自宅の塗り替えを検討している方の中には複数の塗装業者から見積りをもらい、「ラジカル塗料」の説明を受け、「ラジカル塗料」を検討されている方もいらっしゃると思います。
しかし、ラジカル塗料の説明を受けても塗料に精通していない限り、よく分からなくて難しいと思われたのではないでしょうか。
※ラジカル塗料とは、正確に言うと「ラジカル制御型の酸化チタンを使用した塗料」のことであり、以下の文章では「ラジカル制御型塗料」と呼びます。
実は、この「ラジカル制御」の技術は、塗料メーカーが新しい塗料の開発を進めていく上で、注目されている技術なのです。その「ラジカル制御」の技術を使っているのが、「ラジカル制御型塗料」です。
「ラジカル制御」は塗料の耐候性を向上させる技術で、特に塗料にこだわっている塗装店やリフォーム店で取り扱われています。
今回は、ラジカル制御型塗料の特徴、人気塗料「シリコン塗料」との違い、オススメのラジカル制御型塗料をお伝えします。
1.ラジカル制御型塗料とはどのような塗料?
冒頭でもお伝えした通りラジカル塗料とは、「ラジカル制御型の酸化チタンを使用した塗料」のことです。1章では「ラジカル」「酸化チタン」「ラジカル制御」についてお伝えいたします。
1-1.そもそも「ラジカル」とは何?
ラジカルとは、「樹脂や顔料の有機物を劣化させるエネルギー」と言い換えることができます。ラジカルは、塗料を調色(色を作る作業)する時に使う酸化チタン(白色顔料)に太陽光の紫外線が当たることで発生するエネルギーです。発生したラジカルは、塗料の樹脂や有機顔料にダメージを与えてしまい、劣化を促進させてしまいます。つまり、ラジカルは塗膜の劣化症状の1つ「チョーキング現象」を引き起こす原因になってしまいます。
チョーキング現象
チョーキング現象とは・・・手で触ると、チョーク(白墨)のような粉状のものが付着する状態
1-2.ラジカルを発生させてしまう「酸化チタン」にはどんな役割があるの?
酸化チタンは、外壁の塗替えで人気の淡彩色(ホワイト系やクリーム系など)を調色するときに必要な白色顔料です。また、下地の色を覆い隠す隠ぺい力を高める効果もあります。この酸化チタンを使わなければ、淡彩色の塗料を作ることができませんので、酸化チタンは欠かせない顔料です。
1-3.ラジカル制御技術はここがすごい!
淡彩色系の塗料を調色するためには「酸化チタン」が必要であるが、「ラジカル」が発生してしまい「チョーキング現象」の原因になってしまう、ということがわかりました。では、どうすれば耐候性が高い淡彩色系の塗料を作ることができるのでしょうか?
その答えが「ラジカル制御型の酸化チタン」と「光安定剤(HALS)」を使った「ラジカル制御型塗料」です!
「ラジカル制御型酸化チタン」とは、酸化チタンの表層に発生したラジカルを閉じ込めるためのバリアー層がある酸化チタンのことです。バリアー層によってラジカルが発生したとしても閉じ込めることができるので、樹脂や有機顔料にダメージを与えませんので、塗料の耐候性を延ばすことができます。
さらに、塗料の耐候性を高めるために光安定剤(HALS)を使っています。光安定剤の目的は、ラジカル制御型酸化チタンのバリアー層からラジカルが何かのきっかけで漏れ出した時に、ラジカルを捕まえるための添加剤になります。
下記にラジカル制御型酸化チタンと光安定剤(HALS)のイメージ図を記載します。
2.ラジカル制御型塗料の特徴
2章では、ラジカル制御型塗料の特徴について解説します。
2-1.劣化現象の1つ「チョーキング現象」に効果がある
酸化チタンから発生してしまったラジカルによって、樹脂がダメージを受けて塗膜の劣化が進行します。その結果、「塗膜の劣化=樹脂の劣化」を意味しており、外壁を触って白く粉が付着する「チョーキング現象」が発生します。ラジカル制御型塗料は、ラジカルの発生を抑制できるので、チョーキング現象に対して高い効果があります。結果として、塗料の耐候性を向上させることができます。
2-2.濃色の場合、ラジカル抑制効果を発揮できない
酸化チタンは「白色顔料」という話をしました。そのため、酸化チタンは白色顔料なので調色をするときに使用すると、濃色を作ることが難しくなってします。そもそも、酸化チタンを使用しない濃色の塗料は、そもそもラジカルが発生せず、耐候性に影響を与えることはありません。そのため、濃色の塗料は樹脂の耐候性に依存してしまいますので、耐候性の高い樹脂を選ぶ必要があります。
2-3.ラジカル制御型塗料の製品数及び実績が少ない
各種塗料メーカーが「ラジカル制御型酸化チタン」を使用しているとカタログに明記している塗料は数える程しかありません。また、一番早く発売された「ラジカル制御型塗料」でも2012年の販売開始ですので、実績としては5年経過している程度です。
「ラジカル制御型塗料」について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?「ラジカル制御型塗料」の特徴がおわかりいただけたと思います。
どのような塗料にも良い面と悪い面がありますので、しっかりと特徴を理解した上で塗料選定をされることをオススメします。
3.ラジカル制御型塗料は人気塗料「シリコン塗料」と何が違うの?
ラジカル制御型塗料とシリコン塗料の違いを説明する前に、一般水性塗料の中身を説明します。下記のイメージ図をご覧ください。
水性塗料は、「樹脂」「顔料」「水・添加剤」によって構成されています。塗料の樹脂を「アクリル系・シリコン系・無機フッ素系」と変えることで、様々な塗料を作ることができます。また、「顔料」は白色顔料(酸化チタン)やその他の顔料で調色することで、淡彩色から濃色を作ることができます。
では、次にオススメ塗料「ラジカル制御型塗料」と人気塗料「シリコン塗料」を下記のイメージ図で説明します。
「ラジカル制御型塗料」の場合、「何らかの樹脂」と「ラジカル制御型酸化チタン」を使用した塗料のことです。
「シリコン塗料」の場合、「シリコン樹脂」と「従来の酸化チタン」を使用した塗料のことです。
このように、どのような樹脂や顔料を使っているのかによって、ラジカル制御型塗料やシリコン塗料など呼び方が変わります。
さらに、ラジカル抑制型塗料について詳しく説明すると、下記のイメージ図のようになります。
このように「シリコン樹脂」や「無機フッ素樹脂」と「ラジカル制御型酸化チタン」を組み合わせることで「ラジカル制御型塗料」ができます。少し細かな話になりましたが、ラジカル制御型塗料のイメージは掴むことができたと思います。
3-1からの比較では、「ラジカル制御型シリコン塗料」と「シリコン塗料」の塗料を例に取って説明します。
3−1.塗膜の最も大切な「耐候性」の比較
「ラジカル制御型シリコン塗料」は、「シリコン塗料」と比較すると、高い耐候性があります。
本来、塗料の耐候性は「樹脂」によって決まります。樹脂は【アクリル<ウレタン<シリコン<フッ素<無機フッ素<無機】の順番で耐候性が高くなります。耐候性の良い塗料を選ぶポイントは「耐候性の良い樹脂」を選ぶことが大切です。
さらに、塗料の耐候性は「ラジカル制御型酸化チタン」を使うことで耐候性を高めることができます。その理由は、1章で説明した「樹脂や顔料の有機物を劣化させるエネルギー」のラジカルを抑制するので、塗料の耐候性を高めることができます。
3−2.価格比較
塗料の価格について説明します。結論から言うと、「ラジカル制御型シリコン塗料」は「シリコン塗料」よりも塗料の値段は高くなります。
「ラジカル制御型酸化チタン」という高品質の顔料を使用しているためです。
しかしながら、高い耐候性があることで、耐候年数と価格からコストパフォーマンスをみると、「ラジカル制御型シリコン塗料」の方がお得になります。
3−3.「ラジカル制御型シリコン塗料」と「シリコン塗料」の比較表
「ラジカル制御型シリコン塗料」と「シリコン塗料」の比較表を下記にまとめました。
ラジカル制御型 シリコン塗料 | シリコン塗料 | |||
---|---|---|---|---|
耐候性 | ◎ | 10~13年 | ○ | 7~10年 |
塗り替え費用 | ○ | 2200~2800円/㎡ | ◎ | 1800~2000円/㎡ |
コスト パフォーマンス | ◎ | 良い | ○ | 普通 |
調色可能 | △ | 淡彩色~中彩色 | ○ | 淡彩色~濃色 |
製品数 | △ | 少ない | ◎ | 多い |
実績 | △ | 少ない | ◎ | 多い |
塗り替え費用は高めですが、耐候性の年数から見るとコストパフォーマンスが良い塗料であるとわかります。
4.ラジカル制御型塗料はこんな人にオススメ
最後に、ラジカル制御型塗料はどのような方にオススメなのかをまとめましたので、参考にしてください。
☑初期費用が少々高くなっても、良い塗料を選び抜きたい方
☑同程度の見積金額で「ラジカル制御型塗料」と「一般塗料」を選んだらよいか悩んでいる方
☑淡彩色系の色で塗替えを検討している方
列挙した方々は「ラジカル制御型塗料」を選ばれることをオススメします。
合わせて、「どのような樹脂を使っているか」を確認し、最適な塗料選定をしてください。例えば、「フッ素塗料」と「ラジカル制御型シリコン塗料」は、樹脂が異なるため性能を比較できません。この場合は、「ラジカル制御型フッ素塗料」があるかどうかを塗装業者へ相談してください。
フッ素樹脂とシリコン樹脂はそもそも違う性能の塗料ですので、単純に耐候性や値段だけで比較できません。
4−1.オススメの外壁と屋根のラジカル制御型塗料
ここではオススメのラジカル制御型塗料を「外壁用」と「屋根用」に分けて一覧化しました。
●外壁用
メーカー | 商品名 | 溶媒 | 樹脂 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
日本ペイント | パーフェクトトップ | 水性 | アクリル系 | 耐候性 低汚染性 |
エスケー化研 | プレミアムシリコン | 水性 | シリコン系 | 耐候性 低汚染性 |
関西ペイント | アレスダイナミックTOP | 水性 | シリコン系 | 耐候性 低汚染性 |
アステックペイント | 超低汚染リファイン1000Si-IR | 水性 | シリコン系 ※無機フッ素系もあり | 耐候性 遮熱性 低汚染性 |
●屋根用
メーカー | 商品名 | 溶媒 | 樹脂 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
日本ペイント | ファインパーフェクトベスト | 弱溶剤 | アクリル系 | 低汚染性 |
日本ペイント | パーフェクトクーラーベスト | 水性 | アクリル系 | 耐候性 遮熱性 |
アステックペイント | 超低汚染リファイン500Si-IR | 水性 | シリコン系 ※無機フッ素系も有り | 耐候性 遮熱性 低汚染性 |
アステックペイント | スーパーシャネツサーモSi | 弱溶剤 | シリコン系 ※フッ素系も有り | 耐候性 遮熱性 |
外壁用と屋根用の各種塗料一覧をご紹介しました。耐候性の他にも、「水性か溶剤」・「遮熱性」・「低汚染性」・「防カビ性」・「色や艶の種類」などさまざまな種類・機能・特徴があります。塗り替える際に、どのような機能がご自宅に必要なのかもどうかも検討されるとより良い塗料を選ぶことができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「ラジカル塗料」といっても、厳密に言うと「ラジカル制御型酸化チタンを使った塗料」のことであり、「どのような樹脂」を採用しているかが大切なのかがお分かりいただけたと思います。どのような技術なのかをしっかりと理解している塗装業者に説明を受け、塗装工事をお願いすることをオススメします。
今後も、新しい技術が詰め込まれた塗料が多く発売してきますが、塗装工事を検討されている方にとって、この記事が参考になれば幸いです。