マンションの外壁に汚れが目立ってきた、ひび割れも気になるし、タイルの一部が浮き出していて、そろそろ修繕工事をしなければならない。そんなときオーナー様は、どういったポイントを押さえておけばよいのか気になりますよね。

本記事では、費用相場から塗り替えのサイクルや塗装の種類といった知っておくべき内容を記載しております。さらには、修繕工事によって建物が美しくなることでアパートや事務所ビルの入居率は変化するのかという点についても記載しています。ぜひ参考にし、活用してみてください。

1.マンションの外壁塗装にかかる費用

【戸あたり】

国土交通省の調査によると、外壁塗装の工事金額の相場は、1戸あたり12.9~21.6万円です。

戸数工事金額
5戸65~108万円
15戸194~324万円
30戸387~648万円

【㎡あたり】

1㎡あたりでは、865円~2,595円となります。

※大規模修繕工事金額:直接工事費(共通仮設費、現場管理費、一般管理費、消費税相当額は含まない)

以上が外壁塗装にかかる費用の相場です。ただマンションのような大規模修繕において外壁塗装だけすることはないので他の修繕工事と同時に行うことになるのが一般的です。他の修繕工事と同時に行うことで足場代などがお得になります。

国土交通省のマンション大規模修繕工事に関する実態調査による大規模修繕工事の工事内訳(工事金額ベース)を以下にご紹介します。

大規模改修工事の工事内約

 

次に、大規模修繕工事金額を以下にご紹介します。

【戸あたり】

75~100万円:30.6%

100~125万円:24.7%

50~75万円:13.8%

まとめて大規模修繕工事を行った場合の相場は、おおよそ100万円といったところです。

 

【㎡あたり】

10,000~15,000円:41.1%

5,000~10,000円:31.8%

15,000~20,000円:10.0%

平均13,096円です。

 

ちなみに、1回目の大規模修繕工事の内訳は、

①外壁関係 24.0%

②防水関係 22.0%

③仮設工事 19.2%

となっています。2回目は給水設備、3回目以上は建具・金物等が多くなる特徴が見られます。

ぜひ参考にしてください。

 

2.マンションの外壁塗装をするべきタイミング

2-1.塗り替えの必要な劣化症状

マンションの劣化具合の判定は、専門的な診断や判断が必要となることから、所有者の方のみで実施することは難しく、建物・設備診断等の専門家による判定を受ける必要があります。しかし、専門家に依頼する前に、自らのマンションの現状を大まかにでも認識しておくことが望まれます。

まずは、自らのマンションの状況を理解し、専門家による詳細判定を受ける必要があるかどうかの確認をするための、外壁劣化症状の「簡易判定」の項目についてご紹介します。

①外壁や柱、梁等にひびが目立つか
タイルのヒビ

②外壁や柱、梁等のコンクリートが欠けたり、剥がれたりしているか
コンクリートの剥離

③バルコニー手摺壁の付け根にひび割れが見られるか
バルコニー手摺壁のひび
画像出典:プロタイムズ姫路東店

④外壁のタイル等が浮いたり、剥がれ落ちたりしているか
タイルの剥離

⑤雨漏りや、上階からの漏水が目立つか
上階からの漏水

これらの項目に該当項目がある場合は劣化が進行している可能性がありますので、専門家による判定を受ける必要があります。専門家による判定を受け、外壁塗装等の必要な修繕を行ってください。

2-2.塗り替えのサイクル

国土交通省は、約12年に一度大規模修繕を行うことを推進しています。大規模修繕工事の実態調査結果によると大規模修繕工事は実際に1回目は築13~16年前後、2回目は築26~33年前後、3回目以上は築37~45年前後の時期で実施されています。

大規模修繕工事回数築年数
平均
1回目16.3年
2回目29.5年
3回目40.7年

大規模修繕工事は13~16年の周期で行われています。ただ、あくまで目安ですので必ずしもこの周期で塗り替えが必要というわけではありません。外壁の劣化状況で判断しましょう。塗装の種類によっては12年以上経過しても目立った劣化の症状が発生しない場合がありますので、専門家による判定を受けてみてください。

2-3.修繕積立金と長期修繕計画

[修繕積立金について]

修繕工事を実施する場合、1-1で紹介したように1戸あたり100万円前後かかりますので、多額の費用が必要となります。マンション購入者から修繕工事実施時に一括で徴収することは困難であり、合意を得ることは難しくなります。

こうならないためにも、将来予想される修繕工事に必要な費用を、計画的に積み立てていく必要があります。この修繕工事に備えて積み立てるお金を「修繕積立金」と呼びます。

【修繕積立金の額の目安】

階数/建築延床面積平均値事例の2/3が包含される幅
15階未満5,000㎡未満218円/㎡・月165~250円/㎡・月
5,000~10,000㎡202円/㎡・月140~265円/㎡・月
10,000㎡以上178円/㎡・月135~220円/㎡・月
20階以上206円/㎡・月170~245円/㎡・月

※事例にはばらつきが大きいため「平均値」とともに、事例の大部分がおさまるような範囲を示すという観点から「事例の2/3が包含される幅」も記載しています。

 

[長期修繕計画について]

一般的に長期修繕計画は分譲事業者から提示されますが、長期修繕計画の作成方法やそこに盛り込むべき内容については、平成20年6月に国土交通省が作成・公表した長期修繕計画作成ガイドラインで説明されていますので、参考にしてください。

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3.マンションの外壁塗装の種類と色選びのポイント

3-1.外壁塗装の種類とその耐用年数

外壁塗装の種類を考える際は、ランニングコストで考えるのがおすすめです。

一般的に、耐用年数が短いものほど塗料の価格は安く済みます。しかし、その分修繕回数が多くなります。一方で耐用年数が長いものほど塗料の価格は高くなりますがその分修繕回数が少なくなります。残り何年間そのマンションを活用したいか次第で選択すべき塗料は変わってくるということです。

以下を参考に塗装の種類を選定しましょう。

塗料の樹脂特徴耐候年数価格(1缶あたり)※
無機ハイブリッド

(変性無機)

無機と有機のハイブリッド型で高い耐候性を持つ。塗料の劣化要因である紫外線・雨・熱から建物を守る。約18年50,000~120,000円
ピュアアクリル高耐候性、高弾性を有し、防水性に非常に優れた塗料。ひび割れによる水の浸入を防ぐ。約15年50,000~70,000円
無機配合型フッ素フッ素塗料に無機成分を配合し高い耐候性を持つ。塗料の劣化要因である紫外線・雨・熱から建物を守る。約16年40,000~100,000円
フッ素耐候性を優先する方にオススメ。長期間にわたり、建物を保護する。約12年40,000~100,000円
光触媒汚れ防止を優先する方にオススメ。太陽光と雨の自然の力でセルフクリーニング効果がある。(光触媒効果)約12年20,000~50,000円
シリコン一般的によく使われる塗料で、価格と機能のバランスが良い塗料。約8年15,000~40,000円
ウレタン価格が安く、定期的に塗り替えを楽しみたい方向きの塗料。約6年5,000~20,000円
アクリル価格が安く、定期的に塗り替えを楽しみたい方向きの塗料。約4年5,000~15,000円

※あくまで塗料1缶あたりの金額です。㎡あたり塗ることができる量(塗布量)も塗料によって差があります。また塗料代の他に足場設置、養生シート貼り、高圧洗浄、下地処理の費用、更に職人の人件費が入り、外壁塗装全体の金額を構成しています。

知っておきたい外壁塗装の塗料の種類と選び方

〔初心者にも簡単にわかる〕外壁塗装の種類まとめ

3-2.外壁塗装の色選びのポイント

塗料の種類が決定したら次に気にするべきは色です。分譲マンションでは、総会等で色が決定されることが多いと思いますが、アパートや事務所ビルでは「入居率」に直結する色を選択したいものです。

そのためにどのような色を選択するべきかご紹介します。それは、「想定している入居者の年齢層が好む色を選ぶ」ことです。若い人を対象にしている場合は、明るく派手な色にしたり、色数を増やすなどが有効です。高齢者を対象にする場合、落ち着いたオーソドックスな色を選ぶことが有効です。

色選びに関しては、下記の記事も参考にしてください。

https://reform-journal.jp/mansion-paint-53758

アパート経営者必見!外壁塗装で入居率を上げる方法!

おしゃれな外壁大特集!リフォームで外壁を素敵に演出!

4.マンションの塗装工事において知っておくべきこと

4-1.塗装の臭気

塗装を行うにあたって塗料には種類が大きく分けて2種類あります。それは、水性形塗料と溶剤形塗料です。

臭気に関しては、圧倒的に水性形塗料の方が少ないです。性能面では、溶剤形塗料の方が優れていると言われていますが、最近は水性形塗料の性能もほとんど差がないほど向上しています。臭気は、トラブルの原因になりやすいので入居者の方々への説明をきちんと行い、あらかじめ理解を求めておきましょう。

4-2.外壁塗装の工程

一般的な外壁塗装の工程を下記に示します。

①足場の設置
足場の設置
画像出典:プロタイムズ東三川

②下地補修
下地補修
画像出典:プロタイムズ沖縄中央店

③シーリングの打ち替え
シーリングの打ち替え
画像出典:プロタイムズ天白店

④高圧水洗浄
高圧水洗浄
画像出典:プロタイムズ彦根店

⑤養生
養生
画像出典:プロタイムズ福岡南店

⑥外壁塗装
外壁塗装
画像出典:プロタイムズ沖縄中央店

⑦足場解体
足場解体
画像出典:プロタイムズ沖縄中央店

一般的にマンションの外壁塗装は50戸未満で1~2カ月、50戸以上では2~3カ月程度かかります。塗装には、下塗り、中塗り、上塗りという工程が一般的にはあり、塗装といっても実に多くの工程が必要になるのです。

 

まとめ

マンションの外壁塗装にかかる費用相場や塗り替えのタイミング、塗料の種類、工事の期間についてご紹介致しました。

専門家による判定を受ける前にご自身で簡易的に判断し、必要であれば専門家の判定を受けましょう。専門家から塗り替えが必要との判定を受けた場合は、金額だけでなく建物の耐用年数や今後要する修繕費用等を総合的に考慮し、塗料の種類を参考にして選定してみてください。

本記事が皆様のお役に立てると幸いです。

マンションオーナーが外壁塗装をする前に知っておきたいポイント