外壁を塗り替えるにあたり、「そもそも、どんな種類があるのか把握しておきたい」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「外壁塗装の種類」について調べるならば、まず「塗料の種類」に注目するのがオススメです。なぜならば、選ぶ塗料の種類によって、外壁塗装において重要なポイントとなる耐久性をはじめ、性能や価格が決まるからです。外壁塗装の種類=塗料の種類といっても過言ではないでしょう。
そこで、この記事では、まず「塗料の種類」について、わかりやすくご紹介してまいります。さらに、外壁塗装の種類を探るうえで知っておきたい塗料の「色」や「デザイン」に関する知識もあわせてお伝えいたします。
『外壁塗装について、何の知識もない』という方にもわかりやすく噛み砕いた内容となっておりますので、外壁塗装の種類について調べている方は、ぜひご一読ください。
1.これで完璧!外壁塗料の種類
1ー1.〔最新2017年版〕外壁塗料の種類
外壁塗料は「樹脂*」と呼ばれる主成分によって、大きく6種類に分けられます。種類別に相場価格と耐久年数をまとめた表が下記になります。
*樹脂とは…塗料の乾燥後(水や溶剤が揮発した後)、塗膜を形成するもの。
■塗料の種類別!相場価格&耐久年数
※各塗料の特徴については、下記の表にてご確認ください。
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■塗料の種類別!塗料の特徴とメリット&デメリット
樹脂別塗料 | 特徴 | メリット&デメリット |
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アクリル | 耐久性が他塗料と比べて低いため、塗り替えで外壁塗装に使用されることは稀。 〔製品ピックアップ〕 | 〔メリット 〕 ・塗り替え費用は安い ・光沢、艶がある |
〔デメリット〕 ・耐久性が低い ・塗り替え頻度が多くなるため、トータルコストで考えると、割高 | ||
ウレタン | シリコン塗料が外壁塗装業界において一般的になる前に広く普及していた塗料。独特の光沢が特徴。 〔製品ピックアップ〕 | 〔メリット 〕 ・アクリルよりも長持ち ・独特の光沢がある |
〔デメリット〕 ・耐久性が十分ではない ・塗り替え頻度が多くなるため、トータルコストで考えると、まだ割高 | ||
シリコン | 建築塗料市場において80%のシェアを占める人気塗料。価格と耐久性のバランスが良い。 〔製品ピックアップ〕 | 〔メリット 〕 ・価格と耐久性のバランスが良い(費用対効果が良い) ・製品数が多いため、より多くの選択肢がある |
〔デメリット〕 ・製品ラインナップが豊富なため、機能や価格の異なる製品も多数あり、選り抜くのが難しいという側面もある | ||
フッ素 | 耐久性・防汚性・耐熱/耐寒性に優れた高品質塗料。頻繁な塗り替えが難しい商業施設や大型ビルに施工されるケースが多い。 〔製品ピックアップ〕 | 〔メリット 〕 ・耐久性が高い ・汚れや水を弾く撥水性に優れている |
〔デメリット〕 ・コストがかかる(塗り替え費用が高い) ・次回の塗り替え時の重ね塗りの付着に注意が必要(専用の下塗材を使用する必要が生じるなど) | ||
ピュアアクリル | 耐久性・防水性・遮熱性を併せ持つ、高性能塗料。伸縮率600%を誇る弾性塗料。 〔製品ピックアップ〕 | 〔メリット 〕 ・耐久性が高い ・伸縮性が高いため、建物自体にひびが入っても、建物の最大の劣化要因である水の浸入が防げる |
〔デメリット〕 ・乾燥に時間がかかる | ||
無機 | 主成分が無機物のため、紫外線に強く、耐久性が高い。 〔製品ピックアップ〕 | 〔メリット 〕 ・耐久性が高い ・カビや藻が発生しにくい |
〔デメリット〕 ・塗膜が比較的硬く、建物の動きによって、ひび割れが発生しやすい ・次回の塗り替え時の重ね塗りの付着に注意が必要(専用の下塗材を使用する必要が生じるなど) |
▼塗料の種類について詳しくは、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
[シリコン]「人気No.1!シリコン塗料の特徴やメリットを完全解説」
[アクリル]「オススメ製品や比較あり!アクリル塗料の基礎知識 」
[フッ素]「フッ素塗料で塗装する前に必ず知っておくべき4つのポイント」
[無機]「無機塗料は耐候性が高い?無機塗料のメリットとデメリット」
1-2.塗料には大きく分けて溶剤系と水性の2タイプある
さらに踏み込んで外壁塗料の種類を探りたいという方は、ぜひ「溶剤系塗料」と「水性塗料」も把握しておきましょう。
塗料は希釈剤によっても、「溶剤系塗料」と「水性塗料」の2タイプに分けられます。樹脂を溶かして液状にするために入っている液体が“水”の場合は「水性塗料」、“溶剤”の場合は「溶剤系塗料」となります。
※塗料の成分について詳しくは、下記「〔塗料の基本〕塗料選びに役立つ!塗料の成分知識」を参照してください。
■水性塗料と油性塗料(溶剤系塗料)を徹底比較!
水性塗料 | 溶剤系塗料 | |
---|---|---|
溶媒 | 水 | 溶剤 |
価格 | 低単価 | 高単価 |
耐久性 | 製品によって異なる | 高い |
ニオイ | 少ない | 強い |
塗料の密着性 | 溶剤系塗料と比べて弱い | 強い |
乾燥 | 雨などの環境の影響を受けやすい 特に降雨時や、気温が低くなる冬季は乾燥が遅くなるため注意が必要 | 一定の時間で乾燥する(環境の影響を受けにくい) |
取り扱い | 特記事項なし | 危険物のため(引火性あり)、取り扱い・保管・廃棄等にも注意が必要 |
VOC排出量* | 少ない ※「2-1.DIY塗装には水性塗料がオススメ」も併せてご確認ください。 | 塗料の約半分がVOC |
*VOC(揮発性有機化合物)とは、Volatile Organic Compounds)の略称。シックハウス症候群などの健康被害や、大気汚染などの環境被害を引き起こす原因物質の一つとされている。
水性塗料と溶剤系塗料、どちらも一長一短あるため、どちらを良いかを一概に言うことはできません。メリット&デメリットを比較しつつ、業者に相談しながら選ぶのが良いでしょう。
ただし、塗料のニオイに心配・不安のある方は「水性塗料」がオススメです。特に外壁に使用する塗料のニオイは窓等から室内に入り込みやすいため、安全でニオイの少ない水性塗料を選んでおくと安心です。
1-3.進化を続ける!塗料の付加価値性能
「塗料の性能にもこだわりたい」という方も、いらっしゃるでしょう。近年、どんどん技術も進化し、様々な性能をもった塗料が登場しています。
まずは、そもそも、どんな性能があるかを見てみましょう。
■塗料の付加価値性能
性能 | 詳細 |
---|---|
遮熱性 | 温度上昇の原因となる太陽光の近赤外線を反射し、温度上昇を抑える塗料の性能。遮熱性の塗料には、室内の温度上昇を抑えるだけでなく、熱による建物の劣化を抑制する効果も期待できる。 ▼遮熱塗料について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。 |
防水性 | 総じて、雨水が建物内部へ浸入することを防ぐ性能を指す。具体的には、雨水の浸透を防ぐ働き、塗膜が伸びることで下地のひび割れから建物内部へ水が浸入することを防ぐ働きなどを『防水性』と総称。 ▼防水塗料について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。 |
防汚性 | 汚れの付着を防ぐ働きのこと。防汚性能の一つとして、雨水で汚れを洗い流すセルフクリーニング性能を持ちあわせた塗料や、汚染物質を分解する光触媒塗料も。 |
防カビ性 | カビや細菌、藻類の発生を抑える性能。 |
防錆性 | 金属の錆の発生を抑える性能。 |
※塗料の性能は、1製品に1つとは限りません。たとえば「遮熱性・防水性に優れた塗料」など、複数の性能を備えた塗料も沢山あります。
様々ある塗料の性能のなか、外壁塗料を選ぶうえで注視したいのは「防水性」です。
なぜ防水性かというと、住まいの最大の劣化要因は、ズバリ「雨水」だからです。雨水が住まいに入り込むことによって腐食が起こり、住まいが蝕まれ、さらにカビの発生などで健康被害に至るため、「防水性」は住まいにとって非常に重要な性能なのです。
上記の1-1、1-2、1-3を踏まえて一つひとつ選んでいくと、たとえば「シリコン・水性・遮熱性」「フッ素・溶剤系(油性)・遮熱性&防水性」のように、塗料の種類を選り抜いていくことができます。
とはいえ、「自身で最適な塗料を選り抜けそうもないな」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。そんな方にオススメなのが、塗装業者による『住まいの診断』です。
住まいの診断を受けると、業者が外壁の種類や劣化の症状に合わせて、最適な塗料の種類を提案してくれます。塗り替えにかかる費用総額もわかるので、より具体的に塗装メンテナンスの計画が立てられるはずです。
診断だけなら無料で対応してくれる業者も少なくありません。まずは問い合わせて、確認してみましょう。
〔塗料の基本〕塗料選びに役立つ!塗料の成分知識
塗料を選ぶうえで、知識として備えておくと役立つ『塗料の成分知識』。
「そもそも塗料とは何か」がわかるようになると、塗料の種類についての理解もグッと深まるはずです。
塗料は、「顔料」と「樹脂」、「添加剤」、そして「水もしくは溶剤」の4つの成分で構成されています。
■塗料の成分内訳
顔料 | 塗料に色をつけたり、下地のスケをなくす役割がある。 |
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樹脂 | 塗料の耐久性(耐候性)は、ほぼ、この樹脂によって決まる。アクリルやシリコン、ウレタンなど、さまざまな特性をもった樹脂がある。 |
添加剤 | 加えることで、塗料や塗膜の性能をアップさせる。たとえば、塗料の腐食を防ぐ防腐剤や、樹脂の耐候性を上げる紫外線吸収剤など、さまざまな性能をもった添加剤がある。 |
水もしくは溶剤 | 樹脂を分散または溶かして、塗装できるよう液状にする役割を担う。塗装後は、蒸発・揮発する。 |
2.塗料の「色」と「デザイン」の知識を押さえて、納得の仕上りに!
2-1.塗料の色は、“好み”などの感覚で選ぶと失敗しがち
外壁の塗料の色は「好きな色を選びたい」という方も多いと思いますが、好みといった感覚的な判断基準をもとに選ぶと、失敗するリスクがあるため注意が必要です。
よくある失敗例は、「イメージしていた印象と違う仕上りになってしまい、全然満足できていない」というもの。色の印象は、塗料の色見本と、実際に住まいに塗装した状態とで、違って見えることも少なくありません。
では、どうすればいいのかというと、「塗料の色見本を見るときに注意すべきポイント」や「何を手がかりに色を選べばいいか」など、外壁の塗料を選ぶ際の注意点を予め把握しておくことが有効です。
■外壁塗料|色選びの注意点
☑色は、A4以上の色見本でチェックする
「色」は大きさによって見え方が変わります。大きい面で見れば見るほど、明るい色はより明るく、鮮やかな色はより鮮やかに感じます。そのため、小さい色見本を見て色を決めてしまうと、実際に住まいに塗装したときに、違った印象に感じやすくなるのです。
色見本は最低A4以上のものを用意してもらうのがオススメです。さらに、可能であれば、実際に住まいに試し塗りしてもらうと、より仕上りのイメージを正しく掴むことができます。
☑色は、屋外でもチェックする
室内で色見本を見ると、屋外で見るときとは違う印象に見えることがあります。たとえば蛍光灯は青の波長を含んでいるため、特に違う印象を受けるかもしれません。
そこで色見本は必ず屋外でもチェックするようにしましょう。また、時間帯によってもイメージが異なるため、できれば朝・昼・晩など違う時間帯にチェックするのもオススメです。屋外の日陰でチェックするのも良いでしょう。
〔補足情報②〕「お気に入りのサイディング柄を残したい」という方は、透明塗料がオススメ!
塗装はしたいと思っているものの、サイディング外壁のデザイン性はそのまま残したいという場合、「クリヤー塗料」と呼ばれる透明の塗料を選ぶと良いでしょう。色が無色透明のため、サイディングの色・デザイン性はそのままに、色あせた印象をキレイに鮮明に蘇らせることができます。
▼色選びについて詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
2-2.デザイン性のある塗料を選べば、外壁をオシャレに演出できる
塗料のなかには、塗料自体に意匠性のある『多彩模様塗料』と呼ばれる製品もあります。この多彩模様塗料は、「色」に加えて御影石の「素材感」が演出できます。
[例]多彩模様塗料『グラナートSP(アステックペイント)』
[参考情報]塗装工事の仕上げ工法は、「手塗り」と「吹き付け」の2パターンある
塗装の仕上げでは「手塗り」と「吹き付け」の2つの工法があります。
どちらの工法にも一長一短あり、どちらを選べば間違いないといったことは断言できません。通常は、塗料の種類や住まいの状況、塗装規模、さらに予算、希望によって業者と相談して決めることになります。
■吹き付け工法と手塗り工法
吹き付け工法 | 手塗り工法 | |
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使用する道具 | エアレススプレーガン | ローラー(もしくは刷毛) |
塗布時の飛散 | 多い 養生の手間が増える。 | ほとんどない(少ない)。 接近している住宅街の家や、小面積や入り組んでいる箇所に向いている。 |
施工に必要な時間 | 短い ただし、後片付け(清掃)に時間がかかる | 吹き付けに比べて長い |
仕上がり | 滑らか | わずかにローラー模様 |
外壁の凹凸への対応 | 適している場合が多い(凹部の深さにもよる。凹凸部の形状によっては、刷毛との併用が望ましい。) | 凹凸の深さによって、ローラーの毛足の長さを選ぶ |
まとめ
外壁の塗り替えを検討するうえで、塗料の種類を把握しておくことは非常に有効です。納得のいく外壁塗装ができるかどうかの大きな鍵は、塗料選びが握っているといっても過言ではないでしょう。
ぜひ今回ご紹介した内容を踏まえて、塗料を選んでみてください。