サイディング

近年、サイディングは住宅の外装材として多くの人に選ばれています。施工性も良く、様々なデザインがあるので、選択の幅も広がります。

日本の住宅の外壁素材の約8割はサイディングが使用されており、さらにその内の7割は窯業系サイディングです。
つまり、日本の住宅の多くが窯業系サイディングでできています。
これだけ使用されているサイディングですが、新築から10年程度経過すれば傷みが出てきます。

サイディングの特徴を理解した正しいメンテナンス方法をご存じでしょうか?
放っておいて、全面的な張替なんてことにならない為には、しっかりと素材の特徴と起こり得る劣化現象、そしてメンテナンス方法を理解しておく必要があります。

今回はサイディングボードのなかでも、もっとも割合の高い窯業系サイディングボードにスポットを当ててご紹介します。

.サイディングのリフォーム方法と目安相場

1-1.サイディングの特徴

サイディングは、正式名称をサイディングボードと言います。戦後以降、モルタル造りの住宅が日本では一般的でしたが、近年ではサイディングの住宅がハウスメーカーでも標準的に使用されています。
2014年、日本の外装材で使用されているものの、79%がサイディング、うち70%が窯業系サイディングという調査結果も出ています。(出典:住宅用建材使用状況調査)

サイディングと一概に言っても、その種類は様々です。

外壁素材別シェア

①窯業系サイディング

251

画像出典:http://kabesite.com/examples/view/251/srt:newer/page:5/keyword_attribute_id:13

■主原料

・セメント、繊維質

■特徴

・サイディングボードの中でもっとも普及している

・原料がセメントの為、素材自体に防水性は無い

 

②金属系サイディング

ニチハ 金属サイディング

画像出典:http://www.nichiha.co.jp/wall/center/index.html

■主原料

・カラー鉄板、アルミニウム合金

■特徴

・リフォーム時に使用される事が多い

・軽量で耐震性に優れる

 

③樹脂系サイディング

樹脂サイディング

画像出典:http://www.excelbankin.co.jp/pPanel/panel_exmpl.html

■主原料

・塩化ビニル樹脂

■特徴

・素材自体に顔料が練り込まれている為、色あせが無い

・日本ではほぼ普及しておらず、施工業者が極めて少ない

 

④木質系サイディング

木質系サイディング

画像出典:http://www.igkogyo.co.jp/syohin/wsd/wsd_lineup/wsd_allitem/mw.htm

アイジー工業株式会社 ウッドサイディング

■主原料

・木材

■特徴

・木の風合いを活かしたサイディング

・防火性に劣る為、使用できない地域がある

1-2.窯業系サイディングのメリット

とくに普及が進んでいる窯業系サイディングにスポットを当てて見てみます。窯業系サイディングのメリットが下記になります。

■窯業系サイディングのメリット

・施工性に優れている

・デザインが豊富

・モルタル造りに比べ工期が短い

・モルタル造りに比べコストが安い

このように、ハウスメーカーから見ても、消費者からみても窯業系サイディングボードは施工性が良く、安価で、デザインが豊富という様々な良い特徴を持っています。
しかし、窯業系サイディングボードは、施工されてから10年弱で様々な傷みが出てきます。それは、窯業系サイディングボードが下記のような成分で形成されているからです。

■窯業系サイディングボードの構成成分

サイディング構成成分

・主成分はセメント

・サイディングボード自体に防水性や撥水性は無い

・工場出荷時に初期塗装が施されている

・初期塗装の効果がなくなるのが約10年弱

 

では、窯業系サイディングボードを長く使う為に、どんなメンテナンス方法があるのか、自分でできるセルフチェックとともに見ていきましょう。

2.サイディングのリフォーム方法と目安相場

2-1.部分補修の方法と目安相場

サイディングが傷み始めると出てくる初期の劣化現象として、シーリングの劣化があります。施工してから、約7~8年で出てくる傷みです。
シーリングとは、サイディングとサイディングの間に入っているゴム状の部材です。
硬いサイディング同士が直接ぶつかり合わないよう、クッションの役目をしています。

■シーリング劣化チェックのポイント

・シーリングの目地に柔軟性があるか

・シーリングはしっかりサイディングに密着しているか

シーリング劣化 シーリング劣化2

この二点を確認してみましょう。確認の方法は、目視や指で押して、柔らかさを確かめてみる等などがあります。
また、もっと正確に知りたい場合には、メジャーで幅、下地探し器で深さを調べます。
幅8㎜、深さ5㎜以上でしたら適正なシーリングであると判断ができます。

メジャー       下地探し器

左:メジャー 右:下地探し器

画像出典:amazon.co.jp

■シーリングのメンテナンス方法

①増し打ち

既存のシーリングの上から、シーリングを重ねて充填させる工法です。シーリングの傷みが少ない場合はこの方法で良いでしょう。

・増し打ちのメリット

打ち替えに比べ、手間が少ないのでコストが低い

・増し打ちのデメリット

既存のシーリングに重ねて充填しているので、耐久性に劣る

・目安相場

500~1,000円/

 

②打ち替え

既存のシーリングを撤去し、新しいシーリング材を充填する工法です。既存のシーリング材にすでに柔軟性がなくなっている場合はこの工法をおすすめします。

・打ち替えのメリット

全て新しい物に変えているので、耐久性が増し打ちよりも良い

・打ち替えのデメリット

撤去作業に手間が掛かり、打ち替え後には乾燥時間が掛かる為コストと工期が嵩む

・目安相場

900円~1,500円/

 

そこまで本格的なメンテナンスは考えていないが、そろそろ傷みが気になりだしたら、シーリングだけでも補修を行うといいでしょう。
目地部分は家の寿命を左右する大事な箇所ですので、定期的に点検をしましょう。

2-2. 塗替えの方法と目安相場

前項でも書いた通り、サイディングの主成分はセメントの為、素材自体に防水性はありません。工場出荷の際に初期塗装が施され、その塗膜によって防水性を保っているのです。
初期の塗装の効果が切れてくるのが、施工されてから約10年ほどです。この時期になると、下記のような劣化が出てきます。

■サイディング劣化チェックのポイント

・外壁の表面を触った時、白い粉が手に付くか

・霧吹きで水を掛けた際、表面が水を弾くか

チョーキング検査

この二つは、サイディングの塗膜に防水性があるかをテストしています。壁面を触った時、手に付く白い粉は塗料の中に含まれる顔料が浮き出てきたものです。既に、塗膜の防水性が切れている事を意味します。また、霧吹きで水を掛けた時、水分が壁面に浸み込んでいるようなら早めのメンテナンスを考えた方が良いでしょう。

■塗装によるメンテナンス

もっともスタンダードなメンテナンス方法です。使用する塗料によって耐久性や価格に差があります。

・塗装のメリット

張替に比べて価格が安い

既存の壁のデザインを活かしたままメンテナンスが出来る

・塗装のデメリット

すでに反りが進行している場合、塗装ではメンテナンスできない事もある

・価格相場

約80万円~(使用する塗料によって性能、耐久性が事なる為価格に幅がある)

 

 築10年前後が経ったら、外壁の色あせも始まっているでしょう。まずはセルフチェックで状態を確認し、より詳しい事が知りたくなったら業者の人に点検してもらうのもいいでしょう。家の防水性が保たれているかを知っておくことで、適切なメンテナンス方法を選ぶ事ができます。

2-3. 重ね張りの方法と目安相場

重ね張りとは、既存のサイディングの上に新たなサイディング材を重ねる方法です。
張替より工数や金額的な負担が軽く、塗り替えるよりも耐久性を持たせる事ができます。

■サイディング劣化チェックのポイント

・打診棒でサイディングの中に水が入っていないかを確かめる

SONY DSC

サイディングを打診棒と呼ばれる、壁内の漏水を調べる器具で滑らせるように叩きます。通常はカラカラと軽い音がしますが、壁内に水が入っている場合は異音がします。お風呂場下の窓など水周りが近い外壁は念入りに調べるとよいでしょう。

打診棒は3,000円程度で購入できます。

土牛 打診棒ミニ

画像出典:amazon.co.jp

土牛 打診棒ミニ

■重ね張りによるメンテナンス

重ね張りでは、全張替より手軽に違ったパターンのサイディングを選ぶ事ができます。工期も短い為、長い間、工事の息苦しさに悩みたくない方は検討しても良いでしょう。

・重ね張りのメリット

新たなデザインのサイディングを選ぶ事ができる

価格と耐久性のバランスが良い

・重ね張りのデメリット

すでに壁内へ漏水している場合、重ね張ができない可能性がある

 ・価格相場

約150万円~

新しいサイディングに変えてみたいけど、全張替するほど予算がない場合、重ね張りはオススメの方法です。

2-4. 張替の方法と目安相場

張替とは、既存のサイディングを撤去し、新しいものを設置する工事の事を言います。耐久性が優れているのは勿論ですが、現在とは違ったテクスチャのサイディングに変えたい場合には張替が適しています。防水性と美観性を兼ね備えたメンテナンス方法です。

■サイディング劣化チェックのポイント

・横から見た際、サイディングが反っていないかをチェック

・サイディングを止めている釘に抜けがないかをチェック

サイディングが吸水、乾燥を繰り返すと、しだいに素自体が反っていきます。その際、サイディングを躯体にとめている釘を一緒に押し出してしまうのです。サイディングが反ると、その隙間から水の浸入を許してしまいます。早急にメンテナンスをして、防水性を保つ必要があります。

■張替によるメンテナンス

サイディングのメンテナンス方法の中では、もっともコストが掛かります。しかし、既存のデザインから新たなデザインに変える事ができるなど、選択の幅が広がるメンテナンス方法です。

・張替のメリット

新たなデザインのサイディングを選ぶ事ができる

もっとも耐久性が高い

・張替のデメリット

サイディングリフォオームの中でもっともコストが掛かる

・価格相場

約180万円~

 

築10年以上、お手入れをしていなかった場合は一度セルフチェックをしてみると良いでしょう。反りの進行が経度の場合は、釘を打ち替えて塗装が可能ですが、重度になってくると、張替の方が最終的なコストパフォーマンスが良い場合もありす。

また、家の印象をガラッと変えてみたい場合にも張替はオススメの工事です。

3.自分でできるサイディングメンテナンス

3-1. クラックの補修

家のメンテナンスには、かなりの金額が掛かります。できることなら、出費を抑えたいですよね。最近は、軽度の補修ならDIYでしてしまうという方もいます。比較的簡単な補修の方法を2点ご紹介します。

■クラックの劣化チェックのポイント

・クラックスケールをかざして、クラックの幅を測る

・0.3㎜以下のクラックをヘアクラックという

・0.3㎜以上のクラックを構造クラックという

サイディングクラック

画像出典:プロタイムズ東三河店

ヘアクラックとは髪の毛のように、微細な割れの事をいいます。これは、壁の表面のみが割れているので、パテ等で自分で補修する事も可能です。

反対に、構造クラックとは、表面だけでなく、住宅の構造に影響を及ぼす大きさの割れをいいます。この大きさを自分で補修しても、表面的なメンテナンスになってしまうので、専門の業者に見てもらうのが良いでしょう。

■ヘアクラック補修の手順

①クラックの幅を測定

②クラックをカッターナイフなどでV字にカットする

③ナイロンブラシ等で、カットした溝を清掃する

④専用のプライマーを溝に塗布

⑤パテを溝に隙間なく充填する

⑥盛り上がったパテは平滑にする

⑦タッチアップ用の塗料でパテ上を塗装する

プライマーMP1000アサヒペンサイディング雨漏れ防止補修材

左:プライマーMP-1000  右:サイディング雨もれ防止補修材

画像出典:amazon.co.jp

上記がクラック補修の簡単なやり方です。補修に必要な道具は、ホームセンターでそろえる事ができますので、気になった方は、DIY用品の品ぞろえが良いホームセンターに行ってみるのも良いでしょう。

3-2. シーリングの打ち替え

シーリングは、前項でも書いた通り、サイディング間のクッション材をする役割を持っています。自分で補修をする事も可能ですが、高所作業をする場合もあるので、基本的に専門の業者に頼む事をオススメします。

■シーリング打ち替えの手順

①カッターナイフなどで既存のシーリング材を撤去する

②撤去したのち、削りかすを刷毛で払う

③溝の左右を養生する

④溝にプライマーを塗布する

⑤ボンドブレイカーを溝に貼る

⑥シーリングを溝へ充填する

⑦ヘラなどで平滑にならす

⑧養生を剥がす

セメダインプライマーMP1000まつうら工業 ボンドブレーカーボンドシリコンコーク

画像出典:amazon.co.jp

左:プライマーMP-1000  中央:ボンドブレイカー  右:ボンドシリコンコーク

いかがでしょうか?実はシーリングの打ち替えには結構な手間が掛かっているのです。この目地が、サイディングの継ぎ目すべてにあるので、全部を補修しようとすると、かなりの労力がかかります。DIYでやる場合には、金額的負担をとるか、労力を取るか一度しっかり考えるのが良いでしょう。

4. まとめ

サイディングには、このように注意してメンテナンスを行う部分がいくつかあります。サイディングは優れた建材なので、多くの住宅で使われていますが、まったく傷まない建材ではありません。正しいメンテナンスをする事で、その耐久性が持続するのです。

まずは自分でできるセルフチェックでおうちの状態を確認してみましょう。
家の状態を把握する事が正しいメンテナンスの第一歩です。