いざ、塗装をすると決めてから迷われるのが「どの塗料にするか」だと思います。世の中には何百種類という塗料が出てきており、どの塗料にすればいいのかがますます分かりにくくなっています。皆さんが特に気になるのは「一度塗るとどのくらいもつものなのか、どのくらいの耐久性があるのか」という点ではないでしょうか。塗装は高い買い物なので、できることなら安くて長くもつ塗料を選びたいですよね。
塗料の耐久性という観点でみたときに、塗料の種類は大きく2つに分かれます。耐久性は低いが費用が安く済む塗料と、耐久性は高いが費用が高くつく塗料です。「できるだけ安く長持ちする塗料で塗り替えをしたい」と誰もが思われると思いますが、長持ちする塗料は1缶あたりの金額も高くなってしまいます。
しかし、耐久性の高い塗料は初期費用こそ高くつきますが、その分耐久性が長いので、長い目で見ると耐久性の低く安い塗料よりもお得に塗り替えができます。
また、屋根の劣化は外壁より1.5倍も早いと言われています。屋根は普段見えないので、外壁の塗料ばかり気にしてしまいがちですが、屋根は風雨や紫外線の影響を一番受ける部分であるため、屋根のメンテナンスはとても重要です。
この記事では、屋根塗装の耐久性にスポットをあて、屋根の塗料ごとの耐久性の違いや屋根塗装をする際の劣化症状の目安を紹介します。
1.屋根塗装の耐久年数は約10年~15年
屋根塗装の耐久年数は塗料の種類によって変わりますが、約10~15年が一般的です。
また、新築の塗装は建ててから10年ほどが塗り替え目安となります。
ここでは、屋根塗装の耐久年数の目安と塗料の種類ごとの耐久年数を説明します。
1-1.屋根塗装の耐久年数の目安/約10年~15年
屋根塗装は外壁塗装と同じく耐久年数は約10~15年となります。
しかし、外壁と比べて屋根は風雨や紫外線に晒されることが多いため、劣化しやすいので注意が必要です。
屋根の状態を自分自身で確かめることは難しいことです。
いつの間にか劣化が進み、雨漏りが発生していたなんてこともあります。
そうなってしまっては元も子もありません。
築年数から何年経ったか、前回の塗り替えから何年経ったかをしっかりと把握し、
定期的に屋根の状態を確かめることが大切です。
ただ、耐久年数は約10~15年と言っても、5年で悪くなり、塗膜の防水性が切れ、雨漏りを誘発してしまう場合、20年経っても問題がなく塗膜の防水性があり、雨風から家を守り続けている場合もあります。
では、次に塗料の種類ごとの耐久年数をみてみましょう。
1-2.塗料の種類ごとに耐久年数が違う
一般的によく使われる代表的な塗料の種類を紹介していきます。
アクリル塗料/耐久年数約5~7年
以前は主流の塗料として扱われてきましたが、耐久年数が5~7年と短く、汚れやすいこともあり、現在ではあまり使用されていません。耐久年数が短い分、コストパフォーマンスが良いですが、短いスパンで何回も塗り替えをしなければなりません。
シリコン塗料/耐久年数約10~13年
シリコン塗料は現在でも人気のある塗料のひとつです。汚れの付着や色落ちが少なく、安定しており、費用もそこまで高くない塗料です。防汚性をもったシリコン塗料等も出てきており、耐久年数も10~13年と保ちも悪くないです。メーカーごとに耐久年数や機能は異なりますので、よく調べて目的にあったものを選びましょう。
フッ素/耐久年数約15~20年
耐久年数も15~20年と長く、価格も高い塗料です。価格は高い分、耐熱性・耐候性・不燃性・防汚性に優れており、近年注目を浴びている塗料のひとつです。
無機/耐久年数約20年~
耐久年数が高い分、費用も高くなりますが、近年人気の高い塗料のひとつです。無機とは鉱物物質のことで、紫外線の分解エネルギーよりも高い結合エネルギーを持っており、宝石や石のように長い間美しい状態を保ちます。その他、キズつきにくく、汚れにくく、燃えにくい特徴があります。
しかし、30~40年後の塗り替え回数を考慮すると、ランニングコストはアクリル、シリコンといった塗料よりも安くなります。
2.耐久年数がなくなることで起こる劣化と耐久年数を考慮した塗料の選び方
屋根塗装の耐久年数がなくなることで、様々な劣化症状が出てきます。その劣化が進むことで雨漏りにつながってしまうので、そうなる前に定期的に塗り替えを行いましょう。
2-1.耐久年数が切れることによって起こる劣化事例
ここでは、屋根塗装の耐久年数が切れることによって起こる劣化事例を紹介します。
症状 | 内容 |
---|---|
色褪せ | 経年劣化により、塗膜表面が色褪せている。塗膜の耐久性が落ちている為、見た目が悪くなることはもちろん、防水性も低下し、苔・カビ・藻が発生しやすくなる。 |
藻や苔の発生 | 屋根自体に水分が滞留し湿気が高くなる為、藻や苔が発生してしまっている。 |
凍害 | 塗膜の防水性が失われ、水分が瓦に吸収され冬場や夜間に凍結、水分の乾燥を繰り返し瓦自体にヒビが入ってしまい、欠損を誘発してしまう可能性がある。 |
滑落 | 割れ落ちた瓦を放置していると、ひび割れが大きくなり、割れ落ちてしまう。割れた瓦が落ちてしまうと大事故に繋がるので注意が必要。 |
反り | 水分の浸透と乾燥を繰り返して起こる。放置しておくと反りが大きくなり雨漏りの原因となる。 |
以上のような劣化症状により雨水が野地板を腐食し、雨漏りが発生させてしまう可能性があります。さらに、カビやシミによりシックハウス症候群等の健康障害を引き起こす恐れもあるので、注意が必要です。
2-2.耐久年数を考慮した塗料の選び方のポイント
塗り替えを検討されている方は、目的に合った耐久年数の塗料を選ぶと良いでしょう。
【選ぶポイント】
①耐久年数が短く、価格が安い塗料で短いスパンで塗り替えを行うのか
②耐久年数が長く、価格が高い塗料で長いスパンで塗り替えを行うのか
外壁の塗り替えの場合、短いスパンで何度も塗り替えをして色の変化を楽しみたいという方もいらっしゃいます。しかし、屋根の塗り替えの場合、地上から見えにくいですし、外壁より劣化スピードが早いです。
ランニングコストでみていくと、耐久年数が長く、価格が高い塗料で長いスパンで塗り替えを行うほうが安くなります。どちらかで迷われている方は、耐久年数の高い塗料を選ばれてはいかがでしょうか。
例として、塗り替えてから30年間のランニングコストをみてみましょう。
耐久性が10年で120万円する塗装工事と、耐久性が15年で150万円する塗装工事を比べてみます。そうすると、耐久性が10年で120万円する塗装工事は30年間で360万円の費用がかかり、耐久性が15年で150万円する塗装工事は30年間で300万円の費用がかかります。実に、耐久性が15年で150万円する塗装工事の方が60万円もお得になります。
長い目でみると、安い塗料を使うことが工事を安く済ませられる方法ではないことが分かります。
※上記価格はあくまで例です。
塗料の選び方についてより詳しく知りたい方はこちら:塗料の種類・選び方
3.屋根塗装の落とし穴
塗り替えと言っても、ただローラーで塗ればいいだけじゃありません。塗料ごとに仕様基準が異なり、それを守らなければ施工不良となってしまいます。ここではそんな落とし穴をみていきます。
3-1.仕様基準を守らなければ期待耐久年数は発揮できない
塗り替えは、単純にただ塗ればいいわけではありません。基準を守らずに塗装したために施工不良を起こした事例も多くあります。
塗料にはそれぞれ、仕様基準というものがあります。
・塗布量(塗る面積ごとにどれだけの塗料を塗らなければならないか)
・インターバル(下塗り・中塗り・上塗りの工程で乾かさないといけない時間)
このような基準が守られていない場合、施工不良となります。
後々トラブルが起きないようにするためにも、この観点をしっかり持っている業者に塗装をしてもらいましょう。
塗布量を守るためには、まずは正しい塗装面積が算出されていないといけません。
もし、塗装面積が「坪数」で表記されていたら、注意が必要です。「坪数」は単なる床面積なので、外壁の面積(塗布面積)ではありません。
また、お手元の見積書を見比べて下さい。各社、塗装面積が異なると思います。塗装面積の根拠を必ずチェックし、正しい塗装面積を把握しましょう。
塗料の使用缶数が詳細に記載されているかチェックしましょう。塗料には、メーカーが指定している「基準塗布量」というものがあります。この塗布量を守らないとその塗料がもつ、本来の性能は発揮されません。使用缶数が少なければ、施工不良になってしまいますので注意が必要です。
3-2.不良施工を防ぐための、見積書を見るポイント
塗装業者の見積となると、数値が「一式」と書かれているようなどんぶり勘定のものが多数存在します。
それでは、本当に塗り面積に対して基準を守った施工内容なのか分かりません。そのため、下表のように、工事の内容を明確に見積書に記載してくれているかを見ることがポイントです。
塗料メーカー名・商品名 | たとえば、同じシリコン塗料でも、塗料メーカー・商品によって価格は様々。どのメーカーの、何という商品を使うのかを明確にする必要があります。 |
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塗装面積と算出単位 | 実際に塗る面積=塗装面積によって、材料費や施工費が変わってきます。この面積を正しく算出しているかどうかが重要です。 |
塗料の缶数 | 使用する塗料の基準塗布量から、塗料が何缶必要なのかを記載します。着工後、見積書どおりの缶数が正しく現場に搬入されたかどうかもチェックしましょう。 |
3-3.【+α】コストはかかるが長く保たせたい方にはカバー工法or葺き替え工法がおすすめ
塗り替えを既に2回してしまった、劣化が進み過ぎて塗装どころでない、塗装よりも長く保たせたい方には、コストは掛かってしまいますが、カバー工法がおすすめです。
【カバー工法】
既存のスレート屋根を取り外さず、そのまま新しい屋根材を取り付ける工法です。費用を抑えながら屋根の外観および性能を新しくできる、バランスのとれた屋根のリフォーム方法のひとつです。
・メリット
既存の屋根を解体しないため、解体費用および廃材処理費が不要。葺き替え工事よりは費用を抑えることが可能です。また、短期間で工事を行うため、職人の方の費用も抑えられます。また、屋根材が二重になるため、断熱性、遮音性も高まります。
・デメリット
屋根下に湿気がたまることがないように換気口をつけ、外気を取り込む必要があります。そのため、「屋根リフォーム重ね葺き工事」に加えて換気のための工事費用が発生してきます。
・価格目安
業者ごとの施工費によって価格に違いはありますが、おおまかに50万円~120万円程が相場となります。
既存の屋根を解体せず、廃材処理も不要のため、葺き替えよりも費用を抑えての施工が可能です。
【葺き替え工法】
既存の屋根材を取り外し、新しい屋根材を設置する工事です。野地板や防水シートまで劣化が進行している場合に、この葺き替え工法が必要となってきます。
・メリット
全て新品の屋根材を使用するため、新築同様の見た目や耐久性があります。屋根材を全て剥がして工事をするため、どのような屋根でも工事が可能です。
・デメリット
塗装やカバー工法と比べると、施工期間が長く工事費用が高くなります。既存の屋根材を剥がすので、工事期間中の雨の影響を受けてしまいやすいことがデメリットです。
また、屋根の解体や廃棄の費用が別途かかります。注意点として、アスベストが含まれている屋根材の場合、通常より高額な解体費がかかります。
・価格目安
業者ごとの施工費によって価格に違いはありますが、おおまかに70万円~140万円ほどが相場となります。
↓以下のサイトを参考にされると良いでしょう。
4.的確な塗装をするために塗り替え時には専門家に診断してもらおう
塗装をする前には必ず専門家に家の状態を診断してもらいましょう。的確に診断をしてもらうことで、本当に塗装をするべきか、どのような塗料を塗るべきかを知れます。
4-1.外装劣化診断で劣化箇所をチェック
屋根の状態を自分自身で診ることは難しく、屋根に上ることは危険です。そのため、専門家に依頼し、下記のようなポイントで屋根を診断してもらいましょう。下記の診断をしてもらうことで、家の状態を的確に把握出来ます。
■屋根表面の防水性を調査する項目
吸水テスト | 実施方法 |
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屋根材表面に霧吹きで水を吹きかけ、防水機能の有無をチェックする。 | |
使用ツール | 評価のポイント |
霧吹き | 水が吸い込まれていくことが目視でチェックできる場合は防水機能を失っている。 |
塗膜劣化の診断 | 実施方法 |
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コケ・藻の発生 | 屋根表面の微細な劣化を10倍ルーペを用いて撮影する。 |
使用ツール | 評価のポイント |
10倍ルーペ | 藻やコケの発生は雨水の吸水を早めるので、早期のメンテナンスが必要。 |
屋根の表面が劣化すると、一番重要な防水性が損なわれていきます。防水性が損なわれた屋根材は雨を弾かず、水分を吸収してしまいます。最悪の場合、雨漏れを引き起こす原因ともなります。
■屋根材の防水性を調査する項目
瓦の滑落の診断 | 実施方法 |
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滑落した屋根材 | 劣化が進み滑落した屋根材があれば撮影する。 |
使用ツール | 評価のポイント |
目視 | 既に滑落してしまっている部分があれば、そこから漏水の恐れがある。 |
瓦の滑落とは、屋根材事態が欠けてしまう事をいいます。これは、小さなヒビを放置した結果、起こる現象です。割れた部分の屋根材には当然、防水性がないため、水分をダイレクトに吸収してしまいます。
■屋根材の排水性を調査する項目
縁切りのチェック | 実施方法 |
---|---|
スレート瓦の縁切り不十分な箇所にヘラを差し込む | |
使用ツール | 評価のポイント |
ヘラ | スレートの小口から水が溢れるようなら、排水がうまくできていない。 |
スレート瓦と呼ばれる屋根材は縁切りという作業がされているかどうかが非常に重要になります。縁切りのされていないスレート屋根は雨水が瓦の重なり部分に滞留してしまい、雨漏りを引き起こす原因となります。
■屋根材の遮熱性を調査する項目
屋根温度の測定 | 実施方法 |
---|---|
非接触温度計を用いて、屋根表面の温度を測定する。 | |
使用ツール | 評価のポイント |
非接触温度計 | 屋根表面の遮熱機能がなくなっている場合は表面温度が60度を超えることもある。 |
屋根に塗られる塗料の中には、遮熱や断熱機能があり屋根の温度を結果的に下げるものもあります。屋根表面が劣化すると、それらの機能が損なわれる為、最悪60度以上まで温度が上がります。
参照:外壁・屋根調査で何がわかる?調査方法・調査項目まで徹底解説!
4-2.どこの業者を選ぶべきかは診断内容で決まる
では、実際にどこの業者を選ぶべきか、分からない方は多いかと思います。まずは、3-1の内容でしっかりと診断をしてくれる業者を選びましょう。
その他、新聞広告やチラシ、近隣の方からの情報、インターネットで検索する等、様々な方法があります。
しかし、1社だけに絞って診断をしてもらっても、本当にいいのかどうか分かりかねます。
実際に診断をしてもらい見積を貰う場合は、3社ほど相見積もりを依頼し、的確に診断してくれるのかを見比べましょう。
参照を参考にしてもらえると良いでしょう。
参照:【塗装業者の見極め方】8つのステップで信頼できる業者を選ぼう!
まとめ
屋根塗装の耐久性は塗料の種類によって変わります。
塗料は樹脂の違いによって大きく変わり、安い塗料は耐久性も低く、高い塗料は高い耐久性を発揮します。
また、良い塗料で屋根塗装したからといって、耐久性は高いというわけではなく、
仕様基準を守った正しい施工をしてもらわないと、本来の力を発揮しません。
読まれてもまだ迷われている方は、ランニングコストでみていくと良いでしょう。
結果から言うと、安くて耐久性が低い塗料よりも、耐久性が高く費用も高い塗料の方が
ランニングコストでみると安く済むのでおすすめです。
また、コストが掛かっても長く保たせたい方はカバー工法や葺き替え工法といった工事も検討させると良いでしょう。
今後、家をどうしていくのか、目的に合わせて塗料を選定し、信頼できる業者を選びましょう。
妥協せず、しっかりと見極めるために、納得がいくまで調べることが屋根塗装を長持ちさせるポイントにもなります。
屋根塗装を成功させるために本記事を参考にしてもらえればと思います。