防水工事

「業者に防水工事を勧められたけれど、本当に必要なのか」「防水工事にかかる費用相場が知りたい」など、防水工事について何等かの情報を収集している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

防水工事について踏み込んでお伝えする前に、前提として確認しておきたいのが”防水工事”の定義についてです。防水工事というと、その字面から「水を防ぐ工事全般」というイメージをもたれているかもしれませんが、実際にはアパート・マンション・ビル・ALC住宅の屋上、陸屋根、ベランダ、バルコニー等に施す防水施工のみを防水工事と呼びます。上記以外の場所に関する施工は、基本的に「防水工事」の定義には当てはまりませんので、注意してください。

この記事では、防水工事の費用相場や、防水工事が必要なタイミングの見極め方、業者を選ぶ前に押さえておきたいことなど、防水工事をする際に知っておくべき情報をまとめてご紹介します。ぜひ、気になる情報をチェックしてみてください。

1.定期的な防水工事が建物の寿命を延ばす

アパート・マンション・ビル・ALC住宅の屋上、陸屋根、ベランダ、バルコニー等には、なぜ防水工事が必要なのか、いま一つピンときていない方もいらっしゃるかもしれませんが、防水工事は建物の寿命を延ばすために、絶対に必要な工事の一つです。その理由は、防水工事をしなかった場合に起こる劣化のメカニズムを考えると、よくわかります。

仮に、定期的に防水工事をしなかったとしましょう。すると、時間とともに劣化が進行し、防水性能を発揮できなくなった箇所から建物内部に水が浸入するようになります。建物内部に浸入した水は、雨漏りを発生させるだけでなく、建物内部の躯体も確実に腐食させていきます。場合によっては、建物に浸入した水が原因で、菌やカビが繁殖してしまうことも。つまり、防水性能が失われると、建物を蝕み、寿命を縮めることにダイレクトにつながってしまうということです。

このような事態を避け、建物の寿命を延ばすには、定期的に防水工事を施し、建物に水を入れない状態を保っておくことが重要なのです。

[補足情報]

一般住宅の屋根や外壁等には、なぜ防水工事が必要ないのか?

「建物内部に水を浸入させない」ということについて考えると、アパート・マンション・ビル・ALC住宅の屋上等以外の、たとえば一般住宅の屋根や外壁等にも防水工事は必要なのではないか、と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

少しややこしく感じられるかもしれませんが”防水”という観点は、一般住宅の屋根や外壁等にも、もちろん必要で、防水性を保つためのメンテナンスは必須です。たとえば、定期的に塗り替えたり、劣化箇所を補修することは、建物に水を浸入させない一つの手立てとなります。ただし、これらの塗り替えや補修は、外装リフォームの世界では「防水工事」というカテゴリーには当てはまりません。要するに、一般住宅の屋根や外壁等に施す防水を目的とした工事は、「防水工事」とは呼ばないということです。

※一般住宅の屋根や外壁の”防水”について詳しくは、こちらの記事「【雨漏り解決】【雨漏り解決】雨漏りの原因がわかる5つのポイント」「これで安心!自分でできる雨漏りの応急処置」をぜひご覧ください。

2.防水工事にかかる費用はいくら?

2-1.工法別!防水工事の費用相場

防水工事の費用は、工法によって大きく4つに分けられます。

工法耐用年数費用相場

<ウレタン防水> 

補修時に最も選ばれる防水工事の工法。
液状の材料を使用するため、どんな形状のものにも施工できる。ただし、乾燥に時間がかかるため、廊下や階段など人が通る箇所には不向き。

 約10~13年2,500円~7,000円/㎡

< 塩ビシート防水>

ウレタン防水に次いで人気の工法。
塩化ビニール樹脂でつくられた防水シートを取り付けることで防水性をもたせる。様々なデザイン性のある防水シートがあるため、人が出入りする屋上など、人目につく場所によく使用される。

約 12~15年2,100円~7,500円/㎡

<FRP防水>

FRPとは、”Fiber Reinforced Plastics”の略称で、繊維強化プラスチックのこと。軽量で耐久性にも優れる。ベランダやバルコニーでよく採用される。

約 10~15年4,000~7,500円/㎡

 <アスファルト防水>

新築時の防水工事は、ほぼ全てアスファルト防水が採用されている。古くからある工法であるため、施工品質が安定しており、信頼性もあるが、施工中に煙や臭いが発生するため、すでに居住者のいる状態にあるリフォーム時に選ばれることは少ない。

 約12~20年5,500~8,000円/㎡

※上記の耐久年数および費用は目安です。それぞれの建物の状態等によっても大きく変動します。

施工場所や状態によって選べる工法が異なるため、耐久年数や費用だけを頼りに自身で工法を選ぶことはできません。

まずは業者に状態を見てもらい、どの工法にすべきか提案してもらいましょう。業者に提案してもらった工事内容や耐久性、費用相場などをチェックする際に、ぜひ上記情報も参考にしてみてください。

2-2.【アパート・マンション経営者の方へ】防水工事は修繕費?資本的支出?

アパートやマンションの経営者のなかには、税務上、防水工事は修繕費となるのか、資本的支出となるのかで迷っている方もいらっしゃるかもしれません。

考え方としては、維持管理や修理など、原状回復を目的とした防水工事は「修繕費」となります。たとえば防水工事でいうと、ひび割れや雨漏りの補修などが、これにあたります。防水工事は、建物を維持するために定期的に必要な工事となるため、修繕費にあたる場合がほとんどです。

一方で、耐久性を上げたり、デザインを変更したりと、資産価値を高めることを目的とした防水工事は「資本的支出」となることもあります。資本的支出の場合は、資産として計上し、減価償却していくことになります。

※工事内容によっては、上記原則が当てはまらない例外もあります。
※税務上の処理については、こちらの記事も参考になります「知っておきたい外壁塗装の減価償却のしくみ」。

3.防水工事が必要な時期

3-1.劣化の症状で見極める

「今すぐ防水工事をする必要があるのか、どうか」が気になっている方も多いのではないでしょうか。劣化症状をチェックすることで、防水工事のタイミングは、ある程度は自分でも見極めることができます。

■防水工事が必要な劣化症状の一覧

雨染み雨漏り

水溜り水がたまる

IMG_2212雑草が生えている

ひび割れひび割れ

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防水シートの浮き
画像出典:http://sasaki-tosou.seesaa.net/

防水防水シートの破れ

3-2.補修周期で見極める

「1.定期的な防水工事が建物の寿命を延ばす」でお伝えした通り、防水工事は定期的に行なう必要があります。そこで、あらかじめ防水工事の周期を計画しておくのも一つの手です。

防水工事の工法によって、耐用年数に差がありますが、おおよそ10~15年周期で防水工事を行なうのが一般的です。

[参考情報|各工法ごとの耐用年数]
ウレタン防水(約10~13年)、塩ビシート防水(約12~15年)、FRP防水(約10~15年)、アスファルト防水(約12~20年)が目安

4.業者を選ぶ前に押さえておきたい2つのこと

4-1.依頼先となるのは防水工事を取り扱っている塗装業者や工務店

防水工事をどこに依頼すればいいのかで、迷っている方もいらっしゃるかもしれません。防水工事は通常、防水工事を取り扱っている塗装業者や工務店等に依頼します。

ここで把握しておきたいのが、塗装業者や工務店が防水工事を自社で手がけることは稀で、工事自体は塗装業者や工務店が提携している防水工事業者が行なうということです。さらに言うと、防水工事業者がすべての防水工事に対応できることはほぼなく、一般的にはいずれか一つの工法(ウレタン防水・塩ビシート防水・FRP防水・アスファルト防水等のいずれか一つ)に特化している場合がほとんど。そのため、塗装業者や工務店等は、現場の状況等やお客様の要望等に合わせて、どの工法が最適かを選択し、防水工事業者を選定することになります。

つまり防水工事業者に知識が必要なことはもちろんですが、現場の状況によって業者を選定する必要のある塗装業者や工務店にも防水工事の知識が必要となります

そこで、依頼先となる塗装業者や工務店を選ぶ際には、防水工事にどれぐらいの知識があるかをチェックしておきたいところ。防水工事にいくつか質問をしてみて、曖昧にごまかしたり、その場で何も答えられなかったりする場合には、その塗装業者や工務店への依頼を考え直した方が良いかもしれません。

4-2.防水工事業者の経験値&技術力は施工実績で見極める

防水工事業者の実力を探るならば、防水工事の施工実績数をチェックするのが一番です。防水工事の施工実績数が豊富にあるということは、つまり、それだけの防水工事の経験値があるということです。施工実績が豊富にある業者の方が、提案の幅も広く、確かな技術力をもちあわせているケースが多いことは間違いありません。

そこで塗装業者や工務店から防水工事の提案を受けた際には、どんな防水工事業者が担当するのか、施工実績も含めて確認するのがオススメです。仮に依頼先が実績に不安の残る防水業者の場合には、変更等を検討する必要があるかもしれません。

5.防水工事のDIYはオススメできない

もしかすると自身で防水工事をしよう、とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、防水工事のDIYはオススメできません。

そもそも「4.業者を選ぶ前に押さえておきたい2つのこと」でお伝えしたとおり、塗装業者や工務店ですら対応していないことが多く、さらに防水工事業者も工法によって細分化されているほど防水工事は専門性の高い分野です。素人が簡単に手出しできるシロモノではありません。失敗すると即、雨漏りにつながり、建物に大打撃を与えてしまうというリスクは軽視できません。さらに自身で防水工事をした結果、水漏れが発生すると保証が受けられなくなるというリスクも把握しておくべきポイントでしょう。

まとめ

「1.定期的な防水工事が建物の寿命を延ばす」でお伝えした通り、建物に水を浸入させないことは、建物の寿命を延ばすことにつながります。

ぜひ、こちらの記事を参考に、定期的な防水工事の計画を立ててみてください。