「最近、屋根の劣化が目立ってきた」「屋根から雨漏りしている」「屋根の見た目を一新したい」このようなお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか?
そのような方にオススメしたいのが、「屋根の葺き替え工事」。
まさしく、屋根材をまるごと交換する改修工法です。既存の屋根材から新しい屋根材に交換し、新品の屋根材にする分、耐久性が増すなどの良さがある改修工法です。屋根の葺き替え工事を行なうにあたっては、特徴や費用の面、業者選びなど、総合的に検討する必要があるでしょう。
そこで、今回の記事では、屋根の葺き替え工事をご検討の方へ、特徴や費用、屋根材の種類など「屋根の葺き替え工事を行なう前に知っておきたいポイント」をご紹介します。
1.屋根の葺き替え工事の基礎知識
1-1.屋根の葺き替え工事とは?
葺き替え工事は、既存の屋根材を全て撤去し、新しい新品の屋根材を被せる改修工事のことです。下地である野地板や防水シートも取り替えるのが一般的です。まずは、屋根の葺き替え工事のメリット・デメリットについてご紹介します。
■屋根葺き替えのメリット
①家の寿命が延びる
屋根の葺き替えは屋根材とともに下地である野地板や防水シートも全て新しく取り換えるため、屋根の機能が新しくなります。つまり、建物を風から守る機能がよみがえり、家自体の寿命を延ばすことができるのです。
②家の外観を新しくできる
屋根は家の外観の大部分を占めています。屋根によって家に対する印象が大きく変わると言っても良いでしょう。屋根の葺き替え工事は、例えば瓦→スレート屋根、金属屋根など、素材自体を新しくするため、家の外観を一新し、違った印象にすることが可能です。
③軽い屋根にすることで耐震性が高まる
日本の一般家屋に使われる屋根材は数種類ありますが、中でも瓦屋根の割合が多くを占めています。瓦屋根は耐久性が高い、というメリットがありますがその一方で重量が重い、という欠点もあります。屋根材が重くなると、建物にかかる負担が大きくなります。スレート屋根や金属などの軽い素材の屋根材に取り換えることで、建物への負担が少なくなります。
■屋根葺き替えのデメリット
①費用が高い
屋根塗装や屋根修理に比べて、屋根材を全て取り換えるため材料費が高くなってしまいます。また、既存の屋根材・下地材なども全て処分する必要があるためその費用もかかってしまいます。
②廃材が出ることによる近隣への影響
既存の屋根材を処分する際に破片が近所まで飛んでしまうことがあります。屋根材を屋根から下に降ろす際に電動はしごで丁寧に降ろしたとしても細かいほこりは舞ってしまいます。それが原因で近隣トラブルにつながることもありますので、注意が必要です。
1-2.屋根の葺き替えを行なう前にまず押さえておくこと
次に葺き替え工事を行なうにあたって、どのようなことを押さえておく必要があるのか、ポイントをご説明します。
ポイント② どの「屋根材」を使って葺き替えするか決める
ポイント③ どの「業者」に施工を依頼するのか決める
以上のポイントを押さえておく必要があります。
ポイント①工事業者に屋根の上を十分に診断してもらう
屋根の工事には主に3種類の工法があります。
●葺き替え工事…既存の屋根材を全て撤去し、新しい屋根材にかえる工法
●重ね葺き工事…既存の屋根をそのまま残し、その上に屋根材を被せる工法
●塗装工事 …塗料で塗り替えを行う工法
以上の3つがありますが、屋根やその周りの劣化状況次第で、どの工法を選ぶか変わってきます。屋根材やその下の野地板と呼ばれる部分の劣化が進行している場合には、葺き替えが必要になりますが、劣化状況が深刻でない場合、葺き替えではなく、それ以外の2つの工事で良い場合もあります。まずは、施工業者の方にどのような工事が適切なのか見てもらうことをおすすめします。
次のような劣化症状がある場合は、屋根の葺き替え工事を行ないましょう。
■屋根材に多数のひび割れがある
■屋根全体が色あせている
■屋根にコケやカビが生えている
■天井に雨染みの跡がある
■棟板金が外れ、木材が腐食している
【POINT】屋根を長く使い続けるために、屋根の診断は定期的に実施すべし!
上記で説明したような劣化症状を放置し続けると雨漏りが進行し、大がかりな改修工事が必要になります。大がかりな改修工事を行なうとその分高額な改修費用が発生してしまいます。そのような状況にならないためにも、1年に1回は屋根や外壁の劣化状況を診てもらいましょう。今、工事を行なった方が良いのか、まだ行わなくて良いのか、把握することが大切です。
ポイント②どの「屋根材」に葺き替えるか決める
葺き替え用の屋根材は主に日本瓦、スレート瓦、ガルバリウム鋼板の3種類がよく使用されています。それぞれの特徴や風合いは異なります。家全体の仕上がりをイメージしながら、どの素材を選ぶか検討すると良いでしょう。また、それぞれの屋根材によって施工金額も異なりますので、費用面でも比較検討することをおすすめします。
ポイント③どの「業者」に依頼するか決める
葺き替え工事においてはどの業者に依頼するか、が非常に重要なポイントです。品質の悪い施工業者に依頼してしまうと、わずか数年で雨漏りが発生する危険性もあります。施工実績や見積りの内容など、細かくチェックして施工業者を選ぶ必要があるでしょう。
※屋根の工事には、葺き替え工事の他に、重ね葺き工事、塗装工事があります。それぞれの特徴や費用などについては、下記の記事をご覧ください。
2.屋根材の種類とオススメの屋根材
第2章では、葺き替えに用いる屋根材の種類とオススメ屋根材をご紹介します。各屋根材によって、性能や外観、費用など異なってきますので、その特徴を理解した上で、選びたいモノです。屋根材選びの際に参考にしてください。
2-1.和瓦の特徴
和瓦は日本では最も一般的で、親しまれてきた屋根材です。通気性を確保した工法によって断熱効果を得ているため、日本の気候に対応できる屋根材です。また耐久性が非常に高く、瓦自体のメンテナンスが不要という良い点もあります。ただ、重量があるのが一番のデメリットです。他の屋根材と比較すると、和瓦は他の屋根材より2~9倍も重量があります。家の高い部分の屋根が重くなるため、耐震性に影響を及ぼします。
【メリット】
・耐久性が極めて高いため半永久的に使用できる
・通気層による断熱効果がある
・重厚感があるため、和風の住宅にマッチする
【デメリット】
・他の屋根材に比べ、重く耐震性に影響を及ぼす
・葺き替えの費用が高くなる
【オススメの和瓦】
防災瓦スーパーエース(メーカー:株式会社鶴弥)
株式会社鶴弥は、国内で最大手の瓦メーカーです。そんな鶴弥の製造する防災瓦スーパーエースは、瓦同士がしっかりと噛み合わさる仕様のため強い風にも優れた耐風効果を発揮します。耐風性能、防水性能など、災害に対する強さを持つ瓦です。
2-2.スレート屋根の特徴
スレート瓦は別名「カラーベスト」「コロニアル」などとも呼ばれ、その価格の安さ、施工のしやすさから日本の新築住宅にて最も多く使用されている屋根材です。和瓦と比較して軽量であるため建物にかかる負荷が少なく耐震性に優れています。種類の豊富さ、施工性の高さから、あらゆる住宅に使用することが可能です。
しかしスレート瓦の主成分であるセメントに防水性がない為、表面を塗装した状態で新築に使用されているのですが、経年とともにその塗料の膜が劣化してしまいます。劣化すると防水性が低くなり、カビなどの発生や色あせなどが発生しやすくなってしまいます。そのため定期的なメンテナンスが必要な屋根材であると言えます。
【メリット】
・屋根材の中で最も安い
・種類が多く、施工しやすいためどんな建物にも合う
・軽量なため耐震性に優れる
【デメリット】
・経年とともに塗膜の防水機能が消えてしまう為定期的にメンテナンスする必要がある
・凍害に弱く寒冷地では使用できない
【オススメのスレート瓦】
コロニアルグラッサ(メーカー:ケイミュー株式会社)
画像出典:ケイミュー
ケイミュー株式会社は日本最大のスレートメーカーです。
そのケイミューが提供するスレートの中でもオススメなのが、コロニアルグラッサです。価格が11,000円/坪と安価で、性能も高いレベルを有しています。費用を抑えながら、優れた性能を屋根材で葺き替えしたいという形にオススメできる製品です。
2-3.ガルバリウム鋼板の特徴
ガルバリウム鋼板の屋根は耐用年数が長く、軽くて安価な近年人気の屋根材です。心材となる鋼板の腐食を防ぐ為に亜鉛・メッキ・シリコンで構成されたメッキ鋼板のことを指します。
デザイン性に優れていて、スレート型のものや瓦型のものなど、デザインが自在であることも人気の理由であると言えます。
金属系の屋根材の中では一番耐用年数が長く、また軽量で比較的安価で施工できるため人気が出てきた屋根材です。
【メリット】
・耐用年数が長く、メンテナンス費用を抑えることができる
・軽量
・安価に施工できる
【デメリット】
・金属のため防音性・断熱性に劣る
・表面に傷がつきやすい
【オススメのガルバリウム鋼板屋根】
スーパーガルテクトフッ素(メーカー:株式会社アイジー工業)
遮熱性鋼板と断熱材の相乗効果で優れた性能を発揮する、スーパーガルテクトフッ素。最高級の耐候性を発揮するフッ素樹脂を塗装しており、紫外線による劣化を長期間抑えることができます。遮熱性・断熱性更には沿岸地域でも安心して使える耐久性を兼ね備えた屋根材です。
2-4.ジンカリウム鋼板の特徴
ジンカリウム鋼板は別名「自然石粒付鋼板」とも呼ばれています。鋼板の表面を意匠性の高い石粒でコーティングしている屋根材です。表面の石つぶによって某音声や傷の付きにくさがプラスされるなど、従来の金属屋根の弱点を克服しています。また、屋根材自体に意匠性があるため、塗装も必要ありません。
【メリット】
・石粒の効果により、防音性や傷つきにくさが付加されている
・和風や洋風など幅広いデザインが有り、あらゆる住宅にマッチする
・色あせのリスクが低い
【デメリット】
・比較的新しくでてきた屋根材のため正しく施工できる業者が少ない
・スレート瓦などに比べると価格が少し高い
【オススメのジンカリウム鋼板屋根】
ディーズルーフィング(メーカー:ディートレーディング株式会社)
画像出典:ディートレーディング株式会社
ディーズルーフィングはどのような建物にも調和するジンカリウム鋼板の屋根材です。カラーバリエーションも明るいものやシックなものなど酒類が多く、美しくエレガントな仕上がりにすることができます。30年保証をつけているため、安心して選べる屋根材です。
2-5.アスファルトシングルの特徴
アスファルトシングルの最大の特徴は施工の自由度です。シート状ではさみ、カッターで切ることができるため、様々な形状の屋根に使用することが可能です。非常に軽く、また耐久性・防水性も問題ないと言えます。
しかし、アメリカではよく使用されているものの、日本での流通量は少ない輸入品のため、価格が高く、適切な工事ができる施工業者が少ない、というデメリットもあります。
アスファルトシングルは下地とシートを付ける際に接着剤を用いるのですが、適切な施工ができていないと接着剤が早期で剥がれてしまう、という事態も発生してしまいます。
施工業者が少ない、という点ではあまりオススメはできません。
【メリット】
・どんな形状の屋根にも施工できる
・耐久性、防水性、断熱性などの基本性能は高い
・軽量で耐震性に優れる
【デメリット】
・施工実績のある業者が少ない
・表面にカビが生じやすい
・経年劣化により捲れや剥がれが生じる
【オススメのアスファルトシングル屋根】
アルマ(メーカー:ニチハ株式会社)
画像出典:ニチハ株式会社
ニチハのアルマは、アメリカで生まれた140年の歴史を持つアスファルトシングル屋根材です。軽量かつ、防水性にも優れているため、建物を長期間守ることができます。カラーバリエーションも豊富で、希望の色を選ぶことが可能です。
3.屋根葺き替え工事にかかる工事費用相場
屋根の葺き替えは一般的に160万円程かかります。屋根自体の葺き替え工事以外にも足場の組み立てや、取り外した屋根の廃材処理など、多くの工事工程を必要とします。屋根工事以外の費用相場と内訳はそれぞれ下記のように構成されています。
工事名称 | 工程 | 内容 | 平均単価 |
---|---|---|---|
仮設工事 | 屋根足場仮設・撤去費 | 屋根工事をするための足場の設置・撤去費 | 700~800円/㎡ |
シート養生 | 作業時の小さなゴミ等が近隣に飛散しないためのシートの設置 | 150~250円/㎡ | |
その他諸経費 | 廃材処理費 | 既存屋根を取り外した時に発生する廃材の処理費用 | 50,000~80,000円/一式 |
運送費 | 屋根材の運送費 | 20,000~40,000円/一式 | |
現場管理費 | 現場管理の人件費 | 20,000~40,000円/一式 | |
スレートなどでアスベストを含有する場合 | アスベストの処理費用 | 20,000~80,000円/㎡ |
※実際のお家の状態・ご希望内容によっては、追加工程が必要になってくる場合があります。
和瓦からの葺き替え費用、スレート瓦からの葺き替え費用など、どの屋根材からどの屋根材に変更するか、によって、費用は異なります。
費用目安を知りたい方は下記の記事を御覧ください。
4.屋根葺き替え工事の施工の流れ
第4章では屋根の葺き替え工事の施工手順をご紹介します。
4-1.瓦おろし
屋根に使用されている既存の瓦・屋根材を取り外します。1枚1枚手作業で瓦を剥がし棟部の鬼瓦やのし瓦も降ろしていきます。
4-2.野地板の張り替え
野地板の傷みや腐食がひどい場合、新しい野地板に替える必要があります。
4-3.シート貼り
防水性を高める厚めの防水シートを屋根全面に貼ります。
4-4.役物の取り付け
谷部や軒先など、本体以外の役物を取り付けます。
4-5.本体取り付け
屋根材本体を取り付けていきます。
4-6.棟取り付け
棟木を取り付け、その後棟役物を取り付けていきます。この工程が完了し、完成です。
5.信頼できる業者選びのポイント
業者から葺き替え工事を推奨されたものの、本当に工事が必要なのか判断に迷うこともあるかと思います。業者選びに失敗してしまうと、本当は葺き替え工事の必要はないのに、不必要な工事を行なったり、工事品質が低く、施工後数年で雨漏りなどの劣化症状が発生してしまう、などの事態を招きかねません。良い業者かどうか見抜くためのポイントをご紹介しますので、業者選びの際に参考にしてください。
■信頼できる業者を見分けるポイント
□屋根に上がって診断をしてくれるか?
□診断結果を口頭での説明だけでなく、書面で報告してくれるか?
□診断は資格を持った専門のスタッフが行なってくれるのか?
□見積り書では、費用を内訳まで詳細に記載してくれるのか?
□保証がしっかりしているか?
以上のポイントをしっかりと押さえておきましょう。
業者選びに関しては、下記の記事で詳しく記載されていますので、ぜひこちらの記事をご覧ください。
まとめ
今回の記事では、屋根の葺き替え工事を行う上で押さえておくべきポイントをご紹介しました。屋根の葺き替え工事は、屋根を一新し、建物全体の寿命を延ばすことができる、改修工事です。ただ、屋根の葺き替え工事を行ったほうが良いのか、どうかは屋根の劣化状況や雨漏りしているか、など十分に診断を行った後に決める必要があります。
納得の行く屋根の葺き替え工事を行うためにもまずは屋根の診断を行ってもらいましょう。