屋根塗装 素材別の塗装方法とその注意点

自宅の屋根が最近痛み始めているみたいなので「屋根の塗装」を検討しているけど、判断の基準がよく分からない。。。このようなお悩みの方は多いのではないでしょうか。
また、具体的にどのような塗装方法がご自身の住まいの屋根素材に最適なのかを知っておきたい、と思っている方もいらっしゃることでしょう。

この記事では、把握しておきたい屋根素材別の塗装方法と、その工程ごとに注意しておきたい点や、塗装自体に関して注意しておきたい点もをご紹介致します。
屋根塗装の検討時に、業者選定の判断や見積書検討の一助になれば幸いです。

1. 屋根塗装は、住まいを守る必要条件

屋根塗装を含む、住まいの塗り替えは、なぜ行なうのでしょうか。
目的は主に2つあるとされ、1つは、見た目の美しさ、いわゆる「美観」を整えるためです。
そしてもう1つは、住まいを保護し、長持ちさせるためです。

太陽の紫外線、雨風など自然環境に常に晒されている住まいは、時間とともに長時間かけて徐々に劣化します。
特に屋根は、太陽が出ている日中は、ほぼ100%紫外線を浴びており、劣化具合も進行が早いと言われています。
つまり定期的なメンテナンス、いわゆる塗り替えを行ない、少しでも長くお住いが長持ちさせるようにする必要があります。

ではなぜ、「塗り替え=塗装」をするとお住まいを守ることになるのでしょうか。
それは、塗装をした際に発生する「塗膜(塗ってある塗料の膜)」の存在があるからです。

この塗膜が、屋根や外壁を覆い、紫外線や雨水などから屋根材や外壁材を保護する役割を果たしているからなのです。

塗膜が屋根材・外壁材を保護

2. 屋根素材ごとの塗装工事の方法

屋根素材にはいくつもの種類があります。その中でも、塗装工事を行なう素材について、塗装方法を解説致します。

2-1. 屋根素材

塗装を行なう屋根素材は、主なものとして「スレート瓦」「トタン屋根(金属屋根)」「モニエル瓦(セメント瓦)」「折半屋根」が挙げられます。

スレート屋根

トタン屋根
(出典:プロタイムズ群馬高前店)

モニエル瓦

2-2. スレート瓦(コロニアル、カラーベスト)の塗装方法

スレート瓦とは、粘土板岩を使用した薄い板状の屋根材です。

定期的な塗装を施さないと「耐熱性」「防水性」などを維持できなくなり、重度の劣化は「葺き替え」が必要となります。「色あせ・色むら」や「カビやコケ」が発生している、塗料がはげてきているなどの状態のうちに、塗装をおこないましょう。

色あせ・色むらが目立つスレート瓦
(出典:プロタイムズ福岡北店)

カビやコケが発生しているスレート瓦

塗料がはげているスレート瓦
(出典:プロタイムズ福岡北店)

スレート瓦は主に3種類

石綿(アスベスト)とセメントを混ぜて作られた「石綿スレート」、石綿の変わりにパルプやビニロンを使用した「無石綿スレート」、そしてセメントを主原料とした「セメント系スレート」です。
ちなみに「カラーベスト」「コロニアル」と呼ばれる屋根材は、この「セメント系スレート」に属します。

石綿スレート無石綿スレートセメント系スレート
健康被害を考慮し使用されることがなくなる。コストパフォーマンスの良さや軽量などの特徴から、以前は多くのスレート屋根で使われていた。「石綿スレート」のアスベスト使用による健康被害を受け、近年多く使用されているスレート瓦。「無石綿スレート」と同様にセメントを主成分とし、着色がされている。「カラーベスト」「コロニアル」と呼ばれるスレート瓦は、このセメント系スレートに分類される。

スレート瓦の塗装手順としては以下になります。

手順作業工程内容
(1)高圧洗浄でコケなどの汚れ、旧塗膜を洗い流す・足場は必ず組んでもらう
(2)鉄部のサビ落とし、ひび割れ部分の補修・ひび割れがひどい場合や欠損となっている場合は、取り換えの検討も必要
(3)鉄部に錆止めを塗る・錆が進行しやすい鉄部に錆止めを塗る。
(4)下塗り材(シーラー等)を塗る・鉄部には溶剤系の塗料を使用する必要がある。
・下地の吸いこみが激しい場合は、下塗り材は複数回塗る。
(5)タスペーサーを取り付ける  ・屋根材に負担をかけず縁切り作業を行えるタスペーサーを取り付ける。
(6)中塗り材・上塗り材を塗る・細かい箇所は刷毛で、平面はローラーで塗る

2-3. トタン屋根(金属屋根)の塗装方法

次に金属屋根である、トタン屋根について解説します。
金属屋根材は、アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板などを使用した屋根材で、重さが軽く、地震に強いとされています。

その中で、薄い鉄板の表面を亜鉛で覆った屋根材が、トタンです。防錆防止処理が施されていることがほとんどです。
主な劣化症状は「チョーキング」「変色」「退色」など現在の塗膜の退化が直接的な原因である場合と、ホコリなどの堆積が原因で発生するカビ・コケがあります。
特に、塗膜の退化が原因で起こる「チョーキング」「変色」「退色」は、放置しているとトタン自体の劣化につながる可能性が高くなりますので、早期の「塗り替え」をおすすめします。

退色が発生しているトタン屋根
(出典:プロタイムズ群馬高前店)

トタン屋根(金属屋根)の塗装手順としては以下になります。

手順作業工程内容
(1)ケレン(既存塗膜除去や目荒し作業)を行なう・高圧洗浄のみでなく、必ずこの下地処理工程が必要
・サビが発生していなくても行なうことが望ましい
(2)塗装しない部分に養生を施す
(3)錆止め処理(下塗り工程に該当)を行なう・エポキシ系サビ止め塗料・プライマーなどを使用
・厚く塗膜を付けられるローラーがおすすめ
(4)上塗り材を塗る・金属屋根用上塗り材を使用する。
・2回以上塗る。

2-4. モニエル瓦(セメント瓦)の塗装方法

次は、モニエル瓦です。

別名「乾式洋瓦」とも呼ばれるセメント瓦で、コンクリートと同質の無機質着色材である「着色スラリー」を塗膜として形作り、さらにアクリル樹脂のクリアー塗料を塗布した屋根材(瓦)です。石綿(アスベスト)を使っておらず、環境に優しい屋根材とも言われています。
金属屋根と同様に、「チョーキング」「変色」「退色」など現在の塗膜の退化が直接的な原因である場合が主な劣化症状です。これらは塗り替えのタイミングです。また、その他、塗膜の膨れや剥離などの症状がみられる場合は、早急に塗り替えの対応が必要です。

「変色」「退色」が発生しているモニエル瓦
(出典:プロタイムズ福岡北店)

塗膜の剥離が発生しているモニエル瓦
(出典:プロタイムズ福岡北店)

モニエル瓦(セメント瓦)の塗装手順としては以下になります。

手順作業工程内容
(1)高圧洗浄でコケなどの汚れ、旧塗膜を洗い流す・スラリー層は完全に取り除く
・飛散防止シートを設置する
(2)下地調整および下地補修(クラック処理やシーリング工事、破損瓦の交換)を行なう・高圧洗浄で落としきれなかったスラリー層をケレン具で除去
(3)塗装しない部分に養生を施す
(4)下塗り材を塗る・エポキシ系シーラが望ましい
・瓦にたっぷり含ませるように塗布
(5)上塗り材を塗る・刷毛を使い、塗りムラやかすれがでないようにゆっくり丁寧に塗布

屋根材別に、工程ごとの塗装の注意点を抑えてきました。細かい箇所での正しい施工が、屋根材が長持ちすることにつながるので、業者に依頼する場合には、注意点を中心にしっかりとチェックをしていきましょう。

3. 屋根塗装における注意点

前章では、屋根材別の工程ごとで注意したいポイントを挙げましたが、塗装自体の注意点はどのようなものがあるでしょうか。キーワードは「塗り替えの回数」と「屋根材自体の劣化具合」です。

3-1. 何回目の塗装か

スレート瓦屋根にて言えることですが、塗り替え回数には上限があるとされます。前回からの塗り替え間隔や、劣化具合によって違いは出てきますが、3回が上限です。
塗装回数を重ねることで、塗膜が厚くなり割れる危険性が大きくなります。ですので、3回の塗装を行なっているのであれば、それ以降は「葺き替え」が望ましいです。

3-2. 屋根材の劣化状況次第では塗装ではメンテナンス不可な場合も

スレート瓦、トタン屋根に代表される金属屋根、そしてモニエル瓦など、代表的なそれぞれ屋根材自体に大きな損傷(クラック)や割れがはげしく、かつ広範囲に渡っている場合は塗装が不可能です。そのような場合は、「葺き替え」になります。
まだ塗り替えというメンテナンスが可能かどうかは、プロである専門の業者に診断してもらい(可能なら劣化状況を動画や写真などで確認)、葺き替えの正しい見積もりを出してもらいましょう。

クラック現象の度合いが激しいスレート瓦
(出典:プロタイムズ福岡北店)

割れが発生しているモニエル瓦
(出典:プロタイムズ福岡北店)

4. まとめ

屋根塗装におけて注意しておきたい点は、素材ごとに気をつけるポイントがそれぞれに異なることです。

まず、住まいの屋根に使用されている素材を認識し、劣化具合やその進行度も正しく把握しましょう。
屋根材別に正しく塗装されているかどうかが大切で、依頼をする業者の選定や、工事期間中にもチェックしていきたいものです。

皆さまの大切な住まい、「守り続ける」屋根になるような塗装を施しましょう。