ふとお住まいの外壁を見たとき「外壁にひび割れがある!なにか工事したほうが良いかな?」そんな不安を感じる方は多いのではないでしょうか?
外壁の工事を行うことは、建物をきれいに直すだけではなく、大切なお住まいを長く使い続けるためにも必要不可欠なことです。しかし家を建ててからこれまで外壁の工事の経験がない方にとっては、「どんな見た目の時に工事したらよいのか」「どんな工事内容なのか」など分からないことばかりかと思います。
そんな方にとって、外壁の工事を行う上で気になるのが「金額をなるべく安く抑えたい」など「“お得”に外壁の工事を行う方法」かと思います。
そこで本記事では、「外壁の工事をお得に行う」ために、工事の種類・費用から業者に依頼する上で参考にしてほしいポイントまで詳しくご紹介します。「まだ外壁の工事をしたことがない」という方はぜひ参考にしてください。
1.【はじめに】外壁の工事を行う前に知っておきたい基礎知識
「どんな工事をすれば良いのか分からない」「塗装工事以外にどんな工事があるの」という方に向けて、まずは外壁工事の種類、どんな劣化症状のときにどんな工事をすればいいのかなど、「外壁の工事に関する基礎知識」をお伝えします。お住まいに最適な工事を検討するためにまずはご確認ください。
1-1.外壁の工事の種類と費用相場
主な外壁の工事の種類として、安価で行うことができる工事の順に4つの工事をご紹介します。
■外壁の部分補修
例えば、外壁の一部にのみひび割れが発生している、塗膜が剥がれている、などの劣化が生じている場合には、その部分だけ補修工事する「部分補修」を行います。
【どんな劣化症状があるときに補修工事すれば良いのか】
・塗膜の剥がれ ・外壁のひび割れ ※一部のみ
【部分補修にかかる費用相場】
約900~1,200円/m 打設するシーリング材の長さによって価格は異なります。
■シーリングの打ち替え
サイディング外壁やALCボード外壁には、ボードとボードの間にゴム状のシーリングが注入されています。このシーリングは紫外線や水の影響により劣化しひび割れや痩せが発生します。そのような劣化症状が見られた際には、劣化しているシーリングを打ち替える補修工事をオススメします。
【どんな劣化症状があるときにシーリングの打ち替えすれば良いのか】
・シーリングのひび割れや、剥がれ、肉やせ
【シーリング打ち替えにかかる費用相場】
約1,200~1,500円/m
※打設するシーリング材の長さによって価格は異なる
※既存のシーリング材を撤去する費用も含む
■塗装工事
塗装工事は既存の外壁の上に建物を守るための塗料を塗る工事のことです。外壁に塗られた塗料は雨や紫外線の影響を受けることにより、劣化してしまいます。そのため、建物を長持ちさせるために塗り替え工事を行います。
【どんな劣化症状があるときに塗装工事すれば良いのか】
・カビや藻の発生 ・チョーキング ・色あせ ・外壁のひび割れ
【塗装工事にかかる費用相場】
約100~150万円 ※使用する塗料や施工する面積によって変動
■重ね張り工事
重ね張り工事は既存の「外壁を撤去せずに新しい外壁を張り付ける工事」です。既存の外壁の撤去がない分、張り替え工事よりも安価に工事を行うことができ、また建物の中に雨漏りが発生していない場合でもこの重ね張り工事を行うことができます。
【どんな劣化症状があるときに重ね張り工事すれば良いのか】
・カビや藻の発生 ・チョーキング ・色あせ ・外壁のひび割れ ・部分欠損 ・反り など下地(躯体)が大きく劣化している
【重ね張り工事にかかる費用相場】
約180~250万円 ※使用する塗料や施工する面積によって変動
■張り替え工事
張り替え工事は既存の外壁を撤去し、新しい外壁のボードを貼り付ける工事。外壁に雨水が浸入し、脆くなった場合、建物内に雨漏りが発生した場合に、外壁自体を新品に取替えるこの工事が行われます。
【どんな劣化症状があるときに張り替え工事すれば良いのか】
・建物内への雨漏れ ・外壁のひび割れ(ひび割れ個数が多い場合) ・凍害 など強度低下
【張り替え工事にかかる費用相場】
約200~280万円 ※使用する塗料や施工する面積によって変動
以上、外壁の工事の種類をお伝えしました。外壁の工事を行う上ではただ単に価格の面だけをみて「安い」工事を行えば良いというわけではありません。家の劣化状況に合わせて、最適な工事を行うことが結果、長期的に建物を守り、維持費を安く済ませる一つのポイントとなります。お住まいの状況を確認し、どんな工事が最適か、選ぶようにしましょう。具体的な劣化症状については、次でお伝えします。
1-2.こんな症状があれば工事を検討しよう
外壁の劣化症状の種類によって実施する工事の種類は変わります。どのような劣化症状のときにどのような工事を実施する必要があるかまとめましたので、ぜひご自宅の状態を見てみましょう。
症状 | 状態 | 必要となる工事の種類 |
---|---|---|
カビ・藻の発生 | 塗膜の表面劣化が軽度に進んでおり、日当たりが悪い場所や湿気の多い箇所に発生。建物の耐久性に関わる深刻な劣化症状ではないが、見た目が悪くなるため塗装工事などを行う必要がある。 | ■塗装工事 |
チョーキング | 外壁を触った際に白い粉が付着する状態。塗膜の樹脂が太陽光の紫外線や水により分解されることで発生。 | ■塗装工事 ■重ね張り工事 |
剥がれ | 塗装が下地から剥がれている状態。この状態だと外壁を保護する機能が低下している。 | ■部分補修 ■塗装工事 ■重ね張り工事 |
シーリングのひび割れ | サイディングやALCボードの外壁にはボードとボードの間に緩衝材であるシーリングが注入されているが、経年とともにひび割れや欠損が発生。水が建物に浸入する危険がある。 | ■シーリングの打ち替え ■塗装工事 |
外壁自体のひび割れ | 地震など建物に動きが発生すると外壁にひび割れが発生する。ひび割れから雨水が建物内に浸入する危険がある。 | ■部分補修 ■塗装工事 ■重ね張り工事 |
【劣化症状を放置するとどうなるのか?】
これまで外壁の工事をしたことがない方の中には「外壁にひび割れや汚れが目立つようになってきた。だけど工事にかける費用がないし、まだ工事しなくてもよいだろう」と、外壁に見られる劣化症状を放置してしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、外壁を工事せず放置してしまうと結果的に損するかもしれません。
その理由は「大規模な工事が必要になり、高額な工事費用がかかってしまう可能性がある」からです。ひび割れなどの劣化症状はその時点では小さな不具合のため放置してしまいがちですが、そのような劣化症状は、建物内部に雨水が浸入し下地や内壁の腐食につながる危険性があります。
さらに放置すると「雨漏り」が起き、高額な工事費用が発生する危険性もあるのです。高額な工事費用が発生する事態を防ぐためには、外壁は小さい劣化症状を見逃さずに「劣化症状の状態に合わせた工事」や「劣化症状が進行する前に工事を行う」必要があることを覚えておきましょう。
2.“お得”に外壁を工事する方法
外壁の工事についての基礎知識についてご理解いただけましたか?この章では、本記事のメインである工事を「お得に行う方法」つまり「できるだけ安く行う工事方法」についてお伝えします。
2-1.一番お得で安いのは「劣化の部分補修」
「外壁の工事をするとなると約100万円以上かかってしまう。高額な買い物は今すぐできないから、安く済ませる方法はないのか?」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方におすすめなのが「劣化している部分だけ補修する」工事です。
たとえば
● 太陽光の当たらない北面だけカビが生えている
● 壁の一部分のみひび割れが発生している
など、全体的には劣化症状が進んでいないものの、部分的に汚れがあったり、劣化していたり、などの症状がある方は、外壁全体を工事するよりも金額を安くすることができます。
部分的な補修工事を行うためには、劣化症状が建物全体に広がる前に処置しなければいけません。そのため、建物全体に広がる前に1年に一度は定期的に確認するようにしましょう。
サイディング外壁やモルタル外壁の劣化症状とその補修方法については、下の記事で詳しく記載されています。部分的な補修工事で済ませたいという方は次の記事をぜひご覧ください。
■補修工事をお願いする際には、誰に相談したら良いの?
「一部分のみカビの発生やひび割れが見られるから業者に補修をお願いしたい。だけど誰に相談すれば良いか分からない」という方も多いのではないでしょうか?
補修工事は、新築工事をお願いしたハウスメーカー、WEBサイトで検索してお住まいの近くにあるリフォーム会社、塗装会社、などが対応してくれるでしょう。
2-2.外壁全面の工事なら「外壁塗装」が一番オススメ
塗装工事・重ね張り工事・張り替え工事など、外壁全体を工事する場合、一番お得にできる工事方法としてオススメの方法が「塗装工事」です。
塗装工事の場合、外壁にあるひび割れや剥がれなどもすべて補修して、その上から塗装するため、雨漏りのリスクを軽減することもでき、かつ外壁全体の見た目も一新できます。また、塗装工事は重ね張り工事や張り替え工事と比較して、低コストで外壁全面を工事できるメリットもあります。
以上の理由より外壁全面を工事する場合は塗装工事をオススメします。
2-3.自治体からの補助金・助成金を使用する
国や地方公共団体が実施する「住宅リフォーム支援制度」をご存知でしょうか?各地方自治体によって指定されているリフォーム工事を実施するにあたって、その工事費の一部を各地方自治体が補助してくれる支援制度です。このような補助金や助成金は外壁の工事にも使用できる場合があり、お得に工事を行うために有効な方法です。
対象となる工事や性能基準、対象となる期間については、自治体や制度ごとに定められているため事前によく確認する必要があります。
お住まいの地域において、支給される補助金や助成金の条件については支援制度検索サイトで確認できます。
地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト(令和元年度版)
また、補助金や助成金をどのように申請して受け取ればいいの?という方は次の記事をぜひご覧ください。
2-4.【補足】「屋根」と「外壁」を一緒に工事すると足場代・諸経費がお得に!
外壁をお得に工事する方法では有りませんが、お住まい全体をお得に工事するためには屋根と外壁を同時に工事することをオススメします。
外壁だけ工事するより屋根も同時に工事を行う方がメリットがあります。理由は2つあります。
■足場代を節約できる
一般的に屋根工事の際であっても外壁工事の際でも足場を組みます。足場代は約20万円以上が相場のため、外壁と屋根を別々の時期に行うと、約20万円がそれぞれかかってしまうのです。そのため、屋根と外壁の工事は一緒に行うことで足場代を1回分節約できます。
■諸経費を節約できる
諸経費=交通費など工事以外にかかる経費のことです。足場代と同じ理由で、屋根の工事を同時に行うことで1回分諸経費をカットすることが可能です。
さらには、もし外壁と屋根の工事を一緒の機会に行わず、別々で行った場合、工期も2回分かかることになります。屋根と外壁を同時に工事することで、手間を省き、生活への影響を最小限に留めることができます。
以上の理由からも外壁の工事だけではなく、屋根の工事も一緒に行ったほうが実は金額的にはお得であるということを覚えておきましょう。
3.できるだけ安く、お得に工事するための業者選びの方法
外壁の工事をお得に行う上で重要なのは工事の内容だけではありません。なんといっても工事を行ってもらう業者を選ぶ作業がとても大切になります。しかし、これまで外壁工事の経験がない方にとってはどの業者にお願いすればよいのか分からないもの。
そこで本章では、工事を依頼する業者を選ぶ際に、少しでもお得に安く工事するために、業者選びの方法について詳しくご説明します。
3-1.業者選びのポイント① チラシなどでキャンペーンをしている業者を選ぶ
知り合いの業者がいない、どの業者に依頼すればいいか分からない、という方にとって、有効な業者探しの手段は新聞に折り込まれているチラシやWEBサイトを確認することです。
業者によってはチラシ・WEBの中に金額が定価から割引される「キャンペーン」など記載している業者もあり、キャンペーン期間中に工事を依頼することでお得に工事することができます。
しかし、大幅に値引きをしている。明らかに他の会社よりも安い、などの場合、工事を行う上で工程を省いているなど、工事品質を下げている可能性もあります。大幅な値下げの提案をされた場合、他の業者からも見積りを取り、しっかりと価格の根拠を確認することをオススメします。
3-2.業者選びのポイント② 2~3社の業者から見積もりを取る
少しでも安く工事を依頼するためにオススメするのが複数の業者から「相見積もり」を取ることです。チラシ・WEBなどで、地元で活動している会社、ご近所の方に紹介された会社などの中から見積もりをお願いする業者の候補を「2~3社」に絞りましょう。
そして、候補となる業者が決まったら、同じ条件(塗料のグレードや施工方法)で見積もりを依頼。見積もりが提出されたら項目ごとに金額などを比較・検討します。
最終的には、見積もりを確認し、金額面で納得いく業者があれば工事を依頼することになります。なにか、疑問点や不安な点があればこのときに聞くようにしましょう。
また、依頼しようと決めた業者であれば、依頼を前提に値引きができないか交渉してみましょう。値引きの幅は、総額から10%程度が限界とされており、それ以上の値引きを求めれば工事の品質にかかわります。無理な値引き交渉はしないように注意が必要です。以上のような流れで進めていくと工事をできるだけ安くすることができるでしょう。ぜひご参考にしてください。
業者選び際の手順やポイントについて詳しく知りたい方は次の記事に詳しく記載されていますので、こちらをご確認ください。
4.外壁工事のDIYはオススメできない
「とにかく安い費用で工事したい」という方向けに自分で外壁を工事するDIYという手段があります。このDIYですが、ずばりオススメできません。
オススメできない理由としては、
・脚立から落ちて大怪我をしてしまう・塗りムラがあってきれいな仕上がりにならない・不具合が早期で発生して結局業者に工事を依頼することになる
などのデメリットが多くあるためです。
どうしても、DIYで外壁の工事をしたいという場合には、部分補修など「脚立を使わなくても良い工事」は比較的安全でDIYしても大丈夫といえますが、塗装工事・張り替え工事・重ね張り工事などの脚立・ハシゴを登らないといけない工事は、安全面や仕上がり面を考慮し、DIYではなく業者の方に工事をお願いするようにしましょう。
外壁塗装をDIYする際の進め方やポイントについては次の記事で詳しく記載されています。「DIYで安く工事をしたい」という方はぜひご覧ください。
まとめ
今回の記事では外壁の工事について何もわからないという方に向けて、どんな工事があり、どうすればお得に工事できるか、についてご紹介してきました。外壁の工事を“お得”に行うといってもただ「安い」工事を行えば良いというわけではありません。家の劣化状況に合わせて、最適な工事を行うことが結果、長期的に建物を守り、維持費を安く済ませる一つのポイントとなります。
まずは1年に1回は建物を細かく見るようにし、今、工事が必要か、一部分だけの補修でよいか、全体的に工事が必要か把握するようにしましょう。