家の塗り替えを検討する際、いくつかの業者に見積りを依頼すると思います。

見積りを貰ってはみたものの、内容が三者三様で複数の塗料を提案されて、どの塗料が自分の家に合っているのか迷っている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

迷わず塗料選ぶには3つのポイントがあります。

①劣化状況を正しく把握する

②どのような機能が自分の家に必要か考える

③ライフプランに応じて耐久年数を選ぶ

これらのポイントを順番にご紹介していきます。

1.劣化状況に適した塗料を選ぶ

どの塗料が家に合っているのかを知るためには、家の劣化状況を正しく把握する必要があります。また、近年様々な機能を持ち合わせた塗料もたくさんあります。それらを理解した上で塗料選びをおこないましょう。

1-1.家の劣化状況をチェックしましょう

まずは家の外壁をチェックしてください。意外と気づいていない劣化症状があるかもしれません。

①ひび割れ

ひび割れ

外壁の角や窓の隅によくできます。放置しておくと、ひび割れから水が侵入し雨漏りを引き起こしたり、断熱材にカビが発生する可能性があります。

②チョーキング

チョーキング

壁を触ると白い粉がついた経験は誰でも1度はあるかと思います。この現象をチョーキング現象といいます。塗膜が薄くなっており、外壁の防水性が切れたサインです。

③カビや藻の汚れ

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カビや藻も外壁表面の防水切れによって発生します。カビは増殖し続けるので早めに手を打つ必要があります。

このように、注意深く見てみると意外と様々な劣化症状が見られると思います。

自分の家の劣化状況を正しく把握した上で、より適した塗料を選ぶことが大切です。

2.塗料の付加機能について知ろう

近年、「機能性塗料」という言葉をよく耳にするようになりました。 機能性塗料とは、塗料としての基本的な役割である保護や美観といった目的以外の機能を持つ塗料のことです。 どんな機能が自分の家に必要なのか、考えてみてましょう。

2-1.部屋の温度を下げたい人には「遮熱機能」

遮熱塗料

遮熱塗料は、温度上昇の原因である近赤外線を反射することにより塗膜や家の温度上昇を抑制することができます。 家の屋根や外壁に塗布することで室内温度の上昇を抑制し、室内環境の向上とともに

家の熱劣化を抑制するなどの効果があります。 室内温度を下げたい、エアコンなどの光熱費を削減したい人にぴったりの塗料です。

2-2.外壁のひび割れが気になる人には「防水機能」

防水塗料

防水塗料は、弾性があるため外壁のひび割れに追随し外部からの水の侵入を防ぐことができます。建物の不具合事象による相談の中で「外壁からの漏水トラブル」は上位を占めており、防水は非常に重要な機能のひとつです。外壁のひび割れや目地のひび割れが目立つ場合は、防水塗料を検討してみるとよいでしょう。

2-3.外壁の汚れが気になる人には「セルフクリーニング機能」

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セルフクリーニング機能とは、建物の外壁に塗るだけで親水性(雨が汚れを洗い流す)を発揮する防汚効果のことです。さらに、空気中の汚染物質も分解するので建物のまわりの空気までキレイになります。この機能を持つ塗料として一般的なものに光触媒塗料があります。 今現在汚れが気になっていたり、塗り替え後も外観をきれいに保ちたい人にぴったりな塗料です。

2-4.カビが気になる人には「防カビ機能」

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防カビ塗料は、外壁に塗るがけでカビやコケを防ぐことができます。 カビ・コケは美観を損ねるだけでなく、人体への影響や建物の腐食を促進し寿命を縮めてしまいます。 はじめから防カビ機能を持つ塗料もありますが、普通の塗料に防カビ剤を添加して防カビ性能を持たせるタイプのものもありますので、カビがひどい面にのみ塗布することも可能です。カビは健康被害を引き起こす可能性もあるので、注意しましょう。

2-5.長く保たせたい人には「高耐久機能」

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高耐久塗料には様々な塗料があります。一般的に15年以上もつとされるものを高耐久塗料といいます。他の塗料に比べて耐久性が高いため、塗り替えの回数が少なく済み、コスト面でも大きなメリットがあります。シリコン塗料、フッ素塗料、無機塗料等がこれに該当します。2回目の塗り替えの予定がある人や、ランニングコストを抑えたいという人にぴったりな塗料です。

3.塗料の樹脂によって耐久性が違う?!

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塗料は、溶媒・樹脂(塗膜となる主成分)・顔料(色付けの役割)・添加物で構成されています。なかでも、樹脂による耐久性の違いは大きく、機能性とともに考慮したいことのひとつです。

3-1.代表的な樹脂について

一般的に使用されている塗料の樹脂について、紹介します。

とにかく安い「ウレタン塗料」

塗料の特徴:アクリル樹脂にウレタン樹脂を添加したもの。現在はシリコン塗料が主流になっているが、シリコン塗料が登場するまでは塗料の代表格であった。

安価でありながら対摩擦性にすぐれることから、現在でも鉄の階段や鉄の手すり、雨戸・樋に用いることが多い。

耐久年数の目安:5~7年

②スタンダードな塗料「シリコン塗料」

塗料の特長:価格と機能のバランスが良い。カラーバリエーションを楽しみたい人に最適。水に馴染む「親水性」という性質を持っているので、塗膜の表面に汚れがつきにくくウレタン塗料などに比べ汚れに強い。

耐久年数の目安:7~10年

③耐久性が高く汚れにくい「フッ素塗料」

塗料の特長:耐久性を優先する人におすすめ。水をはじく撥水性能を持っており、とても強固な塗膜を生成する。東京スカイツリーにも使用されていたり、フライパンのテフロン加工もフッ素樹脂である。

耐久年数の目安:15年~

④とにかく長持ちする「無機塗料」

塗料の特長:無機とは自然界の鉱物物質のことで、紫外線の分解エネルギーよりも強い結合エネルギーを持ち、宝石や石などのように長期にわたり美しい状態を保つ。

耐久年数の目安:15年~

3-2.耐久性の違いについて

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樹脂の違いによって、耐久性が異なります。耐久性の低いものはお手頃価格ですが、長期間保たないので注意が必要です。耐久性の高いものを選ぶことでランニングコストを低く抑えることができます。

4.その他塗料選びの際のポイント

これまで塗料の付加機能や樹脂についてご紹介しました。他にも塗料を選ぶ際のポイントとなるものがあるので、ご紹介します。

4-1.水性塗料と溶剤塗料

「3.塗料の樹脂によって耐久性が違う?!」で、塗料は溶媒・顔料(色付けの役割)・樹脂(塗膜の主成分)・添加物で構成されていると記述しました。 溶媒は、水性塗料・溶剤塗料(強溶剤・弱溶剤)の2種類に分かれます。

成分臭い特徴
水性少ない塗装時、雨上がり等湿気が多くあると乾燥不良や色むら、耐久力不足につながるおそれがある。引火性が少なく、現在主流の塗料。
弱溶剤ややある発色性、耐久力が水性塗料に比べて高い。外壁よりも屋根に使用される事が多い。
強溶剤強い密着力がとても強く、既存の塗膜を溶かしてしまう可能性がある。現在ではあまりしようされていない。

以前は、溶剤塗料の方が耐久性がよいと言われておりましたが、現在では水性塗料も溶剤塗料と同等の耐久性があります。扱いやすく、環境への負担も少ないため、水性塗料をメインに扱う業者が多くなってきました。

4-2.仕様書を見てみよう

各塗料のパンフレットをよくみると、試験結果や製品データ等が記載されています。 これらを仕様書といいます。ここでは仕様書の見方について、紹介します。

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<促進耐候性試験>

太陽光・降雨等の屋外の条件を再現する試験のことで、この試験で塗膜の寿命を判断することができます。耐用年数の基準となるものが「光沢保持率(グラフ縦軸)」というものです。塗布時の光沢を100%とし、この光沢保持率が80%を下回ると塗膜の寿命が切れたと判断されています。この場合、赤線で示された塗料は25年以上の耐久年数がありますが、水色で示された塗料は耐久年数10年という試験結果ということになります。

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<艶・色>

色も塗料選びの重要なポイントとなってきます。塗料によっては、限られた色しか選べないということもありますので、事前に確認しましょう。また「艶(つや)」も選ぶことができます。

3分艶・5分艶・7分艶というように艶の程度を選ぶことができるので、落ち着いた質感にしたい場合は艶を抑えてみると良いかもしれません。

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まとめ

塗料を選ぶ際には、まず自分の家の劣化状況を正しく理解することが何よりも重要です。業者の診断結果をもとに、劣化状況に適した塗料を選びましょう。また、気になる塗料がある場合は、業者に確認してみてください。機能性、耐久性ともに何を選ぶかは自分次第です。塗り替えは私たちにとって重大なイベントですから、後悔しない塗料選びをしましょう。