外壁塗装 価格

業者にお願いして外壁塗装にかかる費用を見積ってもらったものの、見積額の妥当性が判断できず、困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。気になるのは、”外壁塗装の適正価格は、一体いくらなのか”、といったところでしょうか。

先にお伝えしておきたいのが、外壁塗装の価格は、お住まいの大きさや劣化の進行具合、さらには選ぶ塗料によっても異なるため、一概にいくらが適正価格と言い切ることはできません。それでは、見積額が適正価格かどうかはわからないのかというと、そういうわけではありません。見積書の総額だけ見ても適正価格かどうか判断がつかないだけで、「何にいくらかかっているか」を細かくチェックしていけば、自身でも適正価格になっているかどうかを見極めることはできます

そこで、この記事では、外壁塗装の見積額が、適正価格になっているかどうかを見極める方法を、3つのステップに分けて順番にお伝えしてまいります。ぜひ、参考にしてください。

1.ステップ①|外壁塗装の価格について相場感を掴んでおく

先述の通り、外壁塗装の総額はいくらが適正と明言することはできません。ただし、おおよそ外壁塗装にいくらかかるのか、相場感を掴んでおくことは重要です。

相場感を掴んでおけば、自身の見積額が適正価格かどうかまでは判断できなくとも、相場から大きく外れている場合に気づくきっかけを得ることができます。

■外壁塗装の相場価格

80~150万円(一般的な2階建て住宅/塗り面積200㎡)

2.ステップ②|外壁塗装の価格を決める3要素で、見積額の妥当性を見極める

外壁塗装の価格は、主に「塗料代」、「足場代」、「施工費(人件費)」の3つの要素、プラス利益で構成されています。ちなみに、内訳の比率を見ると、「塗料代」が約20%、「足場代」が約20%、「施工費(人件費)」が約30%、そして利益が約30%が目安です。

そこで外壁塗装の見積額が適正価格になっているかどうかを判断するならば、「塗料代」、「足場代」、「施工費(人件費)」で分けて、それぞれが適正価格になっているかどうかをチェックするというのが有効です。

ぜひ見積書を手元に置いて、一つひとつチェックしてみてください。

2-1.【塗料代】2つの観点で価格の妥当性を見極める

2-1-1.塗料の種類|耐久年数が長くなるほど、価格も割高に

見積書に記載された塗料製品とその額。果たして、その額は適正価格なのでしょうか。

適正価格かどうかをチェックするうえで、まず確認すべきは、塗料の種類です。塗料は大きく7つの種類に分けることができ、種類によって、おおよその相場価格があります。手元にある見積書と相場価格を照らしてみて、大きく相違がある場合には、なぜ高額になっているか業者に確認してみることをオススメいたします。

■塗料の種類別|相場価格

塗料耐久年数相場価格 ※1缶あたり
アクリル約3~5年5,000~15,000円
ウレタン約5~7年5,000~20,000円
シリコン約7~10年15,000~40,000円
ピュアアクリル約15年~50,000~70,000円
フッ素約15年~40,000~100,000円
無機約15年~50,000~120,000円
光触媒約15年~50,000~100,000円

ただし、注意しておきたいのが、相場価格と異なっていても適正価格ではないとは言い切れないということです。なぜならば、上記の相場価格はあくまでも目安のため、塗料製品やメーカーによって価格が上下することもあるからです。また、遮熱性や断熱性、防カビ性などの付加価値性能を併せ持った塗料は、その分、高額になります。

そこで、塗料の価格をチェックする際には、必ず「塗料メーカー名、商品名」まで確認しましょう。たとえば「無機塗料」だけの表記では、正確な価格の判断はできません。

▼塗料選びについて詳しくは、ぜひ下記の記事も参考にしてください。
知っておきたい外壁塗装の塗料の種類と選び方

[ワンポイントアドバイス|塗料選び]

耐久年数というのは、つまり、”どれぐらいのスパンで塗り替える必要があるか”、ということを表しています。一般的に耐久年数が高くなるほど、塗料の価格も高くなる傾向にあります。

ただし、ここで押さえておきたいのが、耐久年数の短い塗料は、それだけ頻繁に塗り替えなければならないため、長期スパンで考えると、かえって費用がかさんでしまうこともあるということです。逆に耐久年数の長い塗料は、1回の塗り替え費用だけを見ると高額に思えるかもしれませんが、長期スパンで見ると、塗り替え頻度が少なくて済むため、安く抑えられることもあります。

そこで、塗料を選ぶ際には、1回にかかる塗り替え費用だけでなく、長期スパンでいくらかかるのかまで考慮しておいた方が、お得な選択ができるでしょう。

 


2-1-2.塗料の量|適正な塗料の量は自身でも算出できる

塗料の適正価格を探るうえで、欠かせない観点が”塗料の量”です。塗料の価格が適正であっても、使用する塗料の量が正しく見積られていなければ、塗料の見積額は適正にはなりません。

使用する塗料の量(塗布量)は、自身でも簡単に計算することができます。

●使用する塗料の量|算出方法

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※上記「150㎡」は塗装面積(塗装する範囲)にあたります。塗装面積の算出方法については、下記、[補足情報|塗装面積は「㎡」が基本]も併せてチェックしてください。また、こちらの記事「外壁塗装の正しい面積が適正価格の根拠となる理由」も参考になります。

 

[補足情報|塗装面積は「㎡」が基本]

お手元の見積書に記載されている塗装面積(塗装する範囲)は、どのような単位で記載されていますか。「㎡」になっていれば、ひとまず安心です。もしも「坪数」表記になっているという場合には、注意が必要かもしれません。

上記「使用する塗料の量|算出方法」でご紹介した通り、使用する塗料の量を算出するにあたり、塗装面積(㎡)は、絶対に必要な数字です。

外壁塗装は”外壁を塗る”わけですから、外壁塗装にどれぐらいの量の塗料が必要なのかは、外壁の塗装面積をもとに算出するのが基本です。「坪数」は床面積であり、外壁の塗装面積を正しく判断する材料とはなり得ません。

2-2.【足場代】見積額の妥当性は簡易計算でチェックできる

そもそも足場代とは、なんの費用かをご存知でしょうか。ズバリ、足場代とは、足場を組むのにかかる費用のことです。

足場代の妥当性は、下記の計算式を使って調べることができます。

■足場代|適正価格はいくら?

①まずは、足場代の相場をご紹介します。見積書に記載されている金額と比べてみましょう。

足場代(㎡単価)600~800円/㎡
飛散防止ネット(㎡単価)100~200円/㎡

②次に足場架面積を調べます。

足場は家から少し離して設置するため、まずはどのぐらいの大きさの足場をかけるのかを調べるために、足場をかける面積(足場架面積)を算出します。
※家の外周に足す8mは、外壁(家)から足場までの距離に相当します。

足場架面積=[家の外周+8m]×高さ

③見積書に記載されている足場代(㎡単価)と飛散防止ネット(㎡単価)、さらに②で算出した足場架面積から、足場代を算出します。

足場費用=足場架面積×(足場費用/㎡+飛散防止ネット/㎡)

※上記で算出できる足場代は、あくまで見積書をチェックするための簡易計算です。

 

[補足情報|足場代無料の業者に注意が必要]

外壁塗装費の約20%を占める足場代。決して安くない金額のため「足場代を無料にします」と言われると、ついつい心を動かされそうになりますが、安易にとびつくのは危険です。その理由は、足場代をさらに因数分解して考えると、よくわかります。

足場代には、足場の部材を運ぶ運搬費、足場を組むとき・解体するときの施工費が含まれています。その費用を丸ごと無料にするというのは簡単なことではありません。

また、そもそも足場を組むには、足場の組立て等作業主任者という国家資格が必要なため、塗装業者は、自身では足場を組まず、専門の業者に依頼するケースが少なくありません。外注しているものを無料で提供するというのは不可能な話でしょう。

場合によっては、足場を無料にすると言いながら、足場費用を塗料代や施工費に上乗せしているだけということもあります。足場代は悪徳業者に狙われやすいポイントの一つでもあるので、特に注意してください。

 

▼足場の価格について詳しくは、ぜひ下記記事も参考にしてください。
プロが教える!外壁塗装の足場費用はいくらが妥当?

2-3.【施工費(人件費)】工事内容を細かく把握することが重要

施工費(人件費)とは、「高圧洗浄」「養生」「塗装」など、塗装職人の施工に対する費用のことです。

施工費(人件費)が適正価格かどうかをチェックするには、まずは「どこを、どのように工事する想定での見積りになっているか」を明らかにする必要があります。もしかすると、”工事の内容は、どの住まいを塗装する場合も同じではないのか”と思われるかもしれませんが、住まいの劣化状況に応じて補修内容は異なりますし、雨樋や雨樋などの付帯部とよばれる部分は塗装するのか、しないのか、などは個々の家によって違います。そのため、どこを、どのように工事をするかがわからなければ、適正価格の判断もしようがないというわけです。

どこを、どのように工事する想定になっているかが、見積書からは読み取れない場合は、業者に確認して、必ず明らかにしてください。曖昧なまま進めてしまうと、適正価格かどうかの判断がつかないだけでなく、「やってもらえると思っていたことが、やってもらえていない」といった事態を招きかねません。

工事内容が明らかになったら、下記情報を参考に、それぞれの工事内容と相場価格をチェックしてみてください。

■施工費の相場価格

工事項目相場価格
高圧洗浄100~300円/㎡
養生250~400円/㎡
付帯塗装工事軒天800~1,200円/㎡
雨樋800~1,200円/m
破風板 650~1200円/㎡
雨戸2,000~5,000円/枚
シーリング打ち替え900~1,500円/m
シーリング増し打ち500~1,000円/m
諸経費現場管理費1式 30,000~50,000円
廃材処理費等1式 10,000~30,000円

上記の費用はあくまで相場価格です。住まいの劣化状況等によっては、相場価格よりも高額になる可能性もあります。

[補足情報|「一式」表記はトラブルのもと]

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工事の内容について、「一式」と書かれた見積りには注意が必要です。

もしかすると「一式」という言葉のニュアンスから、すべてが含まれているような印象をもたれた方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は、どこを、どのように工事するのかが全く見えない、曖昧な見積書の典型です。そのため、この見積りだけを頼りに工事を依頼してしまうと、「こちらが想定していた箇所を補修してもらえなかった」といったトラブルに発展しかねません。

「一式」表記の見積りを受け取った場合には、どこを、どのように工事するのか、必ず業者に確認するようにしましょう。

 

3.ステップ③|見積書の不明箇所は、業者に確認して明らかに

見積り

見積書を細かくみていくと、「相場価格と大きく異なる箇所がある」という以外にも、「専門用語の意味がわからない」「ほんとうに、この塗料でいいのか不安」など、いろいろな疑問や不安が出てくるはずです。この疑問や不安は、直接業者になげかけて解消しましょう。

疑問や不安を解消することで、適正価格かどうかの判断も正確にできるだけでなく、より納得して工事を進められるはずです。

“素人がそこまで突っ込んで聞いてもいいのか”、”面倒くさいと思われるのではないか”など、業者に細かな確認をすることに躊躇される方もいらっしゃるかもしれませんが、何も言わずにそのままにしていても、状況は変わらず、後悔を抱えてしまうことにもなりかねません。

そもそも疑問や不安をなげかけたときに、はぐらかしたり、威圧的な態度にでたりする業者には、なにか後ろ暗いことがあるのかもしれません。


適正価格で外壁塗装をするために重要なのは、業者に言われたことを鵜呑みにするのではなく、自身でもある程度の判断材料をもっておくことが重要です。

ご紹介した、ステップ①➡②➡③は、適正価格かどうかを見極めるために最低限必要な材料です。ぜひ、参考にしてみてください。

また、ここからは(4章以降)、プラスαで知っておくと役立つ情報をご紹介してまいります。

4.[補足情報]適正価格で外壁塗装をするために押さえておきたい2つのこと

4-1.業者が見積額を算出する工程でわかることもある

見積額が適正価格になっているかどうかを探るうえで、チェックすべきは見積書だけではありません。業者が見積額を算出する過程で必ず実施する、(住まいの)診断の内容も、見積額の妥当性を判断する一つの材料となります。なぜならば、“(住まいの)診断の内容が、見積額の根拠になっているからです。

診断では、住まいのプロ”外装劣化診断士*”が劣化状況を細かくチェックし、劣化状況に合わせた補修プラン(「どこを、どのように補修するか」という補修内容)を立てます。そして、この補修プランをもとに、見積額を算出しているのです。つまり、劣化状況の診断がきちんと行なわれていなければ、正しい見積額は算出できないということです。

劣化状況の診断がきちんと行なわれているかどうかは、下記ポイントを参考にチェックしてみてください。

■信頼できる住まいの診断内容をチェック

☑資格をもった住まいのプロ”外装劣化診断士”が診断をしている
☑診断には30分以上の時間をかけていた(5~10分で終わるような簡易診断ではない)
☑高い箇所や見えずらい箇所の劣化状況まで外壁全部をチェックしている

(屋根も一緒に塗装する場合)
☑屋根にのぼって劣化箇所をチェックしている
☑屋根裏までチェックしている

外装劣化診断士とは
一般社団法人住宅保全推進協会の認定資格。住宅診断の基礎的な知識をもち、住宅の屋根・外壁などの外装部分について、劣化状況の調査・診断・補修・改修工事などの対策について提案ができる資格

4-2.見積額の妥当性を判断するために、見積りは2社以上に依頼すべし

2つ以上の見積書があると、おおよその相場感が掴みやすくなります。また、さまざまな観点で比較ができるため、見積額が極端に高い・安い、工事内容の過不足等にひと目で気づけるというメリットもあります。

もちろん見積書をたくさん手にしたからといって適正価格がわかるわけではありませんが、見積書が適正価格を探る有効なツールとなることは間違いありません。少々面倒に感じられるかもしれませんが、見積りは、ぜひ2社以上の業者に依頼してください。

5.[補足情報]悪徳業者に要注意!知っておくべき2つの手口

塗装業界には、残念ながら、まだまだ心ない悪徳業者も存在しています。悪徳業者に騙されてしまうと、適正価格で工事ができないばかりか、品質の悪い工事を掴まされることにもなりかねません。

下記2つは、頻発している悪徳業者の手口です。必ず押さえておきましょう。

■大幅値引き

半額、◎◎%オフ!など、目を引くような大幅な値引きを提案してくる業者には注意が必要です。なぜならば、そもそも外壁塗装の価格は、大幅に値引けるはずがないからです。

そもそも外壁塗装は一定の価格で売買される類のものではありません。それぞれの住まいを診断したうえで、見積額を算出しているはずです。住まいにあわせて見積った価格から、さらに大幅に値引くというのはおかしな話でしょう

大幅値引きができるのは、もともと見積額を割り増しておいて、あたかも割引いたかのようにみせているだけかもしれません。もっと最悪の場合は、工事品質を下げて値引いていたり、本来1週間かかる工事を2~3日で終わらせて施工費をおさえていたり、使用する塗料の量を規定よりも減らしていたりと、消費者にはわからないように巧妙に価格を操作している可能性も十分にあります。

見積額から極端に安い値引きを提案された際には、なぜ安いのかを確認しましょう。その際、明確な、納得できる理由がない場合には、なんらかのカラクリが潜んでいるかもしれません。

 

■追加工事

塗装工事は、劣化状況によっては追加工事が発生することがあります。そこを逆手にとって、はじめは適正価格の見積額を提示しておき、工事がはじまってから「追加工事が必要になった」として、追加料金を請求し、価格を吊り上げようとする悪徳業者も存在します

やっかいなのが、最初から騙そうとしていたのか、ほんとうに追加工事が必要になったのか見極めるのが難しいというところです。

そこで重要となるのが、契約前に追加工事のリスクがあるかどうかをきちんと確認しておくことです。追加工事が発生した場合にかかる費用もあわせて確認しておくと安心です。さらに追加工事が発生した場合にも、ほんとうに必要なのか、また工事内容について詳しく確認するようにしてください。

そして、なにか「おかしいな」と思うことがあれば、第三者機関(公益財団法人 住宅リフォーム紛争処理センター消費生活センター)に頼るという選択肢があるということも、ぜひ押さえておいてください。

 

▼外壁塗装のトラブルについては、こちらの記事も参考にしてください。
外壁塗装のよくあるクレーム事例&対処法を大公開!

6.まとめ

見積書を手にしたとき、ついつい総額ばかり気になってしまいますが、どれだけ総額を凝視しても、適正価格かどうかの判断はできません。場合によっては、総額は妥当でも、安い塗料を使って粗利を増やすなどの裏工作が行なわれている可能性もあるのです。

心ない業者に騙されず、適正価格で工事をするためには、自身で見積書をきちんとチェックするのが一番安心で、確実です。ぜひ、本記事を参考に、お手元にある見積書をチェックしてみてください。