住宅を下から支える基礎にひび割れ(クラック)が発生しているのを見つける場合があります。地震の多い日本に住む私たちにとって、ちょっとしたひび割れも心配になる症状の1つと言えるのではないでしょうか。
しかし、ひび割れにも様々な種類があり、基礎を補修すべき場合とそうでない場合があるのをご存知ですか?
もし補修のタイミングや劣化症状の見分け方を知らなければ、強引な営業により不必要な工事をすることになってしまうかもしれません。お家の基礎の状態をある程度ご自分でチェックできるようになっておけば、劣化具合に応じた適切な対処をすることが可能です。
そこで、基礎のひび割れに関する基礎知識や、補修の目安となる劣化症状の一覧、業者の選び方などを解説します。この記事を読んで、基礎のひび割れ補修に関する正しい知識を身に着けてください。
まずは基礎のひび割れについて詳しく知ろう
劣化症状や補修工事の進め方などの詳しい説明に入る前に、まずは家の基礎のひび割れ(※1 クラック)の原因や、ひび割れが引き起こす問題について詳しく解説させていただきます。
※1 以後、「クラック」は省略し「基礎」のみで記述します
そもそも基礎のひび割れはどうして起きる?
基礎にひび割れが発生する主な原因は以下の通りです。
・乾燥収縮
基礎のひび割れの原因としてもっとも多いのは、乾燥によってコンクリート内部の水分が蒸発することで基礎が収縮する現象です。住宅の基礎のようにコンクリートが固定されている場合、乾燥収縮によって引っ張られたコンクリートが、耐えきれずひび割れてしまうのです。
・気温変化
コンクリートは温度が急激に下降すると縮む性質を持っており、その際に発生した力がコンクリートの引張強度を上回るとひび割れが発生してしまいます。夏場に施工された基礎などによく起きる現象です。
・不同沈下
地盤が弱い場所に建つ家で発生する可能性がある現象で、住宅が斜めに傾くことで基礎が建物を支えきれなくなり、ひび割れが発生してしまいます。程度によっては、日常生活に支障をきたしたり、住宅そのものが倒壊してしまう危険もありますので注意が必要です。
・地震
よほどの大型地震でもなければ、深刻なひび割れが発生することは少ないです。地震のあとに大きなひび割れが発生している場合は、基礎に何らかの問題がある可能性を疑ってみることをおすすめします。
・施工不良
コンクリートのかぶり厚さ(鉄筋から表面までの厚さ)の不足や、強度不足など、基礎を施工する際に問題があった場合にもひび割れは発生してしまう可能性があります。
・コンクリートの中性化
コンクリートは吸水性の高い素材であるため、雨や大気中の二酸化炭素に長い間さらされると内部のカルシウム化合物が中性化してしまう現象が起きてしまいます。鉄筋を保護していたアルカリ性のコンクリートが中性化してしまうことで、鉄筋が錆びて膨張してしまい、その結果ひび割れが発生してしまうのです。
放置すると鉄筋の錆や地盤沈下の可能性も
基礎に発生したひび割れを放置すると、どのような事態を招くのでしょうか?
最初に警戒しなければならないのは、ひび割れから雨水がコンクリート内部に浸入することで発生する鉄筋の錆。構造に影響を与えるほどではない幅0.3mm以下の「ヘアークラック」であっても、雨水の浸入は起こり得るため注意が必要です。
また、深刻なひび割れを放置すると基礎の強度が低下してしまい地盤沈下が発生する可能性があります。住宅の重量を基礎が支えきれなくなり傾いてしまうのです。後ほど紹介する重大な劣化症状に、あなたのお家の基礎が当てはまる場合は、まず業者に診断を依頼することをおすすめします。
耐震性への影響は?
やはり気になるのが、大型地震が起きた時の影響について。基礎に発生したひび割れは、住宅の耐震性に影響を与えるのでしょうか?
結論から言うと、幅0. 3mm以下のひび割れが少し発生している程度では耐震性に大きな影響はありません。ただし、構造に影響を及ぼす恐れのあるひび割れが発生している場合はその限りではありません。深刻なひび割れを放置することで基礎の強度が低下してしまっている場合、大型地震が発生した際には最悪の場合倒壊の危険性もあります。もし、すでに住宅に傾きが発生してしまっているようであれば早急の対策が必要です。
基礎を補修すべきひび割れの種類一覧
ここからは、基礎を補修すべきひび割れの状態を写真付きで解説させていただきます。業者に相談する前に、ご自身でチェックする際の参考にしてください。
1,幅0.3mm、深さ4mm以上の「構造クラック」
画像出典:プロタイムズ仙台南店
幅0.3mm以上、深さ4mm以上の「構造クラック」と呼ばれるひび割れが発生している場合は、基礎を補修が必要です。構造クラックは「貫通クラック」とも呼ばれ、ひびが表面だけでなく内部の鉄筋まで届いてしまっている非常に危険な状態です。雨水の侵入によって鉄筋が錆びてしまうだけでなく、ひび割れが広範囲に広がってしまい、最悪の場合地盤沈下を招いてしまう可能性があります。換気口の角の部分に発生しやすいので、ぜひチェックしてみましょう。
また、ひび割れの幅を測る際は「クラックスケール」と呼ばれる道具を使用すると便利です。(写真参照)
クラックスケールはホームセンターなどで購入することができます。価格は数百円程度で、基礎だけでなく外壁のひび割れをチェックする際にも使用できますので、住宅のリフォーム・補修を考えている方は持っていて損はないでしょう。また、幅0.3mm以下、深さ4mm以下の髪の毛ほどの大きさのひび割れは「ヘアークラック」と呼ばれ、基礎の強度に直ちに影響を与えることはないとされています。
2,同じ場所にある複数の微細なひび割れ
たとえ小さなひび割れであっても、限られた範囲内にいくつも発生している場合は注意が必要です。1m以内に3つ以上のひび割れがあるかどうかを目安とし、あまりに多くのひび割れが発生している場合は基礎の構造への影響が疑われるため、プロによる診断を検討してみた方がいいかもしれません。
3,基礎の高さいっぱいまで伸びているひび割れ
画像出典:プロタイムズ福岡北店
基礎を上から下まで横断して伸びているひび割れには注意が必要です。たとえ幅が小さなヘアークラックであっても、そのような場合は早めに補修を検討することをお勧めします。
4,水平方向に走るひび割れ
画像出典:プロタイムズ金沢駅西店・富山中央店
あなたのお家の基礎に発生したひび割れが、写真のように横方向に伸びていた場合、設計や施工に何らかの問題を抱えている可能性があるかもしれません。
1章でも述べた通り、基礎にひび割れが起きる原因としてもっとも一般的なのは、乾燥や温度変化によって生じるコンクリートの収縮です。ひび割れは縦方向に発生することが多く、そのほとんどが構造に影響を与えるほどではないヘアークラックです。しかし、横方向や斜めに伸びるひび割れは大きな力が基礎に加わることで発生します。
しっかりと施工された基礎であれば、多少地震が起きた程度ではクラックが発生することはありません。上記ようなひび割れがある場合は住宅の構造に何らかの問題がある可能性があります。信頼できる業者に一度相談してみるといいでしょう。
5,基礎コンクリートの破裂・滑落
画像出典:プロタイムズ東三河店
小さなひび割れを長期間放置してしまうことで発生するのが、基礎コンクリートの破裂・滑落です。ひび割れがどんどん広がってしまい、内部への水の浸入を防ぐことが難しくなってしまうばかりか、放置すると地盤沈下のリスクも大幅に増加してしまいます。基礎のひび割れがこの写真のような状態になる前に補修しておくことをおすすめします。
6,雨染みの発生
基礎のコンクリート内部に雨水が浸入していることを示すサインとしてもっともわかりやすいのが、ひび割れ周囲の雨染みの発生です。酷い場合は内部の鉄筋のサビ汁が溢れてしまっている場合もあり、基礎の強度への影響が懸念されます。そもそもコンクリートそのものには防水性がありませんので、ひび割れがない箇所にも雨染みが発生する可能性が十分にあります。
基礎のひび割れ補修方法
基礎のひび割れは、ひび割れ補修をしてから塗装で仕上げる補修方法が一般的です。
[オススメ!基礎のひび割れ補修方法]
▼ステップ① ひび割れ箇所を補修する
ひび割れ箇所の補修には、「フィラーすり込み」や「Uカットシーリング処理」といった方法があります。その他、ひび割れ箇所にエポキシ樹脂を注入して補修する方法や、繊維シートを使用して補修をする方法などもあります。
基礎のひび割れ箇所に、微弾性フィラーをすり込む。
・Uカットシーリング処理
基礎のひび割れ箇所をU字にカット。カットしたところに専用プライマーを塗布し、シーリングを充填する。
▼ステップ② 塗装をする(ひび割れ補修をした面だけ塗装をする or 家の基礎すべてを塗装する)
ステップ①の上から塗装すると、ひび割れ箇所の補修跡が塗装で見えなくなるため、(塗装をした基礎は)新築時のようにキレイになります。
また、塗装をすることで、基礎の防水性を高める効果も期待できます。
※基礎のひび割れが進行している場合などには、上記以外の補修が必要となることもあります。
※ひび割れの原因が「基礎工事の不備」「家の構造の問題/地盤の問題など」「地震」の場合には、基礎のひび割れ補修+αの補修/大がかりな基礎の補修工事/基礎以外の箇所の工事などが必要となることもあります。
基礎のひび割れ補修のより詳しい内容を知りたい方はこちらからどうぞ
基礎のひび割れ補修にかかる費用相場
基礎のひび割れ補修にかかる費用相場は下記の通りです。
●ひび割れ箇所の補修+塗装(基礎部分)
数十万円~
●ひび割れ箇所の補修のみ
数万円~数十万円~
※上記はあくまで目安の額です。実際の補修費用は、ひび割れの進行具合、ひび割れの数、補修工事の内容等によって大きく変わります。
※大がかりな補修工事が必要な場合には、相応の費用がかかります。
※「基礎工事の不備」「家の構造の問題/地盤の問題など」「地震」が原因でひび割れが生じた場合には、保証や保険の対象となる可能性があります。
基礎のひび割れを見つけたら、プロに相談・依頼するのが賢明
基礎のひび割れ補修が必要かどうかの判断基準などをお伝えしましたが、このあたりを自身だけで判断するのは難しいでしょう。
自身だけで判断をすると「軽微なひび割れかと思っていたが、実は、放置すれば耐震性にも影響を及ぼしかねないような早々に補修が必要なひび割れだった」など、甚大な被害につながるひび割れを見逃す恐れもあります。
そのため、基礎のひび割れを見つけたら、プロに相談をするのが賢明です。
プロに相談をして、基礎のひび割れを確認してもらうと、
・今すぐひび割れ補修するべきか、しばらくは様子見でも問題ないか
・このまま、ひび割れを放置した場合のリスク
・(ひび割れ補修が必要な場合)どんなひび割れ補修工事が必要か
・ひび割れ補修以外に、必要な補修があるかどうか
などについて、プロの意見・見解を教えてもらえます。
さらに、
・(ひび割れ補修が必要な場合)ひび割れ補修工事をした場合にかかる費用(見積額)
も提示してもらえるため、より現実的にひび割れ補修等を検討できるはずです。
ちなみに、どこに相談をすればよいかというと…
一般的な相談先としては、塗装業者をはじめ、施工店、建築士など様々あります。
新築を建ててから(基礎のコンクリート施工後)すぐに、基礎にひび割れが発生した場合は、保証などが受けられる可能性もあるため、ひとまず工事を行なった業者・住宅購入時の業者(ハウスメーカー、仲介の不動産会社等)などに相談をするのが良い場合もあります。
そして、基礎のひび割れの補修工事もプロに依頼することを強くオススメします。
なぜならば、基礎のひび割れを補修するためには、
①基礎のひび割れ原因を正しく見極める
②原因に合わせて、必要な補修をする
③補修をするのに最適な材料を見定める
など、専門的な知識や経験、そして技術が必要となるためです。
基礎は家を支える重要な部分であるため、ひび割れ原因を見誤ったり、補修工事に不備があったりすると、基礎が早々にダメになるだけでなく、家の耐震性にまで影響を及ぼしかねません。
そのため、無理に自身で補修しようとせず、プロに依頼をする方が安心です。
なお、基礎のひび割れ補修が必要かどうかの診断の依頼は無料で対応してくれる業者が多いので、一度連絡して確認されるとよいでしょう。
※本サイトを運営している「プロタイムズ」でも、基礎のひび割れについての相談、建物診断や補修工事の見積りの依頼を受け付けています。お気軽にお問合せください。