外壁の塗替えをしようといくつかの業者に見積りを依頼したところ、「吹き付け」という施工方法を提案された、または、過去に吹き付けで外壁塗装をしたけど今回は「手塗り」を提案された、などのご経験をされた方はいらっしゃいませんか。
どちらの工法が良いのか、また何を基準に選べば良いか、専門家でないと分からない事が多いのが塗装の世界です。
この記事では、「吹き付け工法」の説明とメリット・デメリット、そして「手塗り工法」との違いや、選択しやすい3つの基準を分かりやすくお伝えします。塗替え時の工法選択にぜひお役立てください。
1. 外壁塗装の吹き付け工法とは
外壁塗装工事の最終工程として、仕上げの塗装を必ず行ないます。この仕上げ方法の1つが「吹き付け」です。ちなみにもう1つは「手塗り」で、「ローラー塗装」と表現する場合もあります。
外壁に施す模様・塗装に必要な塗料の量・その他現場環境などに合わせて、業者が2つ工法のうちどちらかを選択します。
1-1. 専用の道具「スプレーガン」
吹き付け作業は、塗料を霧状にして外壁に吹き付ける方法で「スプレーガン」と呼ばれる道具を用います。専用の容器に入れた塗料を外壁に噴出させることで、外壁に塗布していきます。
吹き付ける材料(塗料)によってそれぞれ専用のスプレーガンが存在し、また噴出方法によって、「エアスプレーガン」「エアレススプレーガン」にも種別できます。
「エアスプレー」は圧縮した空気を使って塗料を微粒子化して噴射させます。塗料の供給方法でさらに3種類に分かれ、それぞれ重力式エアスプレーガン・吸上式エアスプレーガン・圧送式エアスプレーガンがあります。また、「エアレススプレーガン」は塗料自体に圧力をかけて噴射させるものです。近年では、「エアレススプレーガン」が主流とされています。
1-2. 吹き付けのタイミングと回数に違いが出る施工手順
吹き付け工法を取る施工は、大きく2つに大別されます。
1つ目はリシン・スタッコなどの仕上げ材を使う場合で、手順は「シーラー※(下塗り塗料)を吹き付け→仕上げの吹き付け」となります。
仕上げの吹き付けの際に、リシンであれば細かな石を、スタッコは石灰に大理石・砂等を混ぜ合わせた物を、それぞれ塗料に混ぜて吹き付けをします。表面がざらざらした仕上がりになるのが特徴です。
2つ目はタイル吹き仕上げと呼ばれる場合で、「シーラー※(下塗り塗料)を吹き付け→玉吹き→仕上げ塗装(ローラー塗りを併用する場合もある)」の手順で進めます。玉吹きとは、吹きつけた後の凹凸で立体感が出す作業の事で、見た目がキレイになり耐久性向上が期待できます。
※ シーラー…塗り重ねる仕上げ塗料(中塗り塗料・上塗り塗料)との密着性を高め、接着剤のような働きをする下塗り塗料。
2. 外壁塗装における吹き付け工法のメリット・デメリット
吹き付け工法の概要を押さえたところで、次にメリット・デメリットを確認していきましょう。
2-1. 吹き付け工法のメリット
刷毛・ローラーを使わずに外壁塗装を仕上げる、この吹き付け工法には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
1つ目のメリットは、複雑な模様・重厚感ある雰囲気・凹凸のある立体感など多用な仕上がりを出せることです。これは吹き付け工法の最大のメリットで、このような仕上がりを出したい方にはおすすめの工法です。
そして、塗膜の品質を均一にでき、より多くの膜厚をつけやすい工法でもあるので、仕上がりがきれいになることもメリットと言えるでしょう(※ただし、職人に高い技術力が求められるので、腕の良い職人が施工した場合は、と認識しておいたほうが良いでしょう)。
2つ目は、補修跡が分かりづらく、また仕上がりの特徴である「重厚感」が長く保てる点です。特にタイル吹き押さえ仕上げにおいて、このメリットが発揮されます。
最後の3つ目は、広範囲の塗装を短時間で効率的に行なえることです。つまり施工が早く進みます。これは外壁塗装を業者に依頼する皆さまにとっては、費用(工事費)という面でメリットを得やすいですね。
2-2. 吹き付け工法のデメリット
ではデメリットはどうでしょうか。
最大のデメリットは、塗料の無駄がたいへん多いということです。特に「エアスプレーガン」での塗料の無駄が顕著な傾向にあります。スプレーガンから噴射される塗料は飛び散りが多く、ロスが発生します。ですので、実際の塗装ではそのロスを見込んで、膜厚を確保できるように塗布しているのです。
2つ目のデメリットは、養生に手間と時間を要することです。噴射時における塗料の飛び散り対策として養生をするのですが、手塗り工法の養生に比べてよりしっかりと、周辺の植木や建具などにも養生を施す必要があります。
3つ目は、塗装職人に高い技術レベルが求められるという点です。上記2つのデメリットがあるので、吹き付け工法を避ける業者が近年では増え、よって未経験の職人も多いのが現状です。
3. 吹き付け工法と手塗り工法の違い
では次に手塗り工法との違いを項目別に比較して、それぞれの特徴を整理してみましょう。
吹き付け工法 | 手塗り工法 | |
---|---|---|
使用する道具 | スプレーガン | ローラー(もしくは刷毛) |
塗布時の飛散 | 多い(特にエアスプレーガン使用時)。 養生の手間が増える。 | ほとんどない(少ない)。 接近している住宅街の家や、細かな箇所に向いている。 |
施工に必要な時間 | 短い | 吹き付けに比べて長い |
仕上がり | 重厚感ある雰囲気・凹凸のある立体感など多用な仕上がり | 表面的・画一的な仕上がりが多い(道具・外壁材によってはこの限りではない) |
厚塗り | 可能(塗料によって異なる) | |
外壁の凹凸への対応 | 適している場合が多い(凹部の深さにもよる。凹凸部の形状によっては、刷毛との併用が望ましい。) | 毛足の長いローラーで塗る場合、凹凸部に塗料が溜まってしまうため、きれいに仕上げるためには刷毛との併用が望ましい。 |
4. 吹き付けか?手塗りか?3つの選択基準と順守事項
吹き付けを選ぶベきか、手塗りを選ぶベきか。選びやすい基準を3つご紹介します。
そして最後に、外壁塗装において必ず守っておきたい事を説明します。
4-1. 外壁の表面の仕上がりで選ぶ
外壁の仕上がりを、凹凸のある立体感などで重厚感ある雰囲気なものにしたいと考えるなら、吹き付け工法を選びましょう。この工法でしか出せない仕上がりですし、作業も短い時間で済みます。
4-2. 周りへの影響やリスクを考慮して選ぶ
近隣への迷惑や、汚したくないもの(建具や花壇など)がある場合は、手塗り工法をお勧めします。塗料の飛び散りのリスクを考えると、吹き付け工法は避けるのが無難です。経験豊富なベテラン職人の中には、無駄な飛散を最小限に抑えられる職人ももちろん存在しますが、いつでもそのような職人が工事してくれるとも限りません。リスクを考えて手塗り工法を選択しましょう。
4-3. 工事費用を基準に選ぶ
平米数単価(材料&工賃を合算)を基準としますと、吹き付け工法が、手塗り工法よりも相対的に費用は安いです。特にリシンの場合が特に安く、1平米あたり1,000円以下で、スタッコに関しては、高くても2,000円台後半です。対して、手塗り工法は材料価格によってかなり金額幅が大きくなりますが、平均的に3,000円台後半から5,000円台が目安となります。
4-4. どちらを選ぶにしても、絶対順守の「基準塗布量」
吹き付け工法、手塗り工法どちらかを選ぶとして、必ず守るべきことがあります。それは「基準塗布量」です。これは、塗料メーカーが指定しているもので、塗料が持っているそれぞれの性能を正しく発揮させることを目的に、実際に工事をする業者や職人との「約束事」です。この約束事を守らず、少ない塗布量で工事を済ませてしまうと、良い塗装工事を期待することはできません。この「基準塗布量」は必ず守ってもらうようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。吹き付け工法を選ぶには、さまざまな基準やポイントがあります。特に「仕上がり」は必須の判断基準です。
希望に沿う塗替えを実現し、また失敗をしないために、この記事に記載されている「各基準やポイント」を参考にしてみてください。