種類の塗料が良いのか?の判断材料となる情報もご紹介しておりますので、あわせて、参考にしてください。