外壁塗装 平米単価

念願のマイホームを建ててもう10年。とうとう我が家も塗り替えを考え始めなければならない時期を迎え、夫婦二人で自分達なりに見積り書を3社から取ってみたものの、金額は各社バラバラ、使う材料も三者三様、見積り書には聞いたこともない専門用語がズラリ。こんな状態で正しい施工会社を判別することが出来るのは豊富な塗装知識を持った専門家くらいでしょうか。

それもそのはず、見積り書に記載されている内容は各社異なり、施工内容や使用する塗料、金額の根拠でもある建物の塗装する面積さえ数十平米違うこともよくあります。言わば同じ商品の相見積りを取ったにも関わらず、全く違う3つの商品を提示されているのと同じ状態です。

また、見積り書の中には様々な項目が記載されていますが、そこには大きな落とし穴が隠されています。

この記事では現在、塗装を考えていらっしゃる方が適正な価格で工事を行うことが出来るよう、見積り書の中の”平米単価”に注目して価格の正しい判断基準をご説明します。

1.外壁塗装の適正価格を知るには平米単価をチェック!

塗装の見積りに関しては内容を精査するのは非常に困難だと言われています。大きな理由として、その専門性の高さと施工会社ごとに施工の内容が大きく異なっている点が挙げられます。ご自身が正しい判断をするために、まずは比較のしやすい単価から適正な価格を考えましょう。

その際にチェックすべきなのが平米単価です。外壁塗装の工事金額は『塗装をする面積』×『平米単価』が基本になっています。また、雨樋のように、長さで計算のものは『塗装をする長さ(m)』×『1m当たりの単価』、雨戸などの個数で計算するものは『塗装をする数(個)』×『1個当たりの単価』となります。

施工する会社によってこの平米単価や1mあたりの単価が異なり、それに伴って外壁塗装全体の金額も大きな差となるのです。

1-1.塗装工事の相場価格

まずは一般的な大きさの戸建住宅で外壁塗装をする際の相場価格を見てみましょう。

■外壁/窯業系サイディング 屋根/スレート瓦
一般的な戸建住宅で塗装工事を行った場合、60万円~の費用がかかります。

ただし、住宅の大きさをはじめ、劣化の進行具合や使用する塗料の量等でも価格は大きく変動します。

【見積り書の例】

工事項目数量単価金額
仮設足場 208㎡ 700円145,600円
飛散防止ネット 208㎡ 150円 31,200円
高圧洗浄 240㎡ 150円 36,000円
養生 160㎡ 300円 48,000円
外壁工事
下塗り 160㎡ 900円 144,000円
上塗り 160㎡ 2,600円 416,000円
屋根工事
下塗り80㎡ 900円72,000円
上塗り80㎡2,600円208,000円
 縁切り80㎡400円32,000円
付帯工事
コーキング打ち替え 90m 900円 81,000円
コーキング増し打ち 80m 700円 56,000円
廃材ゴミ処理 1式 20,000円 20,000円
小計 1,289,800円
消費税(8%) 103,184円
合計 1,392,984円

一般的な戸建住宅における塗装工事の場合、外壁屋根をあわせるとこのような目安となります。ただし、この他に塗装を行う箇所があれば、別途費用がかかります。また、使用する塗料によって塗装の耐久年数は異なりますので、耐久年数の変化に伴い全体の金額も変化します。

まずは施工内容に過不足がないかの判断基準として、見積り書に記載されている平米単価が基準からかけ離れていないかを確認しましょう。

高すぎる場合大幅に金額を載せられていたり、逆に安すぎる場合必要な補修が行われない可能性があります。

2023年版|外壁塗装の費用相場は?塗料代が値上げになる?見積りをプロが解説!

1-2.建物の大きさが正しいかどうか確認する

平米単価を確認した後に注意すべきなのは建物の大きさです。建物の大きさによって使用する塗料の量や施工金額も大きく変わりますので、建物の大きさが正しいかどうかを確認することも重要になります。

施工に対する平米単価が正しくても、建物の大きさや数値が誤っていては信頼できる見積り書とは言えません。まずはご自身の住まいの塗装をする外壁と屋根の面積を把握することから始めましょう。建物の正しい積算方法に関してはこちら。

外壁塗装の正しい面積が適正価格の根拠となる理由

1-3.平米単価の基準はコレ!

まずは見積りを検討する際の『平米単価』の基準についてご紹介します。

※施工する会社や建物の素材・状態などによって前後はありますので、参考までにご確認下さい。

工事項目平均単価
★仮設足場 600~800円/㎡
★飛散防止ネット 100~200円/㎡
★高圧洗浄 100~300円/㎡
★養生 250~400円/㎡
コーキング(増し打ち・打ち替え) 500~1,500円/m
★下塗り塗料 600~1,100円/㎡
★上塗り塗料アクリル塗料 1,000円~2,000円/㎡
ウレタン塗料 1,500円~2,500円/㎡
シリコン塗料 2,000円~3,500円/㎡
 フッ素塗料 3,000円~5,000円/㎡
 光触媒塗料 3,500円~5,000円 /㎡
 付帯工事 軒天井 800~1,200円/㎡
 破風板  650~1200円/㎡
 雨樋 800~1,200円/m
 雨戸 2,000~5,000円/枚
 シャッターボックス 2,000~5,000円/個
縁切り※400~700円/㎡
 防水工事 ウレタン防水 2,500円~7,000円/㎡
FRP防水4,000~7,500円/㎡
トップコートのみ2,000~3,500円/㎡
 ★廃材ゴミ処理 1式 10,000~30,000円

※1 ★印の工事項目に関しては基本的に必ず必要な内容になります   ※2 縁切りとは主にスレート瓦の塗装をする際に必要な工程のこと

屋根・外壁塗装工事における平米単価をまとめた価格表はこのようになりますが、施工を行う会社によって補修の度合いや施工方法の選定が異なりますので平米単価も相対的に大きく左右されます。

この価格表を一つの目安として見て頂いた中で、あまりに平米単価が基準とかけ離れている場合は注意が必要でしょう。

1-4.使う材料や補修の方法で大きく異なる平米単価

前項では各項目ごとの平米単価の目安を記載しました。その中でも「どんな塗料を使用するのか」と「どのように補修するのか」によって金額は大きく変わっていきます。ただ、いざ相見積りをして複数社で比較をしても、各社の見積り仕様が異なってしまっては比較しようがありません。中でも使用する塗料の違いによっては1,000円/㎡の安価な塗料から、耐久性の高い4,000円/㎡前後する高級塗料まであるので、見積り書に記載されている塗料がどういったものなのかを事前に確認することが非常に大切です。

どんな材料を使用するのかの他に、各社仕様が大きく分かれるのが補修の方法です。塗装工事ににおいてはヒビ割れの補修方法や下地処理の方法によって金額は大きく変化します。表に記載されている「コーキング」の内容をみても500/mで出来る簡易的な補修から1,500円/mの大掛かりな補修まで幅が広く、住宅の構造によっては20万~30万円前後の差にもなります。

つまり塗料と補修方法だけを見ても、工事全体の金額は大きく変化するのです。

2.見積り書でチェックするのは工事項目と平米単価

施工内容や塗料に差があることが理由でで見積り金額にも差があるということはお伝えさせて頂きました。ここからは、実際にあった2社の見積りの内容を比較して、記載されている平米単価から各工事項目の内容にどのような違いがあるのかを読み取っていきましょう。

2-1工事仕様にによって、平米単価は変わる

まずは実際の見積り書を例に出して、複数社で見積りを取った際の内容の違いをご説明していきたいと思います。

A社
見積り書
仮設工事
仮設足場248㎡700円173,600
飛散防止ネット248㎡150円37,200
外壁工事
高圧洗浄160㎡200円32,000
下塗り160㎡800円128,000
上塗り160㎡2,000円320,000
屋根工事
高圧洗浄72㎡200円14,400円
下塗り72㎡800円57,600円
上塗り72㎡2,000円144,000円
縁切り一式50005,000円
付帯工事
軒天井14㎡850円11,900円
破風板38m800円30,400円
雨樋54m800円43,200円
コーキング補修一式50,00050,000円
FRP防水5㎡9,000円45,000円
諸経費一式65,000円65,000円
小計1,157,300円
消費税8% 92,584円
合計1,249,884円
注意点・ポイント
縁切りとコーキングの一式表記は本来必要な補修内容を満たしていない内容となっている可能性があるので注意が必要です。
また、使用する塗料に関しては比較的安価に設定されているので、希望する耐久性を満たしているかを詳しく聞く必要があるでしょう。【A社の塗料は耐久年数10年】
B社
見積り書
仮設工事
仮設足場248㎡650円161,200円
飛散防止ネット248㎡150円37,200円
外壁工事
高圧洗浄160㎡180円28,800円
下塗り160㎡700円112,000円
上塗り160㎡2,400円384,000円
屋根工事
高圧洗浄72㎡180円12,960円
下塗り72㎡700円50,400円
上塗り72㎡2,400円172,800円
縁切り72㎡450円32,400円
付帯工事
軒天井14㎡800円11,200円
破風板38m750円28,500円
雨樋54m850円45,900円
コーキング増し打ち102m650円66,300円
コーキング打ち替え96m800円76,800円
FRP防水5㎡ 60,00円30,000円
 諸経費 一式 40,000円40,000円
 小計1,290,460円
 消費税 8%103,317円
 合計1,393,777円
注意点・ポイント
A社に比べると価格が高い代わりに、コーキング補修や縁切り作業等の内容がしっかりしています。
平米単価も大きな問題はありませんが、こちらも使用する塗料の性能を確認する必要があります。【B社の塗料は耐久年数15年】

このように、見積り書をパッと見ただけだと価格の違いは確認ができますが、住まいの補修方法や施工の内容に関しては見分けにくい事がお分かり頂けたかと思います。施工内容は建物の状態によって大きくかわるので、住まいの状態によって使い分ける必要があります。それでは、もう少し詳しく施工内容について見ていきましょう。

2-2.工事内容によって変わる平米単価

実際に金額の高い工事と安い工事で違う点は、大きくみると施工方法の違いによるものが大きいです。上記の2社を比較しても、塗装を行う前の補修や下地処理、縁切り作業の内容によって、大きく金額が異なっています。今回は施工業者によって大きく工事内容が異なるコーキング補修に注目して見ていきます。

打ち替え作業

コーキングに補修は大きく分けると『打ち替え』と『増し打ち』の2種類が挙げられます。古くなったコーキング材をきちんと取り除いてから新しいコーキング材に取り替える『打ち替え』に対し、『増し打ち』は古くなったコーキング材を撤去せずに、上から新しいコーキング材でなぞるような方法です。

打ち替え工法の単価は900円/mが平均的なのに対して、増打ち工法の単価は600円/mと価格も大きく異なります。また、打ち替え工法と増打ち工法とでは塗膜の耐久性の面でも大きな差がありますので、工事内容には十分な注意が必要です。

コーキング補修の他にも『縁切り作業』や『ヒビ割れ補修』などでも施工業者によって大きな差が出るので建物に対して必要な補修方法と併せての確認が必要です。このような工事内容の違いが、施工業者によって金額差が出る要因の一つです。

2-3.使う塗料によって変わる平米単価

工事の仕様によって金額が大きく変わるもう一つの要因が使う塗料です。1章でもお伝えした通り、使用する塗料によって金額には大きな差が生じます。

塗料の種類平米単価
ウレタン塗料1,000円~2,000円/㎡
アクリル塗料1,500円~2,500円/㎡
シリコン塗料2,000円~3,500円/㎡
フッ素塗料3,000円~5,000円/㎡
光触媒塗料3,500円~5,000円/㎡
無機塗料4,000円~5,500円/㎡

※価格は業者や材料によって異なります。

現在、塗装業界の主流となってきているものがシリコン塗料で耐久年数は幅広く、8年~15年の耐久年数があります。低価格帯のものを見てみると耐久年数が6年~8年のウレタン塗料、高価格帯のものを見ると15年前後の耐久性が期待できるフッ素塗料、18年前後住宅を守ってくれる無機塗料などがあり大きく金額も変わります。ただし、塗料はお住まいの方が望む耐久年数と予算によって、大きく変わってきます。

選択する塗料の耐久年数は言い換えれば、次回塗装をするまでの年数にもなります。ご家族のこれからの居住年数やお子様がいらっしゃる家庭であれば受験の時期と被らないように、子どもの就職活動が終わった時期に合わせて、といった時期に合わせて塗料を選択することが出来ますので、塗料選びは今後のライフプランに合わせて検討されると良いです。

3.外壁塗装をよりお得にするポイントと注意点

3-1.初期費用とコストパフォーマンスを見比べる

塗装工事は工事が完了して終了ではなく、その後どれくらいの年数住宅を守ってくれるかで塗装工事の価値は決まります。また、使用する材料によって保ち年数も変わるので、単純に金額のみでは判断がしづらい工事でもあります。さきほどの見積り書を元に、工事金額とコストパフォーマンスの違いを比較してみてみましょう。

外壁塗装を検討する際の考え方のひとつに、コストパフォーマンスという考え方があります。このコストパフォーマンスがどれだけ良いのかを調べる方法の一つに、工事全体の金額を塗料の耐久年数で割るという方法があります。

A社B社
初期費用 1,249,884円1,393,777円
耐久年数10年15年
費用/年数124,988円/年92,918円/年
ポイントA社は初期費用を抑えている代わりに、コストパフォーマンスでみると高くつく事がわかります。ただし今後、引っ越しや建替え等の予定で10年前後塗装が保てばいいという方には適しています。B社は初期費用は高いものの、1年あたりで見たランニングコストはA社よりも3万円抑えられることがわかります。今後も長く住んでいくお家だと考えると、結果的にB社の方が価格を抑えることが出来ます。

このように、初期費用だけを見るとB社の方が15万近く高いものの、1年ごとにかかる金額で考えるとB社の方が年間で3万円以上も安くなるという計算になるので長い目で見るとB社の方が経済的であると言えます。

3-2.塗料選びは今後のライフプランと合わせて考えるとお得!

なぜ金額が高いB社が経済的なのかを分かりやすい例を出して見ていきたいと思います。

塗装工事における金額の多くは人件費と足場費用で占められています。また、外壁や屋根以外の塗装が必要な箇所(雨樋や雨戸、破風板など)は、塗るものによって相性のいい材料があるため、外壁や屋根にどんな塗料を選択しても金額はほとんど変わりません。

グラフを見ると足場台・共通塗装部(雨樋や雨戸など)・人件費は材料に関係なく費用が固定されています。塗料の金額が2倍になっても合計の金額は1.3倍程度に収まっていますので、長い目で見ると初期費用が多少高くても耐久年数の長い塗料を選定したほうがお得と言えます。

住宅を購入してから50年以上住むと考えると、塗装の仕様によってトータルコストは大きく異なります。使用する材料によっては生涯で塗装にかけるメンテナンス費用は100万円前後もの差にもなるので、初期費用は高くても耐久年数の長い塗料を選定したほうが経済的であると言えるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

この記事では適正な平米単価や、使用する塗料や補修方法によって大きく費用が変わることをご説明させて頂きました。
1章では平米単価の目安を、2章では工事する会社によって平米単価が大きく異なるカラクリを、3章では塗装をお得にする方法や注意点も合わせてお伝えさせて頂きました。

この記事でお伝えさせて頂いた事を元に、既にお見積りを取られている方はお手元にある見積りの内容を再度確認してみましょう。また、まだお見積りを取られていない方はお見積りを確認する際のポイントとしてこの記事がお役に立てばと思います。

平米の単価・施工の内容・建物の大きさなどをお見積りを見られる際には注意して、より良い外壁塗装を行って頂ければと思います。