外壁塗装を検討する上で、特に頭を悩ませるのが塗料選び。シリコンやフッ素などの塗料の種類の他にも、低汚染や防水などの特殊機能まで、何を選べばいいかわからないほど様々な種類の塗料が存在しています。おまけに商品名は耳馴染みのないものばかり。更に困ったことに、業者によって勧められる塗料が全く違う場合もあります。
なぜ業者によっておすすめ塗料が違うのかというと、「施主が外壁塗装にどんなことを求めるか」によって最適な塗料が変わるからです。
例えば「とにかく安く済ませたい!」という方には多少グレードが落ちても予算内に収まる塗料がおすすめできますし、通行量の多い大通りに面している住まいには汚れを抑える機能を持つ塗料がいいかもしれません。
このように、予算や住まいの立地条件などによってどんな塗料を選ぶべきかが決まってくるのです。そのため、本当にマイホームに合った塗料を選びたいのであれば施主自身がある程度の知識を身につけておく必要があります。
本記事では外壁塗装の塗料選びに悩んでいる方に向けて、塗料のグレードや機能はどれを選べばいいかの判断基準をチャート図にしてご紹介。さらに、カテゴリ別の代表的な塗料、塗料選びをする際の注意点までを詳しく解説します。この記事を参考にして、後悔しない塗料選びを進めましょう!
1.【基礎知識】外壁塗装の塗料にはどんな種類があるの?
まずは外壁塗装の塗料にはどんな種類があるのかについてご紹介します。
外壁用の塗料は主に「グレード」と「機能」によって分類されています。塗料のグレードは主成分である樹脂の種類によって変動し、基本的にはその違いによって耐久性や価格が変動します。
そして塗料には様々な特殊機能をもつものがあり、住まいの状況や施主の好みによってどんな機能をもつ塗料がいいかが決まります。そのため塗料を選ぶ際には、予算に応じて塗料のグレードを選んだ後、どんな機能をもつ塗料にするかを決めていくという流れが一般的なのです。
ここでは塗料のグレードと機能別に、表を使って簡単に解説していきます。
1-1.塗料の「グレード」一覧
ここでは、塗料の種類をグレードで分類したものを、表で詳しくご紹介します。(ここで紹介している単価はあくまでも目安です。塗料や塗装業者によって変動することもありますのでご注意ください)
グレード | 耐久年数 | 単価(1缶あたり) | 解説 |
---|---|---|---|
ウレタン塗料 | 8~10年 | 5,000~20,000円 | 塗膜が柔らかく下地との密着性にも優れているため、付帯部(軒天・雨樋など)でよく使われています。ただ、現在では外壁にはあまり使われていません。 |
シリコン塗料 | 10~15年 | 1,500~40,000円 | 現在、外壁塗装で最もよく使われている塗料です。コストパフォーマンスに優れ、耐久性も比較的高いのが特徴です。 |
フッ素塗料 | 15年~20年 | 40,000~100,000円 | 大型のビルなどに使用されることが多い、非常に耐久性が高い塗料です。塗膜が硬いため傷や剥がれが発生しにくいのが特徴です |
(変性)無機塗料 | 20年~25年 | 50,000~120,000円 | セラミックやケイ素などの無機物を主原料としており、他の塗料と比べても特に耐久性が高い塗料です。低汚染性や不燃性などを併せ持つ高機能塗料です。価格はまだ高いですが、予算に余裕がある場合にはおすすめできます。 |
1-2.塗料の「機能」一覧
塗料の技術発展は目覚ましく、現在では様々な機能をもつ塗料が開発されています。以下は、代表的な塗料の機能をまとめたものです。
塗料の機能 | 解説 |
---|---|
遮熱 | 特殊な顔料や中空セラミックなどの働きで、太陽熱を効果的に反射する機能です。屋根用塗料の機能として人気です。 |
低汚染 | 排ガスや土埃などによる汚れに強い塗料を指します。雨が降ることで汚れを洗い流すセルフクリーニング機能を持つ「親水性タイプ」と、雨水に含まれる汚れが付着しにくい「撥水性タイプ」があります。。 |
防水 | 塗膜の伸縮性が高く、外壁のひび割れに追随して水の浸入を防ぐことができる機能です。 |
防カビ | 特殊な薬剤の効果により、カビや藻の発生を防止します。 |
高意匠 | 通常の塗料が単色で塗りつぶすのに対して、多彩な色や独特の質感でおしゃれな外観を再現できます。他とは違う個性的な外壁にしたい方におすすめです。 |
ラジカル制御 | 塗料の劣化要因となる「ラジカル」の発生を制御し、耐久性を高めます。最近確立された技術で、非常に人気の機能です。 |
2.どんな塗料を選べばいいの?【グレード編】
ここまでの内容で塗料の種類を簡単にご紹介してきましたが、種類が多すぎて「どんな塗料を選べばいいのか、余計にわからなくなった」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで本章では、判断基準がひと目でわかるチャートマップと、塗料のグレード別のくわしい解説をご紹介します。
あなたは外壁塗装をする上で、何を重視していますか? 下の図を参考に、自分にあった塗料のグレードを選びましょう。
塗料の種類・選び方をより詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
▼塗料の種類・選び方
おすすめの塗料がわかったら、次はそれぞれの詳しい解説を見ていきましょう。図に記された、塗料ごとの参照先をぜひご覧ください。
2-1.とにかく安い塗料がいいという方は「ウレタン塗料」
現在も使用されている外壁用塗料の中では、もっともグレードが低く価格がお手頃な塗料です。しかしその一方で、紫外線に弱く6年~8年ほどで再塗装が必要になってしまうため、費用対効果でいえば他の塗料に比べて少し劣るのが現状です。一昔前までは主流でしたが、シリコン塗料などの普及によって現在ではあまり使われなくなっています。
ただメンテナンスがしやすいという特長もあるので、頻繁に塗替えをして住まいのイメージを変えたいという方にはおすすめできます。
【おすすめのウレタン塗料】
- 水性ファインウレタンU100 (日本ペイント)
モルタルやリシンなどの外壁だけでなく、鉄部にも塗装可能であるため、塗る場所を選びません。非常にバランスの取れた塗料だといえます。
2-2.コストパフォーマンスを重視するなら「シリコン塗料」
【主なシリコン塗料】
- ファインシリコンフレッシュ (日本ペイント)
- クリーンマイルドシリコン (エスケー化研)
シリコン塗料についてはこちらの記事でも詳しく解説されています。ぜひご参考にしてください。
2-3.耐久性を重視するなら「フッ素塗料」
シリコン塗料に比べると耐久性が高いフッ素塗料は、塗装をとにかく長持ちさせたい方や長い目で見た場合のコストを抑えたい方におすすめです。紫外線や雨風などの厳しい自然環境に常にさらされている屋根などは、耐久性に優れるフッ素塗料を選ぶといいでしょう。
【主なフッ素塗料】
- ファイン4Fセラミック (日本ペイント)
耐久性の高さはもちろん、カビや藻に対する耐性ももつフッ素塗料です。
- サンフロンUV (ロックペイント)
紫外線や酸性雨など、あらゆる自然環境に対して強さを発揮することができる塗料です。フッ素塗料については、こちらの記事でも詳しく解説されています。ぜひご参考にしてください。
2-4.とにかくグレードが高いものを求めるなら「無機塗料」
もっとも価格が高く、同時に耐久性も非常に高いのが無機塗料です。20年を超える耐久性で住まいを長く守ることができ、ガラスのように硬い性質や不燃性などの特長もあります。また、透明なクリアー系の塗料もあるため、サイディングの模様を塗装で消してしまいたくない方にはおすすめです。
【主な無機塗料】
- アレスシルクウォール (関西ペイント)
画像出典:http://www.paint-eshop.com/gaiheki/ales_silkwall.php
光沢を抑えたシックな印象の外壁にしたい方にオススメの無機塗料です。独自の技術により、塗料の性能をほとんど落とさずに艶を消すことに成功しています。
20年以上の期待耐用年数を誇る無機塗料です。クリアー系の「無機ハイブリッドクリヤー」もあるため、外壁のデザインはそのままに住まいを保護することができます。
無機塗料については、こちらの記事でも詳しく解説されています。ぜひご参考にしてください。
3.どんな塗料を選べばいいの?【機能編】
塗料のグレードに目安を付けた後に決める必要があるのは、「どんな機能がある塗料を選べばいいか」です。第2章と同じように、判断基準がわかるチャートマップとそれぞれの機能別の詳しい解説を用意しています。まずは下の図をご覧いただき、どんな機能が欲しいか決めてください。
本章でも、各項目ごとに詳しい解説をご紹介しています。ぜひご参考にしてください。
3-1.汚れにくい外壁にするなら「低汚染塗料」
せっかく塗装しても、大通りや水辺に面しているなどの立地条件ではすぐにまた外壁が汚れてしまうこともあります。キレイな外観をいつまでも保ち続けたいなら、低汚染性塗料を選びましょう。雨が降るたびに汚れを洗い流す「セルフクリーニング機能」によって、排ガスなどによる油脂性の汚れも寄せ付けません。
【主な低汚染塗料】
一般的な低汚染塗料と比べても圧倒的な超低汚染性と、遮熱機能を併せ持つ塗料です。表面に付いた汚れに熱が蓄積することを防ぐ事ができるため、遮熱機能が長持ちするという効果もあります。
▼超低汚染リファインシリーズについて詳しく知りたい方はこちら:汚れにくい塗料をお探しの方へおすすめ 超低汚染リファインシリーズ
- 水性クリーンタイトSi (エスケー化研)
画像出典:https://store.shopping.yahoo.co.jp/penki-ippai/109001057-00.html
低汚染性に加え、紫外線による劣化を抑制する効果をもつ塗料です。耐久性が高いため、長期に渡って機能を持続することができます。低汚染塗料については、こちらの記事でも詳しく解説されています。ぜひご参考にしてください。
3-2.おしゃれな外観にしたいなら「高意匠塗料」
他とは違うおしゃれな住まいに変身させたい! そんなあなたには、独特な質感をもつ高意匠塗料がおすすめです。通常の塗り替えとは全く違う、味のある外観を実現することができます。
【主な高意匠塗料】
- インディアートセラ (日本ペイント)
画像出典:https://item.rakuten.co.jp/paintshop-himawari/np-indyart-tansai
コンクリートやモルタルに塗装できる砂壁調の高意匠塗料で、コテなどを使ってリズミカルな表情を作り出すことができます。艶のない落ち着いたデザインであるため、和風・洋風のどちらにもマッチします。
サイディングに塗装できる高意匠塗料です。天然石のような風合いを醸し出すことができるため、ヨーロッパ風の住まいに憧れる方におすすめしたい塗料です。部分的に採用してアクセントを出すなど、表現の幅が広いのが特徴です。
▼グラナートSPについて詳しく知りたい方はこちら:多彩模様塗料 グラナートSP
3-3.カビ・藻の発生を防ぐなら「防カビ塗料」
外壁にびっしりと生えたカビや藻にお困りの方は、カビや藻の発生を抑える機能をもつ塗料を選ぶことをおすすめします。近年は一般的な塗料にも防カビ機能が入っている場合が多いですが、カビの種類によってはカバーしきれないことも。カビが生えやすい立地にある方は、専用の防カビ塗料を検討してもいいかもしれません。
【主な防カビ塗料】
- バイオタイト#10 (エスケー化研)
画像出典:https://item.rakuten.co.jp/mukouyama/10105667/
内装にも使用できるほどの安全性がある塗料です。外壁に直接塗布することでカビや藻などの発生を防ぎます。期待耐用年数はおよそ5~7年ほど。
500種類もの細菌に効果を発揮する強力な防カビ性能を持っていながら、食塩やカフェインよりも人体に無害であることが実証された安全性の高い塗料です。通常の塗料に添加するタイプであるため、オプションとして様々な塗料と組み合わせることが可能です。
防カビ塗料については、こちらの記事でも詳しく解説されています。ぜひご参考にしてください。
▼アステックペイントのメーカーサイトでアステックプラスシリーズについて詳しく知りたい方はこちら:防カビ塗料特集
3-4.雨水から住まいを守るなら「防水塗料」
住まいの天敵は雨水。ひび割れた外壁を放置したまま雨水にさらされ続けると、最悪の場合雨漏りや建物内部の腐食を引き起こす可能性があります。そんな雨水から住まいを守ることを重視するなら、「防水塗料」を選ぶといいでしょう。塗膜がひび割れに追従してゴムのように伸びることで、雨水が建物内部に浸入することを防ぐことができます。
【主な防水塗料】
- DANシリコンセラ (日本ペイント)
画像出典:https://item.rakuten.co.jp/suzukipaint/100000307/
400%もの伸縮率をもつ防水塗料で、10~12年の耐用年数があります。防水性のほかにも、カビや汚れに強いなどの特徴があります。
伸縮率はなんと600%。通常の防水塗料は伸縮機能が3~5年程度で低下してしまうところ、この塗料はピュアアクリルと呼ばれる特殊な樹脂を使用しているため長い間防水性を保ちます。遮熱機能や15年以上もの耐用年数など、住まいを守り続けるための機能を多く持っています。
防水塗料については、こちらの記事でも詳しく解説されています。ぜひご参考にしてください。
▼アステックペイントのメーカーサイトでEC-5000PCMについて詳しく知りたい方はこちら:雨漏り対策をしたい方へおすすめ EC-5000シリーズ
3-5.価格を抑えて耐久性をアップ!「ラジカル塗料」
塗料の劣化要因となる「ラジカル」を制御する機能をもつラジカル塗料は、近年急速に普及してきています。シリコン塗料とほとんど変わらない価格でありながら耐用年数が5年ほど長いというコストパフォーマンスの高さは非常に魅力的ですので、ぜひ検討することをおすすめします。
主なラジカル塗料は以下の通りです。
- 超低汚染プラチナリファインMF-IR (アステックペイント)
外壁塗装ジャーナルを運営するプロタイムズが、塗料メーカーと共同開発したオリジナル塗料です。ラジカル制御機能によって21年~26年もの耐用年数を実現した上、セルフクリーニング機能による超低汚染性をもつのが特徴です。
- パーフェクトトップ (日本ペイント)
画像出典:https://item.rakuten.co.jp/paintshop-himawari/np-perfecttop-tansai/
国内最大手の塗料メーカーの主力商品です。独自のラジカル制御技術で紫外線による経年劣化を抑制し、非常に優れた高耐候性を発揮します。
ラジカル塗料については、こちらの記事でも詳しく解説されています。ぜひご参考にしてください。
4.【番外編】塗料の性能を最大限に発揮するには、業者選びも重要
ここまで塗料の判断基準や種類別の情報を解説してきましたが、実際に塗料を選ぶ際には注意すべき点がいくつかあります。なぜなら業者によっておすすめする塗料が違ったり、同じ塗料であっても金額が全く違うなどの場合があるからです。本章では塗料選びについての注意点とその対策をお伝えしますので、ぜひご参考にしてください。
4-1.塗料の性能は、職人の腕に左右されてしまう
性能がいい塗料を選んだから、絶対に塗装は成功する! ……とは言い切れないのが外壁塗装の難しいところです。なぜなら塗料の性能を十分に発揮するためには、塗料ごとに決められた適切な塗布量(1㎡あたりに塗装する量)や乾燥時間などの基準をしっかりと守らなければならないから。実際に塗装する職人の腕次第では、せっかく良い塗料を使っても意味がないこともあるのです。例えば、こちらの画像をご覧ください。
こちらは全く同じ塗料をアクリル板に適切な量を塗装した場合と、そうでない場合とを比較したものです。住まいに塗装すると外観からではなかなか気づけないことですが、こうして光にかざしてみると一目瞭然。一流の職人が塗装した場合はしっかりと均一に覆うことができていますが、塗布量が足りないとこのようにスカスカな仕上がりになってしまいます。
極端な例のように思われるかもしれませんが、別にこれは悪徳業者による不良施工でのみ起こるわけではありません。実は塗装職人になるために必要な資格というものは現時点では存在しないため、十分な知識がなく塗布量を守る意識が高くない職人もまだまだ一定数存在するのです。
塗料を選ぶ際は、「実際にどんな職人が塗装するのか」「本当に信頼できる職人なのか」まで説明してくれる業者を選ぶことをおすすめします。
4-2.見積もりは必ず復数の業者で取ろう
いい塗料を選んでも、職人の腕が伴わなかったり、不当に高い金額を請求されてしまうと意味がありません。そんな事態を防ぐためには、必ず複数の業者で見積もりを取ることをおすすめします。複数の業者の提案や見積もりを比較・検討し、より信頼できる業者を選びましょう。
業者から出された見積もりが適切かどうかを判断するポイントは、こちらの記事で詳しく解説されています。ぜひご参考にしてください。
まとめ
本記事では、外壁塗装の塗料についての基礎知識と判断基準、それぞれの塗料の詳細情報までを詳しく解説してきました。塗料を選ぶ際のポイントを以下にまとめましたので、おさらいをしてみましょう。
- まずは予算に応じて塗料のグレードを選ぶ
- どんな機能の塗料にしたいかを決める
- 塗料の性能がどのくらい発揮されるかは、業者選びによって変わる
外壁塗装の塗料選びの際には、これらのポイントを踏まえた上で判断することをおすすめします。あなたの住まいに合った塗料を選び、満足のいく外壁塗装を進めましょう!