「外壁塗装は10年ごとにしたほうがいいって聞くけど、屋根塗装はどうなのかしら?」と思っている方や、「うちはまだ雨漏りしてないし、屋根塗装の必要はない」と思っている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
【家を長持ちさせる】外壁塗装の最適な時期とタイミングで外壁塗装をおこなう時期についてご説明しましたが、もちろん屋根塗装も状況によってはおこなわないといけません。
屋根塗装をせず放置した場合、雨水が内部に浸入して雨漏りを起こし、建物内部を傷めてしまいます。そのため、本来は屋根の塗装だけで済むはずが、屋根の劣化を放置したばっかりに屋根の重ね葺きや葺き替えをする必要が出てきて、結果として高額なリフォームになってしまうことがあります。
そのようなことを未然に防ぐためにも、今回は屋根塗装をおこなう時期や劣化のサインについて、わかりやすくご紹介いたします。
1.屋根の塗り替え目安年数は築10年!
外壁の場合は、「築10年目が塗り替えの目安」と言われていますが、屋根は実際どうなのでしょうか。結論から言いますと、屋根も外壁と同じで築10年目が塗装の目安とされています。しかし屋根の場合は外壁と比べ、風雨や紫外線に晒されることが特に多いため、注意が必要です。そうは言っても、屋根材にも様々な種類があります。実際に各屋根材における塗装目安年数はどのくらいなのでしょうか。
屋根材 | 外観 | 耐用年数 | 塗り替え目安年数 |
---|---|---|---|
スレート瓦 | 20~25年 | 5~10年毎 | |
セメント瓦 | 30~40年 | 5~10年毎 | |
日本瓦 | 50~100年 | 必要なし | |
金属屋根 | 30~60年 | 5~10年毎 |
上記のように、屋根材の種類それぞれ耐用年数はありますが、耐用年数前に塗装は必ず必要になります。よって、大切なお宅の防水性を保つためには、日本瓦以外の屋根材では築10年目で塗装するようにしましょう。
屋根は風雨や紫外線が一番当たり、家の中で最も過酷な場所です。そのため、外壁よりも早く傷んでしまいます。10~13年もつと言われている耐久性の良いシリコン塗料を塗ったとしても、8~10年しかもたないこともあります。そのため、2度目の塗り替えの際には前回に塗装した屋根塗料の耐久年数を考慮し、早めに塗替えを検討するとよいでしょう。
屋根材の塗膜が劣化し、防水効果が失われると雨水等が建物内部に浸入し、柱や梁を腐らせてしまいます。
「うちは雨漏りしてないからまだ大丈夫」
そう思っている場合でも、知らない内に屋根裏では雨漏りが進行し柱や梁に大きな雨染みができていた!なんてこともよくあります。
屋根は、過酷な環境のため外壁と比べ劣化が早いこと、また中々見えない場所のため知らない間に劣化が進行し、気づいた時には大きな損害につながることが非常に多いです。そのような事態を未然に防ぐためにも、定期的な点検や補修が必要になります。
2.屋根塗装をおこなうべき劣化のサイン
外壁は目が届く範囲の劣化はご自分で確認をすることができますが、屋根は高い位置のため中々見て確認することが難しい場所です。ではいち早く屋根材の劣化を見抜くには、どのような劣化のサインを見つければいいのかお伝えいたします。
2-1.「瓦の滑落」「棟板金の浮き、釘抜け」「漆喰の劣化・剥がれ」は今すぐ修繕が必要
◆瓦の滑落
瓦のひび割れを放置しておきますと、最終的に瓦は滑落してしまいます。また、台風などの暴風雨でも瓦がズレたり、飛んで落ちてしまうということがあります。
瓦が滑落すると、滑落した瓦の大きさによって瓦の下の防水材、防水材を止めている釘が丸見えになってしまいます。この状態で放置をすると、雨が降った際に雨水が釘穴をつたい、野地板に雨水が浸入し最終的に雨漏りの原因となります。野地板が腐ってしまいますと、屋根の葺き替えとなってしまうため、早急な対処が必要となります。
◆棟板金の浮き、釘抜け
スレート屋根や金属屋根の場合、屋根のてっぺんに棟板金というものがあります。釘抜けとは、棟板金が気温の影響により膨張・収縮を繰り返すことで棟板金を止めている釘を一緒に押し出し、最終的に抜けてしまうことを言います。これを放置しておくと、棟押さえのはずれや錆びの原因になり、さらにはいつの間にか下地材がむき出しになっていたというケースもありますので、こちらも早急にメンテナンスをおこなうことが好ましいです。
◆漆喰の劣化・剥がれ
日本瓦やセメント瓦では、瓦の固定・接着に漆喰を用います。この漆喰も風雨や紫外線に晒され続けているため、他の屋根材と同じように経年劣化が生じます。地上から目視した際に、ひびや剥がれを見つけた場合は危険です。瓦を固定している力が弱まっているため、ちょっとした風や地震で瓦がズレたり、最悪の場合は落下してしまう可能性もあります。また衝撃によって欠け・割れが生じ、そこから雨水が浸入して雨漏りに繋がることもありますので、漆喰の劣化を発見した際も早急なメンテナンスが必要と言えます。
2-2.「苔や藻・カビの発生」「瓦の反り・ひび割れ」は早めに検討!
◆苔や藻・カビの発生
屋根材の塗膜が劣化し防水性が低下すると、雨水や湿気により苔が発生します。 早急に屋根塗装をする必要はありませんが、そのまま放置してしまいますと、屋根そのものの耐久性も悪化させてしまい、結果として雨漏りの原因となりますので、メンテナンスが必要です。
◆瓦の反り・ひび割れ
スレート瓦の防水性が劣化し始めると、苔の発生では収まらず「反り」や「割れ」が発生します。例えば、瓦が水を含んだまま凍ったり、夕立後の晴れ間に強い日差しで急激に乾燥したり、など防水性が切れたことにより湿気と乾燥を繰り返し、瓦の反りにつながります。
そのまま放置をしてしまうとまつ毛のように反り上がり、台風などの横殴りの雨が降った際に、反り上がった小口から内部に雨水が浸入し雨漏りの原因となりますので、早期にメンテナンスをおこなうことをオススメします。
2-3.「屋根材の色あせ」はまだ大丈夫です!
◆屋根材の色あせ
屋根材の色あせは、塗膜の劣化が始まった証拠です。今すぐに屋根塗装をおこなう必要はありませんが、そのまま放置しておくと知らない間に劣化があっという間に進行していた!なんてこともありますので、専門家に相談するようにしましょう。
2-4.自分で屋根の状況を確認するには
屋根塗装をおこなうべき劣化状況を、緊急度が高い順にご紹介しましたが、「いや、屋根の状況なんて見えないしわからない!」と思う方も非常に多いのではないでしょうか。そのような場合には、以下の方法でお家の屋根を観察してみましょう。
①下屋根の状態を観察しましょう!
下屋根とは、2階の窓から確認することができる、1階部分の屋根のことです。下屋根で劣化が確認できる場合、2階部分の屋根でも同様の劣化が起きている可能性が非常に高いです。
②家の外から、双眼鏡を使って屋根を観察しましょう!
ご自宅の前の道路からや、ご自宅の屋根を観察することができる場所から、屋根の観察をしてみましょう。小さな劣化状況を確認することは難しいですが、少しでも「ん?」と疑問に思うようなものを見つけた場合は、それ以上の劣化が起きている可能性があります。
外壁は目が届く範囲の劣化はご自分で確認をすることができますが、屋根は実際に見て確認することが難しい場所です。
上記の劣化状況を発見したり、少しでも気になる点がある場合には、無理に屋根に登ってご自身で確認するのではなく、業者に屋根の劣化状況を診断してもらうようにしましょう。
3.屋根材の種類
各屋根材の耐用年数や塗り替え目安年数、劣化状況をお伝えいたしましたが、屋根材には多種多様あります。それぞれを、もう少し詳しくご紹介いたします。
3-1.スレート瓦
耐用年数:20~25年
塗り替え目安年数:5~10年
メリット | デメリット |
---|---|
色や形状が豊富なため、現在の建築住宅に非常に多く使用されている、人気のある屋根材 | 寒さに弱いため寒冷地では使用できない |
スレート瓦は大きく分けると「天然スレート」「化粧石綿スレート」があります。
天然スレートは玄昌石(粘板岩)を使用し、スレート瓦にしているもので、化粧石綿スレートはセメントと石綿を高温高圧下で養生・成型した板状の石綿スレートに、着色したもののことを言います。
石綿スレートは、色彩が豊富で、種類が多く、尚且つ日本瓦に比べ、非常に軽量で安価なため、最も普及した屋根材です。株式会社クボタ販売の「カラーベスト」や「コロニアル」が、石綿スレートの代名詞として広く使用されてきました。
石綿スレートの主成分は、セメントのため防水性はなく、工場出荷時に塗装をおこない、防水性を持たせています。しかしその防水性も5~7年で切れてしまいますので、そのタイミングで屋根塗装をおこないましょう。
2004年以前に建てられたお家の場合、 “アスベスト”が含まれた石綿を使用していますので、屋根の葺き替え工事をされる際はアスベストの飛散を防ぐためにも、業者との打ち合わせが必要となります。
またスレート瓦自体の耐用年数は、20~25年となります。そのため、塗り替えで問題ない場合と、スレート瓦の劣化が激しい場合には、葺き替えをおこなう必要がありますので、まずは専門家に屋根の劣化診断をおこなってもらうようにしましょう。
3-2.セメント瓦
耐用年数:30~40年
塗り替え目安年数:5~10年
メリット | デメリット |
---|---|
・様々な形状やカラーバリエーションがあり施工がしやすい ・耐火性が高い | ・塗膜が剥がれると苔やカビが生え、劣化が一気に進む |
セメント瓦はセメントと川砂のモルタルを原料に作った瓦で、戦後一番多く使用された屋根材です。セメント瓦もスレート瓦と同様に防水性がありませんので、定期的なメンテナンスが必要となります。
◆モニエル瓦
メリット | デメリット |
---|---|
・防水性・断熱性・耐震性に優れている ・施工性がよく、デザインにも多様性がある | ・割れやすい ・施工の際、スラリー層をできるだけ取り除いてから施工をする必要がある |
セメント瓦の中には、ヨーロッパ発祥のセメント瓦の一種、モニエル瓦があります。
モニエル瓦は通常の瓦と違い、表面に“スラリー層”と呼ばれる層があり、セメントの粉が薄く吹き付けてあります。スラリー層の上にそのまま塗装をすると、塗膜の剥がれが起きるトラブルにつながりますので、塗装前に劣化したスラリー層をできるだけ取り除いてから施工をする必要があります。
セメント瓦の一種がモニエル瓦ですが、見分け方はあるのでしょうか?
それは、瓦の小口を見ると一目瞭然です。
小口が平らなのがセメント瓦、凸凹があるのがモニエル瓦です。
3-3.日本瓦
耐用年数:50~100年
塗り替え目安年数:塗り替え必要なし
メリット | デメリット |
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・耐久性が非常に高い | ・屋根の重量が重く建物にかかる負荷が大きい ・修理費用が高い |
日本瓦には、大きく分けて“無釉瓦”“釉薬瓦”の2種類があります。
◆無釉瓦
無釉瓦には「いぶし瓦」、「素焼き瓦」、「練込瓦」、「窯変瓦」などの種類があります。
その中でも、いぶし瓦と、素焼き瓦についてご紹介いたします。
《いぶし瓦》
メリット | デメリット |
---|---|
・断熱性や通気性が高い ・素材のリサイクルができるため環境性が良い | ・塩分を含んだ水による塩害や、寒さによる凍害を起こしやすい |
高級感のある色艶があり、色も渋い銀色をしているのが特徴で、和風住宅の屋根や、日本建築のお城や寺社などによく使われています。
《素焼き瓦》
釉薬をかけず、陶器の自然の風合いを生かした瓦です。瓦の色が、酸化炎焼成の赤色のため赤瓦とも呼ばれています。色合いもナチュラルで、洋風建築に適しています。
◆釉薬瓦
メリット | デメリット |
---|---|
・水が浸透せず劣化がしにくく、耐久性が非常に高い | ・雨仕舞いが悪いため下地の劣化が早い ・屋根の重量が重く建物にかかる負荷が大きい ・衝撃に弱く割れやすい |
釉薬瓦は陶器瓦とも呼ばれています。耐久性が非常に高くメンテナンス不要の屋根材です。表面を釉薬で覆うので、色も豊富に選ぶことができます。さらに瓦の形状に関しては、粘土を成型するため、屋根の形状やデザイン、好みに合わせることができます。
日本瓦は、瓦自体が劣化しませんので50~100年持ちますが、その前に漆喰部分が劣化をし始めます。劣化が始まり雨水が浸入すると、雨漏りに繋がる場合もありますので、漆喰部分のメンテナンスは定期的におこないましょう。
3-4.金属屋根(トタン)
耐用年数:30~60年
塗り替え目安年数:5~10年
メリット | デメリット |
---|---|
・屋根材の中でも最も軽いため、施工がしやすく耐震性に優れている ・耐熱性・耐水性がある | ・断熱性がない ・遮音性が低く、風雨の影響で金属板から音が発生することがある ・経年劣化が進むと、錆が発生する |
金属の素材によって、「ガルバリウム鋼板」や「銅板」「カラー鉄板」などの種類があります。
また葺き方によっても名称が変わり、長方形の平板を横長に葺く「一文字葺き」、棟から軒先にかけて棒を並べたように葺く「瓦棒葺き」、金属製折半をボルトで固定する「折半葺き」などがあります。
このように屋根材によってメリット・デメリットがあり、耐用年数も違います。
是非お家の屋根材を確認し、メンテナンスの時期を確認してみましょう。
4.屋根塗装が必要ない屋根材は?
屋根塗装が必要ない屋根材と言えば、ズバリ日本瓦です。
日本瓦は非常に耐久性に優れており、耐用年数も50~100年と長いため、メンテナンスフリーの屋根材となります。
しかし、メンテナンスフリーと言われる日本瓦でも、
・漆喰部分の劣化
・台風や地震などによる瓦の割れ・滑落
などによって、漆喰部分の補修や瓦ズレの補修、瓦の交換が必要となります。
そのため、「日本瓦だからチェックしなくて大丈夫」と安心するのではなく、外壁の塗り替えを検討している際などに、専門家に屋根の状況を診断してもらいましょう。
まとめ
屋根塗装をおこなう時期は、屋根に使用している屋根材によりますが、基本は築10年目での塗装がベストと言えます。メンテナンスフリーの屋根材であっても、「知らない内に雨漏りしていた」なんてこともありますので、屋根に少しでも気になる症状が出た際には、放置せずに屋根塗装・メンテナンスが必要かを専門業者に劣化診断してもらうとよいでしょう。